消費税に関わる諸問題(2)
指摘の通り、スーパーやコンビニなど、小売店で販売する場合にはその場で取引が完了するので、税率はレジにセットしておけば、となりますが、企業間取引の場合はそうも行きません。
簡単な例として、メーカーから問屋――中間業者ですね――を経て小売店に届く場合、問屋がメーカーから仕入れるとき、小売店が問屋から仕入れるとき、それぞれでメーカー、問屋に消費税を支払います。色々な人が忘れているように見えて仕方ないのですが、レジだけなんとかすればいい、という話ではないということ。そして、この企業間取引、小売店で消費者に物を売るのと遜色ない規模で、ちょっと調べてみたところ消費税全体の四割程度とか。つまり、無視できない要素なので、キチンと対応しなければなりません。
何を対応するのかというと……さて、現在の税率に変更される前までは、消費税の計算は……比較的自由でした。
企業間取引では掛け売りで行うケースが多いのは……まあ、働いている人はなんとなくわかるかと思います。掛け売りとは要するに一定期間の売り上げをまとめて請求して支払ってもらう取引で、取引回数の多い企業間では取引の度に支払っていたら手間がかかって仕方がないので、まとめて払って手間を減らそうというもの。
そんな掛け売りの世界では、消費税の計算も結構自由でした。
一回の取引を「伝票」とし、一つの伝票には複数の商品の売り上げ、つまり「明細」がありました。そして、消費税を明細単位で計算するか、伝票単位で計算するか、請求書を作るときに計算するか、は自由に決められたのです。
これ、何に影響するかというと、端数がどうなるかが変わります。
例は悪いですが、わかりやすくすると……
消費税率8%の頃、商品A118円、商品B218円で、それぞれ一個ずつ売った。なお、小数点以下は四捨五入とする。
明細単位の場合、Aが118円+税9円。Bが218円+税17円。
伝票単位の場合、税抜き336円+税27円。
1円の違いが出ていますね。請求単位の場合は、伝票単位のようなことがもっとたくさんの伝票、明細で発生すると思ってください。1円の誤差も積み重なると無視できない金額になりますが、個々の計算がしっかり行われていれば問題なしとなっていたので、これはまあ、いいでしょう。
これが現行の10%に引き上げられたときに請求時一括に統一、となりました。このため、従来の明細単位、伝票単位で計算していたところは、
「では先行して○月から請求単位に変更しますね」
というやりとりをして順次切り替えていったのです。
もちろん、
「そんなまどろっこしい連絡なんてしなくても勝手に変えればいいだろ」
という意見もあるかも知れませんが、企業間の取引の場合、消費税の計算方法についても明記されている場合があるため、お互いに「いつから変更となるか」を承知した上でないとダメ。もちろん、契約よりも法律の方が優先されますが、勝手に変えた場合、信用を無くしかねない行為でもあるわけで。
そして、先行して変えたら変えたでその後がまた大変です。
企業間取引では請求は月末締めとは限りません。少なくとも作者がこれまでに関わってきたシステムでは5日、10日、15日、20日、25日それぞれで請求締めがありました。どういうことか。15日を例に、10月の15日に請求締めを行うと、9月16日から10月15日までの取引を集計して請求書を作ります。なので、9月16日から9月30日までは旧税率、10月1日から10月15日までは新税率という、同じ物品の取引でも税率の混在した請求書になったわけですね。税率が変わる、2019年10月前後には作者もほぼ毎日のようにフォローし続けてました。
さて、食料品の税率をゼロにしよう、とした場合でも同じ事が起こります。
小売店のレジだけならばその場ですべての決済が完了するのでこのようなことは起こりませんが、企業間取引では普通に発生します。税率の設定を変えるだけで乗り越えられるかどうかは色々なことを考慮した仕組みになっているか、次第。そして、作者の経験上、ここまで細かいことを考えている仕組みは……あまり見なかったな。
というのも、システム上で何とかできて、請求書もどうにかできるとしても請求書の内容をチェックしたときに
「えーと、ここからここまでが8%で、ここからここまでが0%……つまり、合計すると……」
企業の規模によっては現在でも人の目でチェックというのは珍しくありませんから、こんなことが普通に起こるわけです。しかもこれ、仕入れて加工して売る、という取引だけでなく、例えば、会社で親睦を深めるためのパーティを開いたので飲み物食べ物にビンゴゲームの景品を購入したなんてのも、あとから請求書が届くわけですが、ここに税率が混在すると……経理担当はホント、大変です。
まあ、ここまでの話は
「考慮が足りてないシステムを使ってるのが悪いだけだろ」
この一言で一蹴されそうですが、これで終わらないからシステムというのは奥が深いのです。




