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消費税に関わる諸問題(3)

 一般的な企業のシステムでは消費税率は二つの方法で管理しています。

 一つ目は税率そのものを管理しているデータ。ここには「2019年10月1日以降、消費税区分が1のときは8%、2のときは10%」といったデータが登録されています。軽減税率をはっきり意識しつつ、さらに細分化されるケースも想定しておくことでシステムの柔軟性を担保しています。

 が、ここに「xx年yy月zz日以降、消費税区分が1のとき0%」という登録をしようとすると……


「税率にゼロは設定できません」


 というエラーが返ってくるのですね。そして、ここを直す必要があるシステムというのは、他も手を入れなければならない可能性が非常に高くなります。

 日本で普通に取引されている、消費税の発生する物品、いったい何種類あるのか。答えはもちろん、


「わかりません」


 例えばペットボトルの水だって、バラ売りとケース売りでは単価が違って別の商品として扱うことは珍しくありませんからね。

 つまり、企業が取り扱う商品の種類も膨大です。比較的少ないところでも数百、多いところでは数万どころか数十万、数百万はざらです。そうなってくると、もはや商品名だけでは食品なのかどうかすらわからない物もありますので、だいたいの企業が使っているシステムでは商品マスタと呼ばれる物を用意し、それで一元管理しています。

 商品マスタの消費税関連の所には、その商品が消費税の「対象外」「免税」「非課税」「課税」を選択し、課税の場合に軽減税率対象になり得るかをチェックする形が多いようです。どういうことかというと、同じ商品でも取引の仕方によっては免税になったりするから。わかりやすいところで言うと、輸出取引なんかは免税になりますからね。

 さて、そんな商品マスタへ、軽減税率対象だ、0%だ、と登録しようとすると……


「税率にゼロは設定できません」


 システムというのは可能な限り安全側に倒す、という思想が普通なので、課税対象商品なのに税率ゼロはおかしい、というチェックが入っているのは珍しくないのです。なんでこんなチェックが入っているのかというと、システムの不具合、つまり税率マスタを誤って消してしまったり、システム管理者が間違った登録をしてしまった、というケースを想定しているから。

 そして、最近のシステムは画面からちまちま登録するだけでなく、データを一括してCSVファイルなんかから読み込ませて登録する機能があるのも珍しくないので、そちらも修正が必要ですね。

 そしてこういうチェックがあると、売り上げを入力するところでも同様のチェックが入っている可能性は非常に高い。そして売上の入力こそ、画面だけでなくデータ通信で取り込むケースが増えてきている&取引の規模によっては特定の会社同士のための専用インタフェースが構築されていることが珍しくないため、下手すると何十本というプログラムで同じ事をしているかチェックしないとならない。

 え?そんなの共通サブルーチンを修正すれば一発で終わるだろうって?


 世の中のプログラムすべてが動的リンクだと思うなよ?


 そして、どうにか売り上げを取り込んだとしても、その先には会計処理が待っています。と言うのも、最終的に税務署へ申告するときには「消費税はいくらです」だけではダメで、ちゃんと根拠として「軽減税率8%の売上がこうだったからいくらです」という記載をしなければならない。ここまでくると色々な処理がからんでくるので、簡単には説明しづらいので細かいところは割愛しますが、消費税の発生する売り上げ――会計上は単純に売上とすることが多い――に対し、「これは軽減税率8%の分」「これは課税対象だけど税率0%だった分」というふうに区分をつけ……それでもちゃんと処理できるかチェックしないとなりません。

 ぶっちゃけ、一ヶ月分プラス決算の処理を全部動かしてみないと、どこにどんなチェックが潜んでいて何をやらかすかわかったものでは無い、とも言えるわけです。


「じゃあ、もう面倒臭いから非課税の扱いにしたらいいんじゃないの?」


 と思った方へ。それで済むなら苦労はしないのです。

 実際に作者が関わったシステムで、「同じ商品だけど、軽減税率の対象になったりならなかったりするケース」があるのです。


「そんな特殊な物、例外中の例外でしょ」


 と思いきや、その商品の一例……塩でした。

 基本的にはスーパーに並ぶ食塩なので、軽減税率の対象となっているのですが、漁船で氷にまぶして保冷効果を高めるために使う場合には食品として扱われないので軽減税率の対象にならず、消費税率が10%になるのです。なので、仕入れるときには食品として仕入れ、売るときには食品以外として売る、という取引がごく当たり前にあったのです。あくまでも一例ですが、何ら特殊なものでは無い、スーパーの棚に並んでいる食塩でこんなことが起こるんだと感心したものでした。

 システム対応はとんでもなく面倒だったとだけ、書いておきます。

 さて、色々書きましたが、要するに「食料品の消費税を暫定的にゼロにする」というときに「レジの設定変えればいいじゃん」というのは小さな小売店、それもレジ単体で完結するようなケースのみで通る話で、その他のチェーン店や、一般企業の取引では全く的外れの意見。そんなわけで、改修にどのくらいかかるかは企業が使用しているシステムの規模や元々の設計思想がからむので一言では言えないが、「一年かかる」というのは決して非現実的な話ではない、というのが作者の結論です。

 ついでに補足しておくと、レジだって税率設定でゼロが入力できるかどうかは、メーカーの考え方次第。市販されているレジの取扱説明書をざっと見てみましたが、ゼロが入力できるかどうか、明記されている物はありませんでしたので、やってみたらダメでした、というのがありそうですね。その場合、メーカーに連絡して、修正してもらえるのかどうか……古い機種だと無理だろうなあ。

 昨今の企業が使うシステムは企業間取引用のEDIシステムから販売管理システム、会計システムなどが複雑に絡み合うケースが多いので、「ここだけ直せば大丈夫」というのはほぼあり得ないため、このくらいの修正が発生するというのはコの業界の人なら常識ですし、コの業界でなくても会計システムとか請求システムを日常的に業務で利用している人にとってもなんとなく感覚でわかるもの、ということです。

 ちなみに、


「それこそAIになんとかしてもらえ」


 というのは暴論。AIは「とりあえず該当する情報を見つけたらそれで満足する」ので、すべてのプログラムを調べ上げて、漏れがないことを確認したいというケースでは使いづらいのです。何しろ一本でも見落としがあると……だいたいの場合、その一本が問題を引き起こすのが世の常なのですから。

 ということで、「自称」詳しいっぽい人の「それっぽい」意見が当てにならないというお話でした。

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