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第28話 決戦前夜、最強ヒロイン集結

 決戦の時、【ジャンバラヤ】開催まで、あと1日――


 最後の晩餐ばんさん、のつもりは毛頭ないが、作戦会議の意味合いも含めて今、僕たちはシュテリンガー家(僕の実家)の大食堂で夕食を共にしている。


 参戦メンバーであるカナデやメアはもちろん、彼女たちをここまで師事してくれたオーベルク、デュネイ。それと情報収集に奔走ほんそうしてくれたゲッティにも一緒に同席してもらっている。


 まぁデュネイに関しては、契約で夕食をご馳走ちそうすることになっていたから、最近毎日いるんだけどね。


「で、どうなんだ? せがれ。当然、勝てるに決まってるよな? 学園でふんぞり返っている、陽キャ・リア充どもをギャフンと言わせるんだよな?」


 そして何故か、すでに夕食は済んでいるハズなのにここでずっと居座っている僕のクソおやじもこの場にいる。正直邪魔なんで、早く風呂に入って寝てほしい。


 ちなみに父は、決闘の経緯とかまるで知らない。


「その勝率を上げるために、これから話し合うのです。できればしばらく黙っていてもらえると助かるのですが」


「お、おう……」


 視線で相当のプレッシャーを与え、父からこの場の発言権は奪っておいた。これで話に集中できるだろう。今はクソおやじに構っている暇はない。

 

「まずはゲッティ。報告を頼む」


「かしこまりました」


 彼女は食事の手を止め、手元の資料を見ながらこれまでに集めた様々な情報を端的にまとめて話してくれた。


「ふむ。ご苦労だったな、ゲッティ」


「申し訳ございません。せめて敵の参戦メンバーくらいは洗いたかったのですが」


 決戦前日の夜になっても、結局アリストが選んだ仲間の正体はわからなかった。さすがにもう決まってはいるだろう。


 この土壇場でも、その手の情報が錯綜さくそうとしてこちらに的を絞らせなかったのは、彼の策略が優秀だったからと考えていい。


 そこの負けは素直に認めるべきだな。

 アリストにはそういう才能があるのだろう。


 また彼について、そう思わせてしまうだけの事実が、ゲッティが調べ上げてくれた“生徒会に関する件”の中に含まれていたことも忘れてはいけない。


「学園内の力関係がわかっただけでも戦果だ。気にするな」


 実はアリストだけではなく、ここの生徒会長も原作では一度も登場したことがないキャラだった。学園理事長の孫だと言うのだ。


 そしてその生徒会長は、アリストに裏で自分や家族のあらゆる弱みを握られ、傀儡くぐつとされているらしい。


 要するに、現在におけるこの学園の事実上の支配者はアリストなのだ。理事長の弱みも握っている時点で、教職員もすべて彼には逆らえないのだろう。


 バンビーノの息子なので、無意識に相手を侮っていた自分を戒めなきゃいけない。

 

 アリスト・ルエ・デリシャリスは強敵だ。

 気を引き締めて戦いに臨まなければならない相手だ。


 敵の議論をするのはこれで終わりしよう。

 これ以上は意味がない。


 次に味方の現有戦力を把握する。


「オーベルク」


「はい」


「カナデの練度れんどを教えろ。直感で構わん」


 シャンバラヤが決まってから今日まで、カナデはオーベルクの下で自己を鍛え上げていた。


 また基礎鍛錬だけではなく、オーベルクは1:1における戦闘のイロハなんかもカナデに色々と教えていたことを僕は知っている。


「約2週の期間で、彼女の耐久性を上げることはほぼできませんでした。アーク様も実感されていると思いますが、それは一朝一夕いっちょういっせき成就じょうじゅできるような簡単なモノではありません」


 そりゃそうだ。

 僕が今の理想体型を手に入れるのに、500日以上はかかっているからね。


 まぁ僕の場合、元々がぽっちゃりだったからカナデのそれと比較してもしょうがないことではあるけども。


 それでも、そんな短い期間でカナデがオーベルクみたいな筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》になれるとは考えていない。


「それはわかっている。僕が聞いているのは……」


「はい。“心の耐久性”、忍耐力の向上や慢心の排除という点においては、一定の成果はあったかと思われます」


 そう、大切なのはその結果だ。

 カナデの弱点は物理的なこともそうだが、なにより自分の才能を過信し、相手を見下しながら戦おうとする、その考え方にあったのだ。


 言い換えれば横着おうちゃくだったんだ。めんどくさがり屋とも言うかな。彼女の才能についてはすでに疑う余地がない。


 カナデの心、思考が少しでもこの2週間で改善されたのであれば、彼女はおそらくこれまで以上の実力を発揮してくれるだろう。


「そんな……べつに、変わってないし……」


「いやいや、カナデ殿は変わった。この短期間でよく頑張った。厳しい環境の中でとんでもない剣技もひとつ習得されていましたし。本当に誇れることです」


 黙々と食事を口に運ぶ手を止めないカナデだが、顔は若干ニヤついている。オーベルクに褒められて、素直に嬉しかったのだろう。


 関係性も悪くないようだ。まぁ、オーベルクは騎士団長だからね。元々部下の面倒を見ることには長けている。人望もあるし、我ながら彼女をカナデの師匠にするという案はナイスだったと個人的には思っている。


 カナデについては期待できそうだ。僕からこれ以上詮索(せんさく)することはない。


 問題は……


「ちょっと! なに勝手に私のパン食べようとしてんのよっ! ブラック上司!」


「あら? よく言うじゃない。師匠のパンは師匠のパン。弟子のパンは師匠のパンってね」


 言わないですね、確実に。

 それは漫画の中だけの話にしておかないと、昨今じゃ完全にパワハラ案件です。


 そう、カナデ・オーベルクの良好な関係性と違い、メアとデュネイのそれは出会った頃とほぼ変わっていないのだ。


 ちゃんと修行してたんだろうか?

 デュネイはウチの第二修練場に特殊な結界を張り、中の様子を確認できないようにして途中経過すら教えてくれなかったんだ。


 契約で報告義務を盛り込むべきだった。

 女の子同士のヒミツのなんとかだからとか言っていたが、正直不安しかない。


 もう修行も終わったんだし、最後くらいしっかり聞いておかなきゃね。


「デュネイ。メアの現状を報告しろ」


「えーどうしよっかなー」


 ぶった斬るぞ、魔女。


「メア。教えろ」


「えーどうしよっかなぁ……」


 そういうとこは似なくていいんだよ、メア……。


「ふふ。冗談よ、冗談。ただね、アーク。さっきそこの脳筋騎士も言ってたけど、たかが14日間で小娘を劇的に強くするなんて、普通に考えたらできるはずないわよ」


 そんなことはわかっている。


「ああ。だから《《普通ではない》》お前に頼んだんだ、デュネイ」


 高い報酬を払ってんだから、そこは成果を上げてもらわなきゃ困る。メアの実力が上がっていなかったら完了時金は払わんぞ、魔女。


「あら、私の実力は認めてくれているんだ、アーク」


「結果を言え、デュネイ」


 くだらない問答をするつもりはない。


「もう、相変わらず冷たいんだから。全体能力の底上げはソコソコよ。チンチクリンに毛が生えた程度にはなったんじゃないかしら」


 デュネイの基準はわからないが、少しは強くなったという解釈でいいのか? ただ直感的な話にはなるが、メアの雰囲気は正直、かなり見違えている。


 魔力的な要素は飛躍的に向上しているように感じる。公爵令嬢特有のお嬢様っぽいオーラが消え、熟練の冒険者のような自信さえただよわせている感覚もある。


「ちょっと! 今度はお肉も取ろうとしてるでしょ、オバさん!」


「お姉様って呼びなさいと何度も言ってるでしょうが! ●すわよ、ガキ!!」


「……」


 雰囲気だけかもしれない。

 中身は全然変わってない。


「まったく……。まぁアレよ、アーク。私はちゃんと報酬分くらいの仕事はしたから安心なさい。この小娘、戦闘面はヒヨッコだけど回復の資質だけはかなりあるみたいだったし、まぁまぁヤれるようにはなったんじゃないかしら」


「どういう意味だ?」


 メアにヒーラーの才能があることはわかっている。だがそれだけだと敵に勝てないだろう。


 あくまで1:1の戦いだぞ。

 武力的な側面は必ずなにか必要なハズだが。


「ヒールって案外、直接戦闘向きなのよ。私が脳筋バカたちをシバき倒したい時によく使ってる、基本戦闘術は特別に教えといたから」


 なんだそれ。

 危なっかしい臭いがプンプンするんですけど。


「メア。デュネイから何を学んだのか、聞かせろ」


「それは本番でのお楽しみよ。ね、師匠」


「ねー」


「……」


 メアとデュネイは急に顔を見合わせて、まるで示し合わせたかのような息ピッタリの様子を見せつけてきた。


 仲が良いのか悪いのか……

 いったいどっちなんだい!


「はっはっは! これは一本取られたな、せがれ!」


 取られてねぇよ!

 黙ってろって言っただろ、クソ親父!


 ま、まぁそういう隠し事も僕は寛大かんだいな心で受け入れるよ。メアの表情から、結果は得られていると確信した。


 今はそれだけで十分だと前向きに捉えておこう。


「ところでアークのほうはどうなのよ? ガストラダンジョンの最下層に行って修行するとかなんとか言ってたけどさ」


 メアが唐突に聞いてきた。


「そうよね……。私たちにだけ鍛錬させて……自分はなにもありませんでしたとか、そんなことないよね……」


 カナデも参戦してきた。


「アーク様は頑張っておられましたよ。たぶん」


 たぶんってなんだよ、ゲッティ。


「何を言っている、若い衆。アーク様のこの覇者の風格を感じ取れぬのは、まだまだ修行が足りぬ証拠だぞ」


 オーベルクは年の功なのか、僕の秘めたる真の実力を察しているようだ。


 さすがだね。


「そうね。しかもなんかこう……いや、それはさすがに気のせいかしらね」


 デュネイにはもしかしたら視えているのかもしれない。僕がこの2週間で新たに手に入れた、グランドテイルズの世界には存在しない新たな“覚醒スキル”が。


 あ、いや。

 手に入れたって表現は語弊ごへいがあるな。


 アス姉にステータスを全開放してもらった時、たまたま判明した新たな事実というだけだ。そのスキルがどういう効果で、どんな時に発動するのかというのは今のところ全然わかっていない。


 だが……


「期待していい。僕は絶対に負けない」


 夜も更けてきた。

 明日はいよいよ本番だ。


 今日はそろそろお開きにしよう。

 あまり遅くまで話し合いを続けても、これ以上の準備はできないだろう。


 皆なにかしら新しい力を手に入れていたわかっただけでも収穫だった。


 明日は自信を持って、死力を尽くそう。



 最後に。

 判明した僕の本当のステータスを《《一般公開》》して、この回はお開きとする。



―――――――――――

名 前:アーク

職 業:超越者

レベル:51


攻撃力:1472

防御力:895

魔 力:1001

体 力:631

敏 捷:635


覚醒スキル

 【絶対覇道領域】

―――――――――――

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