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第26話 また隠し部屋を見つけたんだが

「ふぅ」


 ガストラダンジョン地下25階。最下層。


 積み上がるサイクロプスやケルベロスのしかばねを座布団にしながら、僕はいつものように魔素まそ入りプロテイン[バナナ味]をゆっくりと味わっていた。


 放課後にこのガストラダンジョンで周回を決行するようになってから、はや7日の時が流れた。決戦の日、【シャンバラヤ】開催まではあと6日に迫っている。


「それにしても、妙だよね……」


 本当は学園なんかに通わず、3人とも決戦の日まで修行に明け暮れる日々を送るほうが勝率を上げられるのではないかと最初は思案しあんした。


 だが、どう考えても敵が正攻法で来ないと察知していた僕は、その動きを探るためにあえて学園への登校を控えないことにした。


 その理由はメアやカナデ、もちろん密偵のゲッティにも共有し、当然ながら情報収集の協力もしてもらっている。


 原作知識を頼れば、今の段階で僕やカナデに勝てる人材が学園内にいるとは想定しづらい。それはアリストも理解しているはず。


 決戦の日までになんらかの策をろうしてくると思っておいたほうがいいはずなんだけど……


 今のところ、ヤツ自身にまったく動きはない。


 いつものように登校し、いつも通りの時を過ごしているとゲッティから報告は受けている。


 まぁ、さすがに生徒会室にこもっている時の様子まではわからないから、そこでなんらかの話し合いは行われているのだろうけど。


 いずれにせよ、調査できる範囲でこのまま決戦の日まで敵を知るための労力は惜しまないつもりだ。


「ステータスオープン」


 これはもはやただのルーティン。

 最下層の敵の亡骸なきがらを積み上げてプロテインを飲むときは、必ず自身の状態をチェックするようにしている。


―――――――――――

名 前:アーク

性 別:男

年 齢:12(+2)

身 長:161(+21)

体 重:56(-8)

―――――――――――


 よしよし。今日も体重はいいラインをキープできているな。成長期で身長の伸びが早いこの時期、体重をこれ以上落とすのはマズい。


 周回の運動量が多くなってきたから、そろそろ食事量も増やしたほうがいいかもね。あまりせすぎると戦闘面で逆効果になる。あくまで理想体型の維持が今後の目標だ。


 続いて能力パラメータ。


―――――――――――

名 前:アーク

職 業:???

レベル:??


攻撃力:????

防御力:???

魔 力:????

体 力:501(+500)

敏 捷:505(+500)

―――――――――――


 ずいぶん成長したと思う。

 体力は言わずもがなだけど、敏捷値の上昇もいちじるしい。


 感覚的にも、自分がかなり早く動けるようになった実感は確かにある。


 カナデのような神速には到底及ばないけど、少なくとも学園内ではもうかなり上位のスピードを兼ね備えていると言っても過言ではないかもしれない。


 ただ、それ以外のパラメータは相変わらず不明なので、そこはもう割愛かつあいする。


「……ん?」


 しかばねとなった地獄の番犬のいただきから望む視線の先。天井付近に規則正しく並んだ、大理石の壁の一部がキラリと光った気がした。


「なんか、めちゃめちゃ既視感あるな」


 古本ミルちゃんのいた隠れ図書館に通じる隠し通路と同じ造りだろ、アレ。


 このグランドテイルズの世界を作った製作者サイドは、普通だと絶対に気付かないところに通路を作るのが趣味のようだ。


 闇道ダークロードで道を敷き歩いていくと、光を放っていた壁の横にはやはり凸があった。僕はなんの迷いもなく、そのでっぱりを押し込む。


「仕組みは同じなんだな」


 開いた壁から伸びる隠し通路の造りもエニグマダンジョンの時とまったく同じだった。そこらへん、制作者サイドは作画コストをずいぶんはぶいているらしい。


 もう二度目のことなので以前ほど感動することはなかったが、まぁそれでもやっぱり中になにがあるかは気になる。


 僕は暗い通路に降り立ち、そのままテクテクとなんの躊躇ちゅうちょなく、奥へとズンズン突き進んでいくのであった。





「お待ちしておりました。須藤太一すどうたいち様」


「……」


 実はこの展開はなんとなく予想していた。

 できれば裏切ってほしかったんだけど、そうはならなかった。


 通路を進んだ先に古びた木の扉があり、中に入ると巨大図書館あった。造りも見た目もミルちゃんのところとまったく同じ。


 明らかに使いまわしの光景と足元にこれ見よがしに置かれた分厚い古本。ただ、その本の色は緑ではなく、桃色だった。そこだけが唯一の違い。


 もはや当然、僕の本名をいきなり言い当ててきたのはその子(本)だった。


「ミステリアブルから話は聞いています。ようこそ、ガストラの次元図書館へ」


 ああ。ミルちゃんの正式名称だったか、ミステリアブルって。


 一瞬、わかんなかった。


 ていうか、話を聞いているってのはいったいどういうことなんだ?


「キミは……」


「私の名前はアステリアリス。皆からはアス姉と呼ばれています」


 ミルちゃんの時も思ったけど、皆っていったい誰なんだよ。このグランドテイルズの世界には、会話ができる本がたくさんいるってこと?


 原作にはなかった設定だ。

 いやまぁ、それは別にいいか。


「それじゃあアス姉。君はミルちゃんとはどういう関係なの?」


「ミルは私の妹です」


 本に姉妹の概念があるとは知らなかった。

 勉強になった。


「僕のこと、どんな風に聞いてるの?」


「女の子のことをただの●●だと思っている、○○○○の××野郎だと……」


 自主規制案件ですね、コレ。

 とても健全な男子女子諸君には聞かせられない暴言だ。


「でも最高に強くてかっこいい、優しくてステキな男子だとも聞いています」


 まるでこじらせ彼女のいびつな彼氏自慢みたいじゃないか。ミルちゃんの僕に対する評価基準がまったくの謎だ。


「そ、そっか。アス姉もここがゲーム世界だっていうことはわかってるの?」


「はい。もちろん」


「ミルちゃんより詳しい?」


「いえ。私もミルも、持っている知識の量と質は共通です」


 アス姉の言葉尻とミルちゃんとの過去の会話から推察するに、どうやらこの2人の知識データは繋がっているのかもしれない。まるでクラウドコンピュータのAI端末のようにも感じる。


 ただもしかしたら彼女、思考のクセ、考え方とかはミルちゃんと異なっている可能性も十分ある。妹とは別視点の推論を聞いてみるのも悪くはないかも。


 あーでも、あんまり帰りが遅くなると夕食を摂取する時間がなくなっちゃうな。


 僕は基本的に就寝2時間前はモノを食べないからね。ここ(ガストラダンジョン地下25階)に潜ってからもう数時間は経過している。地上へ戻るのに1時間はかかるから、逆算するとあまり時間がない。


 端的に聞こう。

 ここへはまた来るから、細かいことは後日だ。


「大雑把でもいいから、教えてほしいことがあるんだけど」


 本当にザックリとした質問になるけど、まぁいいか。


「いいですよ。なんでも聞いてくださいまし」


 それじゃ、遠慮なく。


「僕は……いや、僕たちは【シャンバラヤ】でアリストたちに勝てるかな?」

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