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第23話 ミルちゃんに相談しよう

「ねぇ、どう思う? ミルちゃん」


「……」


「メルトのヤツがさ、一緒に生徒会へ乗り込まないかって提案してきたんだ。僕にはなにか裏があるとしか思えないんだけど……」


「……」


「ねぇ、ちょっと聞いてる? ミルちゃん」


「私、そんな都合のいい女じゃないんですからねっ! 勘違いしないでくださいっ!」


 なんでいきなり怒ってるの?


 たまには会いに来てほしいって言ってたし、相談したいこともあるから来ただけのに、その態度はないんじゃないかな。


 ヘンなミルちゃん。



 グリンガム通信の黒幕が判明した後――



 メルトは僕に、生徒会へ一緒に乗り込まないかと誘ってきた。


 彼は正義感的に嘘の拡散を許さなかったみたいで、生徒会で真実を話し、グリンガム通信の訂正記事を書かせようと目論んだのだ。


 相手があのバンビーノの息子ということで、僕やメアは少し気が引ける思いもあって即答はできなかった。


 メルトは1人でも行くと言うので2,3日考えさせてほしいと回答してその場はとりあえず解散となった。


 色々と考えなければならないことがさらに積みあがっていたが、この先どう動くべきか少し迷っていた時、そういえばいい相談相手が身近にいることに気がついた。


 ってことで今、僕はエニグマダンジョンの地下5階の隠し図書館まで来ている。古本のミルちゃんに会うために。もちろん、1人でだ。


「都合のいい女って……」


「だって私、あれほどメス猫には注意しろって言ってたじゃないですかっ! それなのに……メアとかゲッティとかカナデとか、いろんな女子たちとイチャイチャイチャイチャ……えっち! へんたい!」


 いや、イチャイチャしてないし。


「そんなどうでもいいことは置いておいてさ、僕の質問に……」


「どうでもよくないっ! 死活しかつ問題ですっ!」


 どこが?

 むしろ僕のほうがよっぽど死活しかつ問題なんですけど。


「ねぇ、頼むよ。キミの意見が聞きたいんだ」


 ふざけた雰囲気を払しょくするため、僕は声のトーンを落として真剣にお願いしてみることにした。


「(トゥンク)そ、そんな顔したって、ダメなものはダメなんですから……」


「お願いします」


「(そ、尊死しちゃう!!)も、もう。わかりましたよぉ……」


 人(本)にモノを頼むときはやっぱり誠意が大事だな。


「ありがとう、ミルちゃん」


「って言ってもですね、アークさん。私だって実はもう、ある意味理解が追い付かない事象のほうがはるかに多いんですよ。仮定の話しかできないかもしれないですけど、それでもいいですか?」


「ああ、もちろんだよ」


 僕とミルちゃんの知識に共通点が多いことは、これまでの付き合いで大体もうわかっている。ただ視点は違うから、そういった意味で意見がほしいということ。


 このことは、僕が転生者であることを知っているミルちゃんとくらいしか話せない内容だから。ある意味、甘えさせてもらっているとも言えるかもしれない。


「えっと。とりあえず原作主人公メルトのことからでいいですか?」


「うん」


「あー私から振っておいてなんなんですが。ごめんなさい。実はそっちのことは正直、全然わからないんです」


「はい?」


「正史でアークさんとメルトが共闘きょうとうするシナリオなんてなかったですよね? 二人は水と油でしたから。混ぜるなキケンなんです。あ、ちなみに油はアークさんのほうですから、間違えないでくださいねっ!」


「うるさい」


 僕はもう、肥満じゃないんだよ。


 相変わらず、よくわからないタイミングでしょうもない皮肉を混ぜてくるミルちゃん。このクセに関しては、今でも若干イラっとさせられる。


「あ、冗談ですって、冗談。まぁ要するに、メルトがアークさんを誘うなんてイベント、ゲーム的には天地がひっくり返ってもあり得ない話なんです。ちなみに彼の行動はここまでずっと追っていますが、今のところ特におかしなことはしてないです。なのでその辺りの真意はまるでわかりません」


「そうだよね。だからこそ、僕も迷うんだよなぁ」


 このシナリオ改変については、これ以上議論を重ねても確かな答えは得られそうもないな。覚悟を決めるしかなさそうだ。


「細心の注意を払いながら、その提案に乗るしかないんじゃないですか? 虎穴にいらずんばってヤツですよ。行動を共にすれば、なにかわかることもあるかもしれないですし」


 やっぱそれしかないよね。


「うん。わかった。とりあえずそうしてみることにするよ」


「あまり答えになってなくてすいません」


「いや、そこはあまり期待してなかったから。他の質問もいいかな?」


「どんどん聞いてくださいっ!」


 さっきまで怒ってたクセにやたらテンション高いな、ミルちゃん。よくわかんないけど、この際だから色々聞いて帰ろうと思う。


「僕の学園での評判とかわかる?」


「最悪ですね。あのデマは相当効いています。全校生徒・教員の約90%はアークさんが嫌いっぽいです」


 10%は興味ない人ってところか。

 現状だともう学園内のほぼ全員が敵みたいな感じだな


 学園で覇権を取るという目標は、最初から大きなマイナススタートを余儀なくされているようだ。


「グリンガム通信の執筆者は生徒会副会長のアリストなの?」


「はい。あなたがやっつけて奴隷送りにした、バンビーノの息子さんですね」


 やっぱミルちゃんはなんでも知ってるな。

 メアのあの事件のコト、僕はミルちゃんに話してないハズなんだけどな。


「動機は怨恨えんこん?」


「99%そうですね。今はメルトよりそっちのほうが危険だと思います」


「アリストは父の悪業を知らなかった?」


「子供にとって多くの場合、父は尊敬すべきヒーローですよ」


 そうとも限らないとは思うけど、少なくともアリストにとってのバンビーノはそうだったんだろうな。僕は間違ったことをしたつもりもないが、多少の同情はする。


「同級生のスネイプはもう無害?」


「はい。完全に心が折れているようです」


「魔法戦術科3年のカーライルはアリストの指示で決闘に介入した?」


「はい。本当はメス猫カナデじゃなくて、アークさんとスネイプの決闘に備えてたみたいですけど。ま、そこは結果オーライって感じみたいです。はい」


 ふむ。これでメルトのこと以外、ここまで一連の事実について大体整理ができた。


 当面、まずは僕とその仲間たちのデマによる汚名を返上するため、生徒会へ乗り込んでアリストを黙らせる必要があるらしい。


「あーあと、メアやカナデのことも……」


「イヤですっ! 死んでもあのメス猫たちのことは答えませんからっ!」


 聞いた僕がバカだった。


「じゃ、じゃあ君が前に気になるって言ってたサリエルは……」


「まったく動く気配はないですね。いつも通りすぎて逆に気持ちが悪いです」


「カーライルとも面識があったようなんだけど……」


「あ、そうなんですね。えーっと、ちょっと参照するんで待ってください」


 参照とかあるんだ。

 見た目は古本だけど、仕様はプログラムっぽい感じなんだね、ミルちゃん。


「検索結果0でした。やっぱりなんかヘンです。サリエルって男は」


「うーん。でも、今はそっちを気にしてられないしなぁ」


「それもそうですね。でも、引き続き警戒だけは怠らないほうがいいですよ。これはただの勘ですけど、彼の近い周囲にもそれとなく違和感がありますから」


 メアには以前それとなく伝えたから、今はその程度の注意喚起で問題ないだろう。杞憂きゆうと言う事も考えられるからね。僕は目の前の問題に集中したい。


「ありがとう、ミルちゃん。それじゃあもう遅いし、僕はこれで……」


「アークさんはどうせまたすぐここへ来ると思いますんで、もう泣かないですからねっ!」


 そのほうが僕も助かる。


「あ、それと。アークさん、生徒会全体にも気を付けてくださいね。今回の仕掛人は副会長ですけど、生徒会長もなんか一癖ひとくせありそうですから」


「今は全員敵だと思って接するよ」


「それが賢明ですっ!」


「それじゃあ、僕はこれで……」


「あああああ!!」


 ミルちゃんの突然の叫び。


 どうした!?


「ま、まだなにか??」


「チューしてくださいっ!」


 もうこの(本)、超めんどくさいんですけど。

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