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13章【空白(ブランク)】Ⅰ




数日前から、変な夢を見る。


知らない場所。


見たこともない化け物。


血だらけの友達。


……そして、自分そっくりの誰か。


夢の中で、泣きそうなその子と一緒に戦った。




『エリオ


………ありがとう。』


皆、なぜだかわからないけど、怖いくらいに穏やかな声。

そして、化け物に殺されて死ぬのだ。


私は、最悪な気分で目を覚ます。


汗が首を伝い、呼吸も荒い。


カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。



夢だ。

ただの、夢。

そう思いたいのに

耳の奥に、まだ声が残っている気がした。


『神殿まで走れ!エリオちゃん!』


「………なんなんだよ…。」


掠れた声が漏れる。

最近ずっとこうだ。


数日前から見る夢。


知らない場所で友人が戦う夢


そして最後には必ず、誰かが死ぬ。



「……ふつーにありえないだろ……」


呟きながら、私は顔を上げる。


冷たい水を浴びても、

妙な胸騒ぎは消えなかった。


タクヤも

ハルトくんも

兄ちゃんも

先生も、


みんなは今も病院で眠っているのだから。


数年前から急に増え始めた、原因不明の昏睡症状。


ある日突然倒れて、そのまま目を覚まさなくなる。


ニュースで何度も見た。


でも原因は不明。


治療法も不明。


そして


夢に出てくる彼らもまたその病気にかかって眠ったままだ。



私の身近な人で、最初に倒れたのはハルトくん。

1ヶ月ほど前、帰宅の最中に不良に絡まれている男の子を助けた際、その道の近くで倒れているのを発見した。


次は私の兄、弾兄ちゃん。

数週間前に、スーツアクターの公演の最中に意識を失い舞台装置から転倒。


次は先生、つい数日前に校長室から廊下へ出る直前に倒れてすぐに病院に運ばれている。彼女もまた、今も目を覚まさない。


そしてタクヤ。

あまりに不安だったのか、変な夢を見るようになった私を元気づけるためなのだろう、昨日の学校終わりクレープを食べながら一緒に帰った。

確か私は、この夢の話をしたと思う。

ハルトくんの夢、

弾兄ちゃんの夢、

そして先生の夢。



今日見た夢は、タクヤの夢だった。


スマートフォンを確認すると、毎日欠かさずLINEで挨拶しているタクヤからの着信は来てなかった。



「………………。」


ふと、鏡を見る。


そこには当然、

見慣れた自分の顔が写っていた。


でも夢の中で見た、

"自分そっくりの誰か"が頭をよぎる。


もしも、

本当にありえない話だけど、


もしもみんなの意識だけが、

どこか別の世界に行っていたら?


「…………は。」


馬鹿みたいな考えだ。


そんなの、漫画とかゲームの話だろ。

ハルトくんじゃあるまいし。


私は乱暴に髪を束ね、竹刀袋を肩にかける。



「行ってきます。」


返事のない家に声を投げて、玄関を開ける。


そうして今日も

いつも通りに学校へ向かうのだ。







もしも、助ける方法があるなら?


まだ、間に合うなら?


そんな答えのない迷路を、ずっと彷徨っているようだった。

いつも通りの生活を送っても


例えば、剣道部の朝練の時、

例えば、友達と話している時、

例えば、授業を受けている時、


心のどこかではずっと探していた。


大事な人たちを取り戻す方法。



だから、


その日



足元に魔法陣が現れたとき


腰抜かしたっておかしくないのに


私は、

竹刀袋を強く握り締めていた。



「もし、」


喉が震えるのは怖いからだろうか。

そうかもしれない。

でも


「また、お前らと笑って会えるなら。」


そんなの、1ミリも怖くない。


青白い光が、視界を飲み込む。

その瞬間、私は静かに一歩前に踏み込んだ。



青白い光が弾ける。


次の瞬間、

私は固い石畳の上へ叩き出された。

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