第39話 カルヴァリィの丘の戦い 前編
レストランでの食事を終えた夢転老師は、
箸を置いて、ボソリと呟いた。
「所詮、人の世は仮想現実。数多の世界が有る」
「えっ、仮想現実。どういうことなのですか?」
「いやいや、浮世の事は夢幻という意味じゃな」
そう言うと、夢転老師は席から立ち上がり、
「ではな、若侍君。人を殺めるのは程々にな」
と、僕を相席に残して店から出た。
その後も僕は食事を続けていたが、
「蘭刃隊長、店があります」
「丁度いい、昼飯にしよう」
そんな会話が店の外から聴こえ、
制服姿の男たちが、ゾロゾロと入ってくる。
そして蘭刃と呼ばれた美男子の指揮官が、
「まずは美味い水をくれないか」
と、パンダ店主に声をかけたが、
恐る恐るパンダ店主は、こう尋ねた。
「あの、何名様でしょうか?」
「13人だ。出来る物でいいよ」
その返答にパンダ店主は、
ペコペコと頭を下げながら、
「申し訳ありませんが、混み合っておりまして」
そう言って、丁重に入店を断る。
その彼らのやり取りを見ていた客が、
ヒソヒソと小さな声で、こんな会話をした。
「あれは第六天魔王の処刑旅団だ」
「今度は、誰を殺しに来たんだ?」
その時、一人の隊員が僕を発見する。
「隊長、ダンダラ模様が」
「何だと、どこにいる?」
「あそこですよ、あそこ」
と、その隊員が僕を指指すと、
あっという間に席の周りを取り囲まれた。
「こいつが、探していた『伝説の剣士』なのか?」
「おそらく、そうでしょう。この特徴的な服装は」
「しかし、バカなのか、こんな目立つ格好をして」
蘭刃が、そんなことを言ったので、
僕は、ムッとして奴を睨み返した。
「バカとは、何だよ、バカとは」
「もう少し考えたらどうだ。すぐに発見されるぞ」
そう言われれば、そうだが、それでも蘭刃は、
「良い眼をしているな、それに度胸も良い」
と、僕を褒めるような言葉を口にする。
しかし、その後、こう言葉を続けた。
「これは任務だ。見逃すことはできない」
「わかったよ、外にでよう。店の迷惑だ」
「それなら飯は俺から奢らせてもらうよ」
こうして蘭刃は、僕の食事代を支払い、
「町外れの『カルヴァリィの丘』に行こう」
そう言って、僕を連行するように店を出る。
往来には、先ほど気絶したホワイトライオンが、
まだ大の字で倒れていて、それを見た隊員が、
「邪魔だ。どけ」
と、蹴り飛ばした。
その後、カルヴァリィの丘へと進む道で、
蘭刃は、こんなことを語る。
「第六天魔王様からの命令は、お前の抹殺だ」
「アンタも命令に従う、第六天魔王の下僕か」
「俺の出世は部下たちの生活の安定に繋がる」
そしてカルヴァリィの丘に到着すると、
「先ずは一対一の勝負だ。お前たちは手を出すな」
蘭刃は部下を制して、僕と対峙した。




