第38話 夢転老師とホワイトライオン
僕はレストランで相席した年老いた男性に、
人斬りであると見抜かれた。
「あ、あなた様は?」
「ただの老人じゃよ」
しかし、その時だ。店の入り口で、
「ようやく見つけたぞ、夢転老師!」
と、怒鳴り声をあげる男がいた。見ると、
その男はホワイトライオンの人獣である。
「あまり、騒ぐな、皆の迷惑だ」
平然と言葉を放つ、老人。
この老人が、人獣の言う『夢転老師』なのか?
「お師匠様の仇!」
そう言いながら、
ホワイトライオンは大太刀を抜いた。
店の客は静まり返り、
「・・・・・・・・・」
ことの成り行きを見守っているようだ。
その状況でも夢転老師は落ち着いた態度を見せ、
「ワシは、ここ数十年、人を殺めてはいないがな」
と、言葉を返したが、
ホワイトライオンは怒りを含んだ声で、
こう言い返す。
「お師匠様は貴様と戦い、敗れて、自信を失った」
「それは試合のことだ。命までは奪っていないぞ」
「その後、お師匠様は自暴自棄になり、酒に溺れ」
「酒に逃げたのは、その者の個人的な問題だろう」
「お師匠様は最期、廃人のようになり死んだのだ」
「それも、その者の責任だろう。ワシと関係ない」
「うるさい。それでもオレは貴様を倒す。勝負だ」
「分かったよ。逆恨みだな。じゃあ表に出ようか」
と、言って夢転老師は素手のまま、往来に出て、
大太刀を構えるホワイトライオンと対峙した。
「剣を取れ、夢転老師!」
殺気立ったホワイトライオンは、
怒鳴り声をあげたが、夢転老師は静かに、
「いや、ワシの得意は無手じゃ」
平常心のまま、緩やかな自然体の動きで、
拳法の構えをとる。
「ならば、遠慮はせぬぞ」
ホワイトライオンは言葉を吐き捨て、
「トウッ」
と、高々と跳躍した。そして空中から、
「白獅子飛行斬り!」
唐竹割りに斬り下ろす。
ズサアァーン。
凄まじい一撃だ。だが、
夢転老師は、ヒョイと、斬撃から逃れ、
着地したホワイトライオンの脳天を狙い、
「てえぃ!」
手刀を打ち込んだ。
バシィン。
この一撃でホワイトライオンは、
バタリ。
その場に、ぶっ倒れて昏倒する。
その『達人の業』を目の当たりにした僕は、
「す、凄い、まさに名人芸だ」
驚愕のあまり呆然としてしまった。
それでも夢転老師は、
「じゃあ、飯の続きを」
と、大の字で気を失ったホワイトライオンを、
往来に残したまま、さっさと店の中へと戻る。
そして、何事もなかったように食事を続けた。




