59話 異世界の魔獣は美容に興味深々?
『攻撃も防御もできて、とっても気持ち良くもなれて。それからいっぱい遊べるし、センプウキって凄いねぇ!!』
『ボル君は、雷ピカピカッ!! ってできるなの。皆がシビビビビッて痺れたり、ピカピカで火事になる時もあるなの。後は周りを明るくできるなの!! それから、それから~なの……、みんなを元気にできるなの!!』
ピカピカで火事って、それは良いのか悪いのか。山や森が火事になったら大変だろう。いや、水魔法ができる魔獣がいれば大丈夫なのか?
扇風機の防御と攻撃を何回も見て、フィノとボルクスは大喜び。もう1回、もう1回が、なかなか止まらなくて。ようやく今止まった所だ。20回はやったか? まぁ、俺は基本魔法はダメダメだが、魔力量だけは高ランク冒険者だからな。
何回魔法を使おうが、まったく問題はない。本当なら魔力を使いすぎると、眩暈がしたり、具合が悪くなったり、最悪の場合は死ぬこともあるらしい。
そのため普通に街や村で暮らしている人達は別として、冒険者さんや騎士達は、必ず魔力回復ポーションを持ち歩いていると。
俺は魔力がありすぎて、まだ具合が悪くなる、なんて事になった事はないけれど。いつか扇風機で強い魔法が使えるようになったら、気をつけようと思う。
というか今も一応は、どこかへ出かける時は、必ず魔力回復のポーションは、持ち歩いているけど。俺じゃなくても、他の人や魔獣に使うかもしれないしな。
「さて、そろそろ良いか? さすがに畑仕事に集中させてくれ」
『うん!! リョウパパ、ありがとう!!』
『ありがとうなの!!』
ミルフィーに次いで、フィノとボルクスにまで、パパと呼ばれるようになってしまった。14歳、子持ち。何とも言えない……。せっかく若く異世界転移したのに。
「そうれじゃあ、扇風機を大きくしておくから、後は自分達で遊んでてくれ。『ミディアムライズ!!』」
今はチビもふもふ組はいないから、大きな扇風機の方が、2匹とも遊びやすいだろう。そう思い、俺は扇風機を大きくしてやる。そしてすぐに言葉遊びを始める2匹。
『お゛も゛し゛ろ゛い゛ね゛~』
『う゛ん゛な゛の゛~』
今のみんなの流行りは、言葉遊びでただ声を発したり、歌うんじゃなくて。会話をする事だ。時々聞きづらいこともあるのに、みんなしっかりと理解できていて。しかも風をあびて口が渇くだろうに、長く会話が続んだ。よくできると思うよ。
そんな扇風機会話を聞きながら、畑仕事をする俺。畑は2ヶ所あって。この前収穫した方の畑は、畑の半分収穫したから、そこには新しい種と苗を植えて、もう半分は、もう少し後に収穫をする。
今俺がいる畑の方は、半分がもうすぐ収穫で、残り半分はもう1つの畑の収穫後に収穫予定だ。時期をずらして収穫しているから。いつでも美味しい野菜を食べる事ができるぞ。
ちなみに、この異世界にも季節があって、花の咲き始める季節、めっちゃ暑い季節、ご飯が美味しい季節、めっちゃ寒いけど楽しい季節、の4つで。聞いた感じ日本と同じ、春夏秋冬があるようだ。
というか、めっちゃ暑い季節と、めっちゃ寒い季節って。誰だよ最初にめっちゃなんて言葉使ったの。地球の言葉かと思ってたのに、異世界でも使う言葉は同じなのか?
それに楽しい季節は何か聞いたら、雪が降ってきてみんな遊べるから、らしい。雪も同じだったし、遊べるってそのままの意味だった。パーティーピーポーとまでは言えないけど、今異世界の人達は楽しい事が大好きなようだ……。
「さて、野菜虫もあれから見てないし、野菜の成長も良い感じだし。このまま元気良く育ってくれれば良いな。そうだ、受粉を手伝ってくれる、魔獣達や虫に、ハーチーを用意しておかないと。今度みんなで採りに行くか」
ハーチーとはハチミツに似ている物で。ハッチという蜂似の魔獣が、花の蜜を集めた物がハーチーだ。とても美味しいんだけど、貰うのが大変なんだよ。まぁ、俺達はハッチの集めた大切なご飯を、貰うというか、採ろうとしているんだから、怒るのは当たり前なんだけど。
このハッチ。大きさが小型犬よりも大きく、かなり凶暴なんだ。自分達が食べる分だけ、少しだけハーチーを貰うんだけど。それを採るためには、かなり危険が伴って。初めての時は、危うく刺されるところだった。
『ハーチーは体に塗ると、皮膚がサラサラになるんだよね』
俺の独り言にフィノとボルクスが、言葉遊びをやめて、風に吹かれるだけにして話し始めた。
『ねぇ、なの。僕も毛に付けて、少しして洗うと、毛がサラサラになるなの』
『花によっても、いろいろ違うよね』
『匂いも違うし、サラサラ具合も変わるなの』
『たまにダメな時もあるけど、ほとんど良いハーチーだよね』
『今度は足裏にも付けてみようと思ってるなの』
……え? 美容に興味津々というか、美を追求する女子? いや男子? え? 待て待て、この世界の魔獣って、美容に興味があるのか?
まさかの会話に、思わずフィノとボルクスを見る。俺は地球にいた時は、最低限の化粧品やクリームは使っていたけど。この世界に来てからは、石鹸で洗うだけで、何もしてなかった。
『今度採りに行くなら、樽1個分はもらってこよう。僕、前にいた場所でも、木の実の入れ物に入れて持ってきて、それを体に塗ってたんだ。みんなもいろいろな入れ物に入れて持ってきてたし。その場でつけてる仲間もしたけど、それだと危ないもん。ここには樽があるから、樽に入れるの』
『僕は巣を1個、取ってきてたなの。ちゃんと、ありがとうしたなの。すぐに巣が復活するから大丈夫だもんねなの!!』
ハッチ達は群れで生活していて、何個も巣を作り、密集して暮らしている。その巣の数、平均100個以上。しかも巣が取られたり、壊れたりすると、1日もしないで復活させるんだ。だから少しもらうくらいなら、問題ないんだけど。
それよりもフィノとボルクスの会話に、俺は畑仕事を忘れ聞き入っちゃったよ。




