17話 扇風機を使った家族との、初共同扇風機魔法『エリアバリア』
俺は急いで液体を畑に満遍なく撒いていく。だが、撒き始めてすぐだった。思っていたよりも早く、野菜虫達が結界の中へ入ってきてしまったんだ。
『リョウパパ!! はいってきた!! はやくまく!!』
「分かってる!! くそっ! 父さん達はまだか? 俺の火魔法じゃ、奴らを追い返すほど強くないんだよ! 父さん火魔法じゃないと」
野菜虫。虫というだけあって、火が苦手なんだけど。苦手と言いつつ耐性があるんだ。だからレベルが1の俺の火魔法じゃ、関係ないとばかりに向かってくる。
父さんの魔法くらいになれば、奴らは寄らなくなるし、何だったら父さんがそれで退治してくれるから良いんだけど。タイラーが呼びに行ったのに、なかなか2人が来てくれない。
「くそっ!! 今すぐ来てくれないと間に合わないぞ!! 後1週間くらいで収穫予定のレターが、このままじゃ犠牲になる!!」
レターとは、レタスに似ている野菜で、水々しくてとても美味しい野菜だ。サラダはもちろん、野菜炒めにスープ、パンに挟んだりと、いろいろな料理に使う事ができる。
収穫しても1ヶ月くらい保つから、自給自足で暮らしている俺たちにとっては、美味しくて大切な野菜なんだよ。
「ダメだ!! 普段の奴らより勢いがある!! これくらいの薬液じゃ、気にせず食べられるぞ!!」
俺は全ての液体を撒き終わってしまって。仕方なく箒を手に取り、奴らが来たら箒で払おうと考えた。
しかしその時だった。突然頭の中に言葉とイメージが浮かんできて。俺は扇風機の方を見た。それからミルフィーの方を見て……。
俺は考える間もなく、すぐに動いた。扇風機の方へ急いで向かい、扇風機を手に取ると畑の前に立つ。
『リョウパパ?』
「いいか、ミルフィー。今から俺の言う事をよく聞くんだぞ。いつも扇風機の前で、声を出して遊んでいるだろう? それを今からやって欲しいんだ」
『ことばあそび?』
「そうだ。だけどいつもと違う言葉遊びだ。魔力を使いながら声を出して欲しいんだ。もしかしたらそれで、あの虫達を止める事ができるかもしれない。俺が声を出せって言ったら、何でも良いから、魔力を使いながら声を出してくれ。できるか?」
『うん!!』
赤ちゃんのミルフィー。ただ赤ちゃんでも、自然界で生きていた魔獣だから。まだ赤ちゃんなのに生き抜くために、俺と出会う前から、魔力操作はすでにできるようになっていた。だから魔力を乗せて、声を出してくれるように頼んだ。
が、問題は俺だ。歳上の俺だが、最近早く魔法が使えるようになったばかりで。まだまだ魔力を溜めないと、魔法が使えないからな。野菜虫達が来る前に、急いで魔力を溜める。
焦るな落ち着け、いつも通り溜めれば間に合う。心の中でそう思いながら、深呼吸をした後、魔力を溜め始めると。15秒ほどで魔力を溜めることができた。
うん、間に合った! 今度は扇風機だ!! 俺は扇風機に魔力を流し、首振り機能は止めたまま、強でスイッチを押す。すぐに強い風が前に向かって吹き始めた。
タイミングを測れ、まだ遠い。やるのはちょうど俺達の目の前に来た時だ。まだだ、まだ……。今だ!!
「ミルフィー、叫べ!!」
『あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛』
「エリアバリア!!」
ミルフィーが声を発した瞬間、俺も呪文を唱えた。
するとそれまでただ強く吹いていた扇風機の風が、少し震える感じがしたと思ったら。その後今度は風がまとまる感じがして。そのまとまった物が野菜虫達の方へ飛んでいき、一気に野菜虫達を吹き飛ばした。
それから俺は、首振り機能をオンにしなかったんだけど、勝手にスイッチが入り。本来ならあり得ないんだけど、首が360度回って、周りから来ようとした野菜虫達を吹き飛ばしたんだ。
それから何度か野菜虫達が近づこうとしたが、360度の風のバリアによって、畑に入る事ができなかった。
俺は扇風機を離さないように、しっかりと扇風機を持ち直す。ミルフィーは扇風機の動きに合わせて、周りながら声を出してくれているぞ。
と、その10秒後。やっと父さん達が来てくれたよ。
「リョウ!! すまん、遅くなった!! リョウ?」
父さんが俺を見て、変な顔をした。扇風機を持って立っていたからだろう。しかも扇風機の風を出す部分はクルクル周り、それに合わせてミルフィーも回っていたからな。でも話しは後だ。今は野菜虫をどうにかしないと。
「父さん!! 野菜虫達を!!」
「あ、ああ!! ファイヤー!!」
父さんくらいのレベルになると、基本魔法のファイヤーでも、かなりの威力になる。父さんの火魔法が、一気に野菜虫達を追い払い、逃げずに残った野菜虫達は、一気に殲滅した。あれだけ苦労したのに、父さんが来たら一瞬で解決だよ。
俺は大きなため息を吐きながら、ミルフィーに声をかける。
「ミルフィーありがとう。もうやめていいぞ」
『うん!! おもしろかった!! まわることばあそび!!』
「はは、面白かったなら良かった」
「リョウ、ミルフィー、遅れて悪かったな」
「父さん、どうしてすぐに来てくれなかったの? タイラーが呼びに行ったからすぐに来てくれると思ったのに」
『ふんっ! こやつは大をしておったんだ!! そんなもの後にしろと言ったんだが、すぐだとか何だと、だから遅れた!!』
トイレかよ!!
「……父さん」
「急には止められんだろう!! 仕方なかったんだ。とりあえず間に合ったから……。いや間に合ったのは、おそらくお前のおかげだな。お前、一体何をしていたんだ?」
「話すけど、喉がカラカラだから中で話すよ」
「分かった」
思わす座り込んでいた俺は、よいしょと立ち上がり。扇風機を持って、みんなで家の中に入った。
だがこの時、ある生き物が俺を観察していたなんて。そしてこの後、まさかの出会いをするなんて。この時の俺は思ってもいなかったんだ。それは外の人々には、簡単に話せないような出会いで……。




