第6話 御客様方
2日後、シティーホールにて。
花丸
「えっと、倉柿殿。改めて初めまして、白峰花丸です」
倉柿
「倉柿冬之助です。本日はよろしくお願いします」
2人は軽く挨拶を交わす。
倉柿
「本日お呼びした理由は他でも無い、マテリアルスコープの件についてです」
花丸
「…そうですよね。あはは」
倉柿
「何か不安に思われておられましたか?」
花丸
「いや、一騒動ありましたし、もしかしたら訴えられるかなと思いまして…、、」
倉柿
「確かに仕返ししたいという気持ちが無かったといえば嘘になります。しかし我々研究職に就ているもの同士、利益があるのであれば協力し合うべきでしょう」
花丸
「…ふぅ、それで、マテリアルスコープをどうされたいのでしょうか?」
倉柿
「他でもありません。桜梅桃李株式会社にて、マテリアルスコープを共同開発して頂きたいのです」
花丸
「ええ! でも、まだ危ないですし、スコープで本当に幽霊が見えると証明出来た訳では、、」
倉柿
「不安なのも承知の上です。ですが是非協力頂きたい。査読は通らないかもしれませんが、開発費の投資はさせて頂きます」
花丸
「価値を見出して頂けた、ということでしょうか」
倉柿
「そう思って頂いて結構です」
花丸
「…ちなみに、発表会で僕が錯乱状態で言ったことは事実なのでしょうか、、?」
倉柿
「半分事実で、半分虚偽、とお伝えしておきましょう」
花丸
「半分、ですか?」
倉柿
「妻は確かに亡くなりましたが、隣に私も寝ていました」
花丸
「…!」
倉柿
「妻が落下する音に気付いて、その時に異臭を察し、ガス栓を止めに向かったのは私です。つまり、もし私がガス栓を開けたとしたならば、自殺未遂ということになりますね」
花丸
「…、、」
花丸は申し訳なさそうに頭を垂れる。
倉柿
「お気になさらずに。私はまだ死ぬつもりはありませんし、もしかしたらマテリアルスコープで真犯人を見つける事が可能かもしれない。そう思えば良い投資になると思います」
真犯人…。そう聞くとやや使い道を模索している最中で、そういった使い方があると考えている様に伺える。すると倉柿は名刺を花丸に渡す。
花丸
「…倉柿殿は、研究開発部長様でしたか」
倉柿
「ええ。面白い分野だと思い、たまたま参加させて頂きました。まさかあんな目に遭うとは思いませんでしたが」
花丸
「では私の名刺も」
花丸も名刺を差し出す。
花丸
「…ちなみになのですが、本当に幽霊が見えると信じられていますか?」
倉柿
「断言しますが、幽霊と定義して良いか定かでは無いけれど、当事者しか知りえない情報を口にされました。何処で私の名を知ったかも含めて元を辿るより、まずはマテリアルスコープを弊社で調査したく存じます」
花丸
「私が断ったら、如何なされます?」
倉柿
「断られたら、そうですね。訴えましょうかね?」
花丸
「う、、」
ギクッと花丸は緊張する。
倉柿
「冗談ですよ。でも悪い話では無いはずです。資金援助をし、開発のお手伝いをします。願ったり叶ったりではありませんか?」
花丸
「そうではありますが、、矢張馴れ初めというか、、」
倉柿
「運命的な出会いというならば、これもまた相応しい出会い方かもしれません。今すぐとはいいません。もし可能であれば、研究の条件についてお話を進めましょう。それでは、良いお返事をお待ちしておりますよ」
花丸
「…はい」
会議はそこで終了する。花丸はシティーホールから出て、自身の研究室へ戻る。
花丸
「よっっっしゃぁあああっ!!」
光
「わぁびっくりしたぁっ!?」
花丸
「光クン! マテリアルスコープを桜梅桃李で研究開発を進めたいとオファーがあったぞ!!」
光
「ひゃぁ!? 私に言って良いんですか〜!?」
花丸
「言うに決まってんだろっ! 今日は焼肉パーティーだぜっ!」
光
「あははっ! 教授の奢りですよね?」
花丸
「ったりめぇよ! 割り勘に決まってんだろ!」
光
「ええっ!? あれぇ!?」
2人は定食屋で焼肉定食を注文した。
光
「それで、そのオファーは受けたんです?」
花丸
「いや、まだだ」
光
「受ける気ではいるんですか?」
花丸
「一応? ただどんな条件か改めて確認しなきゃならない。その辺は返事をしてから聞くつもりだ」
光
「幽霊が見えるスコープ、何に使われるのでしょう」
花丸
「さぁ、ただ何となく、幽霊を見る以外の使われ方もしそうな気はするな」
花丸の奢りで定食屋を退店する。
花丸
「それじゃあ資料なんかを纏める必要がある。光くんはもう帰るといい」
光
「はーい。研究開発、上手くいくといいですね」
花丸
「ああ、何とか形にしたいよな」
花丸は大学の研究室へ戻る。すると扉の前に誰かが立っている。若い女の子であるが、学生服を着ている。どうやら大学生ではなく、女学生と思われる。かなり目付きが鋭く、花丸に気付くとキッと視線を移した。
「白峰花丸、そうだな?」
花丸
「お、おおう。どちら様で?」
女子高生の様な容姿。自分の知り合いにこんな子はいないなと思いつつ、相手の出方を伺う。
「ウチは政府機関【明頭螺】の陰陽道の霊能者、芦屋 廻子。あんたのマテリアルスコープについて話をしに来た」
花丸
「お、陰陽道、、!? 陰陽師って事!?」
廻子
「ああ、陰陽師ってヤツで間違いない。あんたに話があってきた」
やたら電波気味な女の子。だがタイミングが合いすぎている。アポなしで来る客としては、あまりにも見過ごせない相手であった。




