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第3話 窮鼠

マテリアルスコープのケースを取り外し、その様相をさらけ出した。


花丸

「この機材はマテリアルスコープと命名しました。機能の概要は資料を参照に説明させて頂きます。私はデルタ波で幽霊確認反応を示した、被験者の脳波とその数値と周波数に注目しました。極度のリラックス状態、睡眠状態とされるデルタ波のなだらかな脳波でありながら、覚醒状態であるベータ波の指数を出した被検者の彼女の事を以後被験者デルタと呼称します。被験者デルタの脳波、周波数に合わせる為、どうすれば良いか試行錯誤した後、脳の意識状態をその波に合わせるようアプローチしてみてはどうかと考えたのです。それがこのヘッドセットとゴーグル。無線でこのマテリアルスコープと繋がっております」


花丸はスクリーンにマテリアルスコープを映し出す。


花丸

「ご覧下さい。これがマテリアルスコープの概要です。人間の意識は海中に浮かぶ氷山と表されています。上から意識、前意識、無意識。人は寝ている際、覚醒状態での記憶を前意識や無意識に落ち込みます。これは心理学の分野になりますので細かい内容は省きますが、彼女。【被験者デルタの意識レベルは潜在意識にあります。】つまり寝ているけれども、【起きている状態。】とても特異な状態にあるのです。そしてマテリアルスコープはその【寝ているけれども起きている状態、無意識を覗き込める状態を、更に覗くためのスコープなのです】」


辺りがざわめき始める。そのスコープに対して興味の眼差しが注がれるのを感じる。


花丸

「このヘッドセット、スコープにより意識の状態を3次元で組み替えるのです。…御安心を。脳を直接いじっているわけではなく、被験者デルタの状態で外界を観察できるよう視覚に訴えかけているのです。このヘッドセットを頭から取り払ってしまえば意識の状態は直ぐに戻ります。ただ、このヘッドセットを被りスコープを覗いている間は同調しやすくなっている為、まだ調整改良が必要です。では実際に使用した結果報告として資料を参照願います。まだ実験段階の機材であるため被験者は私、白峰と助手の黒澤講師の2人だけでありますが、完全に安全と判断出来れば統計と資料作成に取り掛かることができます」


学会員達は資料に目を通す。光が作ったイラストと資料。バームクーヘンっぽい人間とオーラを纏った人間。幽霊の姿。学会員達がスコープと資料をひとしきり見た後、発表は終わった。


司会

「…はい。ありがとうございました。大変興味深い内容の研究発表でしたね。では先生方から何かご質問はございますでしょうか?」


1人の学会員が手を挙げた。


学会員

「はい、では質問させていただきます。今回幽霊が見える機械ということで発表を聞かせてもらいました。とても興味深い内容の話でした。ありがとうございます。それにあたって幾つか質問があるのですがよろしいでしょうか?」


花丸

「ありがとうございます。はい、よろしくお願いします」


学会員

「霊能力者100名の統計ということで大多数を占めていたベータ波の被験者の結果ではなく、デルタ波の1名にのみ焦点を絞って研究をされたという事ですが、これは正しい統計結果が取れているのでしょうか? ベータ波の被験者の意見が大多数であるのに対し、被験者デルタの…VHzでしたっけ?その整合性は取れているのでしょうか?」


花丸

「…と、言われますと?被験者デルタの実験結果が正しいか否か、ということでしょうか?」


学会員

「ベータ波の被験者は45名。被験者デルタのVHzは1名。どちらが重要で正しい実験結果であるかと言われると、被験者デルタよりもベータ波の被験者45名ではないでしょうか?その大多数のベータ波の被験者45名の周波数には焦点を当てなかったのでしょうか?」


花丸

「…被験者デルタの脳波と周波数は特異なものでして、常人には有り得ない指数であったため焦点を当てました。」


学会員

「それでは被験者デルタと同じ結果の霊能力者100名を募り、実験を試行し、それが全て同じ結果になった、という訳ではないですよね?」


花丸は苦虫をかみ潰したような表情を浮かべた。何年もかけてやっと見つけた幽霊可視化への手がかり、被験者デルタ。それを100人見つけられるものか。とても現実的ではない。


花丸

「…そうですね。その点抜かりがあったことは言い訳の仕様がありません」


学会員

「そして、このマテリアルスコープを覗いた先の実験結果が白峰教授と黒澤助手で違う説明が気にかかります。なぜ人によって違うのですか? 同じように幽霊が見えないと、より整合性に欠けると思われるのですが」


花丸

「それに関しては、本当に安全だと判断した際に統計実験をし、資料を作成したいと判断しました。恐らく次回の研究発表会でその旨の資料提出出来ると思います」


学会員

「…ふぅむ。研究費用に見合う内容の研究発表であるなら査読も通ると思うのですが…。はは、これではあまりにも不完全さが表に出ています。申し訳ないですが自己満足の領域を出ていません」


周囲からため息が漏れる。花丸はくっ、と下唇を噛んだまともな研究費用なんて貰った覚えはないが?と反論しようとしたがここは何とか幽霊が見える機械だということを証明しなくてはならない。


花丸

「…分かりました。それでは【幽霊を実際に確認し、それを証明しましょう。今この場で!】」


花丸にはわかっていた。昨今の大学へ進学する生徒が減っていること。心霊学科の人数が減っておりジリ貧だということ。このままでは自分の研究が出来ず、職を失ってしまうということ。実験を1から再出発させる時間は花丸には残されていない。


【ここで結果を残さなければ!】

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