第27話 転がれ! ミートボール!
一行は西ノ丸の一帯にお清めと結界を施し、次の祓い場である酉の段へ向かう。櫓門を抜けると二手に分かれている。
津雲
「こちらを右へ行くと大手門組の祓い場になっています。私達は左ですね」
光鳴
「大きな邪気の気配を感じます、、。相当数の悪霊が集まった集合体とみて間違いないでしょう」
光
「集合悪霊ですね。この間戦いましたね」
花丸
「二人掛りでも手を焼いたな。油断出来ないぞ光くん」
光鳴
「集合悪霊を祓ったのですか…!? 二人で!?」
光鳴は驚きっぱなしである。集合悪霊が出た場合、その場所は閉鎖になる禍ツ土となるのが基本であり、余程の事が無い限り仕事の依頼が来ることは無い。自然に浄化されるか、神社等を建てて悪霊を鎮めるのが定石である。長い時を掛けて悪霊を神として崇め、お祈りし、浄化を促し、神霊として昇華させる必要がある。かくいうこの場所も該当する土地であり、兎に角祓える人間を各地から集めたというのが依頼人の希望で、城の様な歴史的建造物でなければ、神社が作られていた可能性が高い。
津雲
「トドメを刺したのは廻子局長でしたが、ほぼほぼ二人で討伐出来たと言えるでしょう。黄昏時で危なかったですが…」
光鳴
「集合悪霊は、本来凡そ人に対処出来る存在ではありません…。そういう場が出来る事を未然に防ぐ必要がありますが、霊界の意思によって抗えない場合もあります」
輝彦
「そうですね。集合悪霊は本当に危ない存在です。霊能力者が匙を投げる案件でもあります」
光
「そうだったんですね…。でも悪霊同士合わさったら簡単に出来ちゃいそうな気もします」
津雲
「集合悪霊が出来るにしても条件が揃わなくてはいけません。相当数の悪霊が犇めく土地で、不吉で不浄な物が常に供給される場所。そしてこの世と魔界を繋ぐ楔となり得る呪物も必要です。それらが揃わないと集合体そのものを維持出来なくて、分離するか幽世から出られなくなります」
花丸
「なるほど。あの廃団地は大体揃ってましたね」
津雲
「人にも守護霊や先祖霊、指導霊等が寄り添っています。別の次元から観察しているにせよ、この世に学びに来た後輩の身に危険が及べば一肌脱ぐでしょう。あまりに強い悪霊がいるのであればそこを避けるよう誘導しますし、場合によっては戦って追い払う事もします」
光
「ちゃんとお墓参りしないとですね、、」
光鳴
「…そう思えば、今回ここへ招かれた霊能力者達は神の導きによって集められた戦士達なのかもしれませんね」
花丸
「僕達は神に選ばれたエリートって事ですね。不吉を撒き散らす亡者達をあの世へ送って反省して頂きましょう」
輝彦
「…はは、神様のみもとにありますように」
〜酉ノ段〜
酉ノ段は二ノ丸へ向かう坂になっている。広く長い場所であるが、一行の視線はその坂の真ん中にいる存在へと集まっていた。
『ぶもぉぉぉぉぉ!!』
巨大な牛である。牛の悪霊に、大量の悪霊が集まって巨大化している。地面の黒いドロドロとした境界門から顕現したようだ。牛の足と人間の足が幾つも付いており、蜘蛛の様ではあるが非常にバランスが悪い。巨大な牛の頭を持った肉塊である。
花丸
「霊道は城へ続いているな。コイツは悪霊の尖兵って所だろ」
光
「動き難そうですねぇ」
津雲
「この場所なら器用に動く必要も無さそうですよ」
悪霊
『もぉぉおおおっっ!!』
案の定ゴロゴロと転がって来る。
光鳴
「に、逃げろっ!!」
光鳴とその他の霊能力者達は慌てて退散する。
花丸
「あれに轢かれたらどうなると思う?」
光
「分かりません。アレの一部にされちゃうかもですね」
花丸
「それはマズイな」
花丸はバックパックから長いロープを取り出す。それを通路の端から端に掛けて敷く。
光
「唵阿謨伽尾盧左曩摩訶母捺囉麼抳鉢納麼入嚩攞鉢囉韈哆野吽」
光はロープに触れて真言を唱える。するとロープが光だし、光のカーテンがロープの真上に展開される。
花丸
「ここバリアー」
ゴロゴロゴロ、ドチャアアッ、、!!
悪霊
『ぼぉおおおっ!?』
ロープより先に進めず、じたばたと暴れ回る。
花丸
「そらそらそらそら」
花丸はレイブラスターをガンガン撃ち弱体化させていく。
光
「前回決め手に欠ける事を指摘されましたね」
光はオコゲを拳に憑依させ、真言を唱える。
光
「九天、応元、雷声、普化天尊、渾沌、窮奇、饕餮、檮杌の名の下に邪気邪霊退散、急々如律令…」
光の全身がバチバチと帯電する。
オコゲ
『おおっ!! こりゃあ凄まじい呪力じゃ!』
光
「破ッ! 壊ッ!!」
まるで獣の形をした雷の拳が悪霊に向けて放たれる。
ズギャアアアンッ!!
落雷が落ちたかのような衝撃で周囲の空気が波打つ。
悪霊
『…ッ、、』
悪霊は叫ぶ間も無くバラバラに吹き飛ばされ、爆発四散した肉片は焼け焦げて煙と化した。
輝彦
「…わぁ、本当に凄い」
輝彦は感嘆の声を漏らす。
津雲
「貴方は、逃げなかったのですね」
輝彦
「ええ。あの二人は命懸けで戦っているのですもの。自分だけ逃げる訳にはいきません」
光
「…ああ〜、、はぁ」
光はヘナヘナと膝をついた。
花丸
「すげぇな光くん! 一撃でミートボールをぶっ飛ばしたぞ!」
光
「でも1回休みかもです、、。力が一気に持っていかれちゃいます、、」
津雲
「光氏、お疲れ様です」
津雲は光の背中を優しく撫でた。
津雲
「よく頑張りましたね。次は私が除霊を務めさせて頂きます」
花丸
「おお、遂に見れるのか。津雲さんの除霊が…!」
光鳴
「…あ、ああ…」
光鳴は申し訳なさそうな顔をして戻ってきた。
光鳴
「悪霊のあまりの禍々しさに逃げ出してしまいました、、。本当に申し訳ないです、、。今後同じ様な悪霊が出れば、私は力になれそうもありません」
津雲
「大丈夫ですよ。問題ありません。光鳴さん達はここで結界の展開をお願いします」
光鳴
「はい、かしこまりました…」
光鳴はすごすごと周囲のお清めに取り掛かる。
花丸
「…一般の霊能力者はこんな感じになっちゃうんですね」
津雲
「場馴れもありますし、花丸先生と光氏の様に問題がないのは、霊体に対する恐怖が薄いからでもあります。それは先に祟り神の様な大物を見ているからかもしれませんね」
花丸
「確かにあれと比較したら、大概の霊体は可愛いものですね」
オコゲ
『儂の凄さが少しはわかったかの?』
光
「この先オコゲと同じ位凄いのがいると思うと、少し気が重いですね、、」
花丸
「まぁ廻子もいるし、津雲さんや郷造さんもいる。僕も前回よりアップデートしてるし、何とか無事そうな気がするぜ」
一行は光鳴に酉ノ段の結界を任せ、次の祓い場である二ノ丸へ向かう。




