第23話 ずびゅーん
花丸
「と、いうことがあったんだよ」
倉柿
「お父さんとですか…」
花丸は、先日の父との会話の話を倉柿にする。倉柿はふむふむと顎に手を当てながら話を聞いている。
花丸
「もしかしたら倉柿殿の奥さんとも話が出来るかもな」
倉柿
「その可能性もありますね…。少し心の準備も必要ですが」
花丸
「そうだな。正直僕も少し怖かった。きっと受けてくれるだろうし、タイミングは倉柿殿に任せるよ」
倉柿
「はい。稀有な機会を与えて頂き、本当に感謝します」
花丸
「あはは、まぁ、感謝するのは津雲さんにだけどな」
すると津雲が研究室へ入ってくる。
津雲
「こんにちは」
倉柿
「あ、津雲さん。こんにちは」
花丸
「ちょうど津雲さんの話をしていた所だったんです。先日僕とやったみたいに、倉柿殿の奥さんと会話出来たらいいなって」
津雲
「はい。可能ならば是非やりましょう。ただ…」
花丸
「ただ?」
津雲
「魂の状態を吟味する必要があります。形代という形で意思疎通が可能なレベルまで力を与えている状態なので、暴走して攻撃してくる場合も十分有り得ます」
倉柿
「…」
花丸
「大丈夫ですよ。きっと奥さんもわかってくれるはずです」
津雲
「そうだといいんですが」
倉柿の表情がやや曇る。
倉柿
「…何時か必ずやらせて頂きたいです。津雲さん、その時はよろしくお願いします」
津雲
「はい。かしこまりました」
倉柿
「津雲さん、本日はどうされました?」
津雲
「もうそろそろ次の作戦に取り掛かる必要があると局長からのお達しがありました。従って本日は研究の進捗をお伺いしに来ました」
花丸
「研究の進捗ですね。ヨシきた、エリック。説明よろしく」
花丸の肩から端末が伸びてくると画面に2Dのスマイルが表示された。まるで絵文字の様であるが、妙に愛嬌がある。
エリック
『津雲氏、本日はよろしくお願いします。研究の進捗報告をさせて頂きますね』
画面に指パッチンマークが表示されると、スクリーンが自動で電源が入る。ブゥン、電気が暗くなり、スクリーンが見易くなった。
エリック
『前回、花丸先生と光氏の共闘ミッションにおいて新たなデータが取れました。それを基に性能をアップデートし、機能を追加しました』
花丸が背負っていたマテリアルスコープが表示され、その横に別のツールが映し出される。
エリック
『マテリアルスコープは可能な限り小型化する様に開発を進めています。前プロトタイプは32kgありましたが、18kgまで削減する事が出来ました』
津雲
「結構重かったんですね」
花丸
「まぁ背負ってましたし、体になるべく固定する様に加工されてもいました」
エリック
『更にレイブラスターとマテリアルスコープは有線コードが繋がっていましたが、無線でも使用可能になりました』
津雲
「あ、これは不味いですね。有線に戻した方が良いです。霊の領域にて電波系の機械は非常に阻害されやすい性質を有しています。現に鬼狂山では全く使用不可になりますし」
エリック
『心配ご無用です。鬼狂山での事も織り込み済みで、魔界での使用条件を照らし合わせ、無線での使用可能な状態に仕上げてあります』
津雲
「ほう。鬼狂山でも使えるということですか?」
エリック
『はい。理由としてはオルクスダイバースーツを介してマテリアルスコープを同期しているからです。因みにレイブラスターを落としたとしても、【エニグマパワー】で引き寄せる事ができます』
津雲
「エニグマパワー??」
エリック
『前回不可解のエネルギーと称した力について解析を進めました。その結果、【生物を構成する要素は3つ】。肉体と魂、そして不可解のエネルギーと定義させて頂きます』
津雲
「不可解のエネルギー…」
倉柿
「エリックは当初、現段階でその力を収集して利用するのは不可能と判断していました。ですが光氏が使用する陰陽術から着想を得て、オルクスダイバースーツを着用する事で、本人のエニグマパワーを使用して簡単な【霊的能力】を使用するレベルまで研究が進みました」
津雲
「…す、すごい!」
津雲は驚嘆の表情をする。心の底から驚いていると言っても過言ではないだろう。
エリック
『今の所、レイブラスターに刻まれているコードに反応して引き寄せる事が可能です。それに伴いレイブラスターの機能もアップデートしています』
花丸
「霊を可視化出来るようになり、どんどんその情報と仕組みを解析する事でその真似が出来るようになってきたという訳ですね」
エリック
『説明はエニックの役割ですよ。ぷんぷん』
画面にぷんぷんと怒った表情の顔文字が表示される。
花丸
「ハイハイ。口出して悪かったよ」
花丸はやれやれと肩を竦める。
エリック
『話を戻しますね。まずエニグマパワーを使用してレイブラスターが放てる弾丸の種類が増えました。通常はテイクショットでしたが、光氏の術の効果も付与することが出来ました』
スクリーンにその弾丸の名前と、効果とその仕組みが表示される。
エリック
『まずはスタンショット。相手を金縛りにする弾ですね』
津雲
「九字護身法の刀印で動きを止めていましたね。その効果でしょうか」
エリック
『そうですね。ただこれは短い時間ですし、エニグマパワーは使用者も消費しますので、他に攻撃出来る方がいないと使用のオススメは出来ません。霊の個体によって対抗値もありそうです』
花丸
「雑魚なら1発撃って、ステッキで殴って倒すことも出来ますね。悪霊位になると何発も撃つ必要があります。現状使用優先度は低そうですね」
津雲
「…いやしかし、便利そうですね、、。開発が進めば拡張性が高そうです」
エリック
『ふふふ。エネルギーの問題さえクリア出来れば、主戦力になり得る武器です。次がフレイムショットです』
津雲
「フレイムですか。おそらく不動明王の術ですね。特定の霊体に対して有効打になりそうです」
エリック
『オコゲ氏は火を吐くのを嫌がっていましたが、レイブラスターは嫌がりません。ガンガン撃つことが可能です』
花丸
「エネルギー切れを起こすからガンガンは無理だぜ」
エリック
『長期戦に備えて温存するか、一気に攻めて作戦を成功させるか。使用者にはその都度判断が求められますね』
津雲
「火が、ずびゅーんって飛んでいくんですか?」
倉柿
「…ふふふふ」
花丸
「ふふ、飛んでいきます。というと語弊がありますけど。光弾が飛んで、着弾すると燃えます」
津雲
「そうなんですね?」
エリック
『そうですね。【燃やす】というコードを含んだエニグマパワーを相手に放ち、着弾部分を燃焼させる効果があります。火炎放射というより、どちらかというと火炎瓶を投げるイメージに近いかもしれません』
津雲
「ほうほう。それでも頼もしいです」
エリック
『そうでしょう? そして次がサンダーショットです』
津雲
「雷神の真言ですね。電撃は強烈です」
エリック
『その通りです。光氏の様に掛け声も要りません。ウェブショットにすれば複数体を巻き込みながら感電させる事が出来るでしょう』
津雲
「ウェブショット?」
エリック
『蜘蛛の巣状に電流を放つ事が出来ます。威力は下がりますが、範囲が広がり牽制にも役立つ筈です』
花丸
「ぶっちゃけますと、これはエニグマパワーを使わなくても電力エネルギーを放てたりしますけどね」
エリック
『むー。霊体にはマントラコードが不可欠です。ウェブ状に形状を変えられるのもサンダーショットならではの仕様です。現在の所、レイブラスターの機能アップデートは以上となりますね』
津雲
「結構色々ありますね。切り換えるのが大変そうです」
花丸
「ダイヤル式になってまして、ここを回すと切り替えられます。それと声に出すとエリックが変更してくれます。まぁ1度見られた相手には警戒されるかもですけど」
レイブラスターの右サイドにダイヤルがあり、それを回すと切り替わる様だ。
津雲
「テイクショット以外を使うとエニグマエネルギーを消費するんですね。エネルギー切れに気を付けないといけませんね」
花丸
「エネルギー切れについてまだ詳しくわかっていません。力が使えなくなる以上にどの様なデメリットがあるか把握する必要がありますね」
津雲
「思いつく限りだと、取り憑かれ易くなる、恐怖を受けやすくなる、体力が切れやすくなる、運が悪くなる等ですね。生霊を放ちすぎると精神的に不安定になったり、病に罹りやすくなったりします。それに近い症状が起こるかも」
花丸
「…なるほど。エネルギー問題が解決する迄みだりに濫りに使用するのは御法度ですね」
エリック
『それとステッキを改良しました。レイブラスター同様、無線にする事でナイフ型とバット型に分けることが出来ました』
花丸
「バット型は嬉しいですね。ブンブン振り回せます。大蛇の悪霊もイチコロでしょう」
コードが記された金属バットがオルクスダイバースーツの横に置いてある。
エリック
『このバットにもコードが敷かれております。スイッチを入れればスタン、フレイム、サンダーと切り換える事が可能です。場所はグリップエンドの部分がダイヤル式になっており、下がスイッチになっています。ナイフ型は特殊で、柄の部分にトリガーがあり、それを引くとライトセーバーみたいに刀身が伸びます!』
津雲
「毘沙門天の退魔の力ですね。穢れた霊力を分解する力があります」
エリック
『そうです。青白い刀身はエニグマパワーを削ぎ落とします。刀のように使用可能ですね。バット型より軽くて振りやすい利点があります。研究の進捗報告、アップデートは以上となります』
津雲
「…すごい。本当に凄いですね。既に一流の陰陽師レベルの戦闘力があります。勿論戦闘だけが陰陽師の仕事ではありませんが、戦いにおいてかなり心強いです」
花丸
「これを使用者が上手く使いこなす必要がありますね。作戦では足を引っ張らないよう気を付けないと」
倉柿
「データ収集も忘れずお願いしますよ」
津雲
「霊道の視認のみならず、ここまで戦える戦力になり得るとは正直思っていませんでした。素晴らしいの一言に尽きます。作戦を繰り返す事にどんどん凄くなっていきますね!」
花丸
「まぁ何処かで頭打ちになりそうな気もしますけど、、。期待に応えられているようで幸いです」
津雲
「…これならば廻子局長どころか、崩柴宝楽すらも」
津雲は顎に手を当ててぼそりと呟く。
倉柿
「如何なされました?」
津雲
「いえ、なんでもありません。ふふ、まだまだ期待しておりますよ。研究の報告、廻子局長へ恙無くお伝えさせて頂きます」
花丸
「了解です」
津雲
「それではまた後日、作戦についての情報を共有しますね。今日は美味しいハンバーグを作ってお待ちしております」
倉柿
「え?」
花丸
「…いや、えっと、津雲さん、僕と同居してるんだよ」
倉柿
「えっ! そうだったんですか?」
津雲
「ふふふ。はい。一人暮らしは何かと不便かと思いまして。暫くお邪魔させて頂いております」
花丸
「お邪魔だなんて…。何時も助かっています」
倉柿
「はえ〜…。色々と早すぎますね、、」
倉柿はあっけらかんとした表情で2人を眺めた。




