102.好きな人が周囲から大切にされているのはいいことですが
じっとフィリップ様を見ていると、フィリップ様は困ったように笑って、
「誤解を招くようないい方でしたか?レイモンド様を咎めるつもりなどありませんよ。そもそもわたくしには、ブロッケンシュタイン家の方を咎める権利などありませんし。わたくしはただあなた方に、美咲様の身元を公言しないでほしいとお願いしただけです」
「……そ、そうですか」
フィリップ様はこほんと小さく咳払いして、また元の穏やかな表情に戻った。
なんだー。
レイがやたらかしこまっているから、怒られているのかと思ったけど、私の身元を明かさないでほしいっていうお願いだったんだね。
……それにしてはずいぶん、ずいぶんな迫力だった気がするけど……。
うん、ここは考えちゃだめな案件だね!気にしないよ!
「ごめんなさい、私のほうこそ勘違いして先走って。失礼なことを申し上げました」
「いや。美咲がああいってくれたの、すげーうれしかったぜ」
ぺこりとフィリップ様に頭をさげると、ぽんぽんとレイが頭をたたいてくる。
「すまねーな。お前を元の世界に戻すよう全力を尽くすとか言ってたのに、いざその方法がわかったら、ショックうけちまってよー」
「ううん。……私のほうこそ」
「謝るなよ。美咲は初めから、元の世界に戻りたいって言ってたんだし。俺だって、承知していたんだからさ」
レイは笑って答えてくれる。
だけど、その笑顔はどこかかげっていて、無理をしているのがありありとわかる。
「レイ…」
私はレイの頬に手をあて、そっと撫でた。
レイは一瞬目を閉じ、私の手を上から握りしめる。
だけどすぐにその手を離し、自分も私から身をひいた。
「フィー様にもお恥ずかしいところをお見せいたしまして、申し訳ございません。こちらからお願いしておきながら、尽力いただけるとのお言葉にあのような反応をしてしまうなど」
「いいんですよ。あなたの立場なら、当然でしょう。むしろあなたが、こんな依頼をしてくるほうが意外ですよ。……レイモンド様」
「なんでしょう?」
「ここからは、あなたを子どものころからしっている爺の戯言だと聞き逃してください。わたくしはあなたが、彼女を帰す方法があっても教えないでくれと言ってくれれば、帰す方法はないと彼女に申し上げましたよ」
「フィー様……」
小首をかしげてかすかに笑みをうかべるフィリップ様は、男なのに聖女のようだ。
フィリップ様が首を動かすと、艶やかな黒髪がさらりと揺れる。
言ってる内容は、私にとっては悪魔みたいなのに、その清らかさに思わず見惚れてしまった。
レイは泣きそうな顔で笑う。
「フィー様まで、なに言ってんだよ…。せっかく俺が聖騎士らしくまっとうな紳士としてふるまっているのによー」
読んでくださり、ありがとうございます。
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本日(すでに日付変わってるので昨日ですが)のupは、ちょっと遅刻です。
パソコンの調子が悪くて、手間取っていました。
1日1話upは勝手につくっているルールなのですが
できれば守っていきたいので、明日からはもうちょっと早め行動心がけたいです。




