謎の男
真っ白い空間に俺はキザな青年といる。
言ってみれば、本当に何もない。
いや、クラウドが座っている席とその前に大きなコンピューターらしきものがある。
クラウドといるとはっきり言ってなにかモヤモヤした何かを感じるが、そこは今はスルーしよう。
だが、これだけは我慢ならない
「なあ、この機械って一体なんなんだ?」
「まだ言えない」
「どこに向かってるんだ?」
「まだ言えない」
「お前は誰だ?」
「クラウド」
「いや、そう……いいや」
顔は見えないが、めんどくせぇーみたいな顔してるんだろうな。
いや、まあ確かに知らない人にとやかく聞くのは失礼なことぐらいはわかってるさ
しかしだ!しかしなのだ、俺がいつの間にか死んだ世界に連れて行かれていたとしたら、それはそれで問題だ!
そうだ!じゃあ質問を変えるか
「なぜ俺の質問に答えられないんだ?」
「上がそういう命令を下したからだ、俺も言いたいことはたくさんある」
ふむ、なるほど、解決しとらん!
もういいや!
それにしても、さっきからどうも振動が激しい、いやなんというか、眠たくなるような振動が感じられる。
この機械に窓はない、外観から見ると案外小さいように見えるが、中に入るととんでもなく広い、学校の教室ほどはあるだろうか。
「なあ………」
「なに?」
「ちょっと寝ていいか?」
「……………………ご勝手に」
何考えてんだ?
馬鹿じゃないの?
とか思われようが、思われまいが、昨日あの偽妹が隣にいて寝た気がしなかったので、俺はここらで一つ睡眠を取ることにした。
気がかりなのはこいつが変な気を起こさないかとか、なにか俺の大事なものを盗まないだろうかという心配はあったものの、俺はなぜか妙に安心した自分がいることを悟り、睡眠に入った。
俺が次に起きたのは大きな揺れが起こったからだ。
「ど、どうしたんだ⁉︎」
「敵がきた」
こいつは少し焦って・・・などいなかった。
「敵ってのはなんだ?」
「………………………」
こいつは急に俯き出した。
なんだ?そんなに俺にとって不都合なやつなのか?
とすると、
「俺の家で叫んでたやつか」
「ああ……あんたの妹だ」
「いや、妹じゃねぇけどな」
「は?…………あ…」
「どうした?」
「なんでもない、そんなことよりそろそろ着く。席についていてくれ」
俺はしょうがないので、言われるがままにそうした。
あいつが攻撃しているせいか、うまく歩けない、
俺が乗ってるのに攻撃していいのだろうか?
いや待て、ここには窓もないこいつはどうやってあの偽妹だとわかるんだ?
しかし、確認しようにも窓もない。
俺は大人しくしていることにした。
それにしてもこの顔だけでムカムカするイケメン野郎は全く動揺していないんだが、なんつー精神力だよ。
とまあ、考えてはいたものの、どうやらそろそろ着くようで、機械の軌道が変わり始めた。
そして、ついに到着したようだ。
機械はプシューという、蒸気を吐くような音は一切せずに、例えるなら、ハイブリットカーみたいだな。
「着いたから降りてくれ」
お前が連れてきたのに命令するのか
まあ、助けてもらった身だししょうがないか
どうやらクラウドは少々疲れたらしいので、休むそうだ。そして、寝始めた。
仕方ないので、俺は知らないところに一人で降り立つ。
寝るんじゃなくて、案内ぐらいしろよと思う気持ちはまあ借りにしておくとして。
俺は期待と胸が全く膨らまない今の気持ちを心のゴミ箱に捨てて、扉を開けた。
風が俺の体に強く当たる。
外はとても寒かった。
俺は東京から南極に一瞬で飛んだような気がした。
どうやら、俺は今丘の上に立っているようだ。
ここの世界は草が一本も生えていないらしい。石がゴロゴロと転がっているのが見て取れる。
そして、丘から見える景色が、俺の理解を早めた。
ここは俺の住んでた場所、日本だ。
一瞬でわかったのは、世界一高い塔があったからだ。
だが、立っていたのではなく、部品が地面のそこらじゅうに転がっているのがわかる。
まるで、何かに潰されたような感じだ。
東京は見るも無残に廃墟だらけで点々と家々から火事が起こっている。
水は氾濫していて、ビルは全て崩れていた。
そして、空に太陽がなかった。
な、何が起こったんだ⁉︎
と、そこで機械の中から寝起きのクラウドが出てきた。
同時に、丘の下の方から人がやってきた。
そいつは、髪をオールバックにして白衣を着ていた。背は俺と同じぐらいで、年齢は二十代ぐらいだ。
「リーダーお迎えに上がりました」
その男はクラウドをリーダーと呼んだ。どっかの偉いやつなんだろうか?
「憲武、一ついいか?」
「なにか?」
「寒くねぇのか?」
「寒くないです」
「………ならいい」
なんだ今の会話?
なんつー日常的な会話してんだよ
「よし、お前は憲武だな」
とここで、一言告げた。
「今のは暗号のようなもんだ」
俺が戸惑っているのを悟ったのか、クラウドは答えを言ってくれた。
ややこしいな、おい
「んで、この白衣のオールバック野郎は久城憲武。俺の部下だ。」
こいつは心を読む能力があるのかと思うほど俺の疑問にすぐに答えてくれる。
「リーダー、自己紹介はさておき、一刻も早く、エンタープログラムに行きましょう。後はそっちで全てやりましょう」
「そうだな、ここも寒いしな」
と勝手に俺をおいて歩き出した二人を俺はそれを追いかけるように歩き出した。
どうやら今向かっている場所は、エンタープログラムというところらしい。
東京にそんなところあったか?
と考えている間にもどんどん先に進んでいく誰だが知らない誘拐犯のような奴らは前で喋っている。
と、そこで
「おい、腹減ったりするだろうから、飯もらってこうぜ!」
「そうだな」
都心の外れにあるそこのコンビニは電気はついているもののの誰も管理している様子はなく古サビていた。
中は食品が結構置いてあるためとってっても構いやしないだろうけれど
賞味期限が気になったので、よく見ると
『2017,7,8』
なんだと⁉︎
「おい、クラウド‼︎」
「んだ、どした?」
なにをそんな余裕かましやがって!
「ここはどこだ!」
「それはま…」
「いいから言え!」
「おい、落ち着け勇太」
とそこで、憲武が割って入ってきた。
「俺は名前を名乗ってねぇ。なぜ俺の名を?」
すると、憲武はスーッと息を吸い込み心を決めたような顔をして
「俺の本名は……」
本名?憲武じゃないのか?
憲武(仮)は一つ一つ間を開けて俺にこう告げた。
「お前の友人だった。島隆二だ」
なんだ?一体、どうなってるんだ?
「混乱してきただろ?」
俺は答えない、混乱しているからだ。
「だから、あんまり言いたくなかったんだよ」
そのまま何も言わずにクラウドはエンタープログラムへと歩き出した。
俺は手にパンやら飲み物やらおにぎりやらを持った。俺の頭の中は疑問を抱いたままだ。
そしてコンビニになぜかエロ本だけなかった。
見ているだけで寒く感じる道を歩いてきて、途中点々と見える壊れたビルを追い越し俺たちはどうやらエンタープログラムに着いたらしい。
そこだけ妙に新しく作られた感があるのでものすごく目立つ。
二階建てのアパート?を改造した基地とでも言うかのような作りだ。
いわば、廃墟のアパートだな
「ほら、みんなお前を待ってるぞ」
俺は言われるがままエンタープログラムと呼ばれる廃墟に足を踏み入れた。




