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法具堂看板娘

 ――諸君も魔法を使うのであれば必ず手に取ることになるであろう魔導具。今回その魔導具についてレクチャーしていこう。


 魔導具とは、我々ソーサラーが魔法を使うにおいて非常に重要な媒体メディアとなる代物で、その種類も用途も様々なものとなっている。


 そもそも我々ソーサラーはその魂の中にあるイデア器官と呼ばれる器官に魔力を蓄えており、その器官から肉体を通して外へと放出することで魔法を唱えることが可能となっている。そしてこれを実際に術式として魔法陣などで図式化、詠唱することが魔法の一連の発動手順となっている。


 そしてその魔力の放出を手助けするのが、今回ここで解説する魔導具である。魔導具を身に着け、魔法を唱えることでそのイデア器官からスムーズに魔力を取り出し、更に言えばその魔力を増幅させることも可能となるのである。


 そして魔導具の計上も様々なものであり、それぞれ個人の相性も存在する。魔導具の一例を挙げると、杖、タロット、箒、人形、本、模造刀などここでは挙げられないほど多種多様な魔導具が存在する。


 ――諸君も魔導具を吟味し、その相性をきちんと見極めて使いこなせるようになれば、一流魔導師も夢ではないであろう。(法石書房「魔導具の基礎Ⅰ」より内容を一部抜粋)






「――私は今から法具堂で魔導具を買い揃えに行く。君も来るかい?」


「私は一応上層部で道具は揃えたんですけど――」


「上層部も中々上物があるが、下層部は掘り出し物もあるのだよ」


 そう言いつつ住良木は四賀を連れて、法具堂の中へと入っていく。中では至る所に魔導具が置いてあり、そして奥のかごが並ぶ場所にはフクロウやカラス、ネズミや猫などの生き物まで取り扱っていた。


「すご……」


「ここでは魔法生物もいるらしいから、契約もできるぞ」


「契約って?」


「契約を知らんのか? 契約とは対象となる魔法生物と契約することで、従わせることができるぞ。まぁパーソンが言うところの『ペット』の様なものだ」


「へー……」


 四賀はパーソンという言葉に一瞬反応を見せるが、住良木に怪しまれない様にすぐさま態度を戻す。


「住良木さんはここで何を買うんですか?」


「魔導具だ」


「へぇー、私はおさがりの杖を貰ったんですけど――」


「魔導具選びは非常に大事だ。君の持っている杖以外にも、いろいろな媒体がある。それぞれ人に合った魔導具を使うことが、魔法がより効率的に使えるようになるのだよ」


 四賀が感心していると、住良木は杖がたくさん並ぶ棚の方へと足を向ける。棚は奥まで続いており、まるで魔導具の奥深さを示しているようでもあった。奥だけでなく棚の高さも尋常なものでは無かった。梯子が必須と思われる中、住良木はお構いなしに奥へと入っていく。


「……わー、こんなに種類があるんだー……」


「杖一つ挙げるとしても、素材の違いで様々な出来となるのだ。さらに言えばこの杖のせい制作法のちょっとした違いでも最終的に大きな違いとなってしまう」


 そう言って住良木は布の上に置いてある杖の一つを手に取ってそれを振ってみる。しかし杖を振ろうが何も起こらず、辺りはしんとしている。


「これは外れだな。次の杖を探してみるか」


 あてずっぽう歩き回って杖を探している様に見えるがきちんと吟味しているらしく、次の目的の杖が置いてある場所へと向かう。しばらく歩くと棚の上の方をきょろきょろと見て、ある一点を指さす。


「……あれだな」


 はるか上を指さす先に、どうやら目的のものはあるらしい。しかし辺りに梯子もなくてはとることもできない。


「うーむ、どうしたものか……」


「――あらぁ、上の杖が取りたいの?」


 おねぇ言葉が聞こえた直後、上の方から杖が降りてくる。杖は住良木の手元へと落とされ、その杖を落とした少年は更に言葉を続ける。


「アナタたち、月陽学院の新入生?」


 後ろを振り向くと、頬に手を当て艶めかしい角度で腰をくねらせている美少年が四賀たちの目に入ってきた。耳触りの良いテノールボイスが棚の間を駆け巡る。


「いやぁねぇ、アナタ達可愛いわぁあたし嫉妬しちゃいそう!」


 意地悪そうに人差し指を突き出すその行動に四賀の思考は停止していた。


 男が、あたし?


 あたしが、男?


「訳わかんなーい!」


「あら大丈夫? どうかしたの?」


 どうかさせた本人はきょとんとした表情で話しかけるが、四賀は混乱の渦にとらわれっぱなしである。住良木も一刻はそれに気をとられていたが、改めて気持ちをリセットすると、目の前の少年に感謝の気持ちを伝える。


「杖をとっていただきありがとうございます。失礼ですがお名前は――」


「あたしは木在千城きさらかずき。皆からはカズねえって呼ばれてる、この法具堂の看板娘(?)よぉ!」


 言ってる本人はハイテンションではあるものの、周りの冷めた視線は四賀たちにも向けられる。住良木はだんだんこの男と一緒にいることが恥ずかしくなってゆき、急いで会計を済ませて店を出ようとその一歩を踏み出す。


「チョット待ちなさぁーい」


 店員から待てと言われてしまっては止まらざるを得なくなり、改めて木在と向き合う。


「その杖、チョット振ってみなさいよ」


 住良木は言われた通り持っていた杖を振るうが、先ほどと同じで何の反応も示さずにいる。その様子に木在は首を傾ける。


「うーん……その杖は合わないみたいねぇ……」


 そう言って木在が素手を振るうと、遠くから杖がつつまれた布が住良木の前まで飛んでくる。


「コッチはどうかしら?」


 言われた通りに杖を取り出す。持ち手に小さな赤い石が埋め込まれ、それ以外の装飾はされていないいたってシンプルな杖だ。そしてそれをそっと振ってみると、杖から小さな炎がポンッと音を立てて一瞬だけ燃え上がった。


「多分それがいいんじゃないかしらぁ?」


 ビンゴと言わんばかりの得意げな表情で指を鳴らすと、木在は道を開けレジの方へと誘導をし始める。


「会計はあそこで済ませなさぁい。いい買い物をしたわねぇ」


 そう言って可愛らしくウインクをすると、はたきを持って再び棚の方へと戻っていった。


「いい人……みたいですね」


「そう……だな……」


 モデル歩きをする少年の後ろ姿を見送りつつも、住良木は会計を済ませていった。




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