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成果

「――絵空事を見続ける亡者、その手は空を掴むも及ばず――」


 木在が詠唱を続けるにつれ、影の手はより色濃く、よりその形を確定的にしていく。そしてその手はエドワードを死へといざなうかのようにも感じ取れる。


「掴め、永遠の暗黒を! 引きれ! かたきの首を!! ――這拠奇手クローリングハンズ!!」


 幾重にも重なる暗黒の腕が、エドワードに掴みかかる。


「……やべぇな」


 エドワードは手をぎりぎりまでひきつけ、魔法陣に逃げ込む。それを繰り返して回避はできているが、反撃をする余地は無いようである。


 現にエドワードの額に一筋の冷や汗が流れ、その状況の不利を木在に教えてしまう。


「まだまだあるわよぉ!」


 更に木在の影から手が召喚され、その数優に千を超え、エドワードに襲いかかる。


「――裂け! 貫け! 天の威光は我にあり! ――集天裂光弾ライトニングティアー!!」


 光は地を這い天を貫く。そして闇へと誘う手をその光の矢でかき消してゆく。


 光はそれだけに留まらず、余裕の表情だった木在に襲い掛かる。


「チョット!? それは無いでしょ!?」


「むしろ俺にこの魔法を撃たせたんだ、お前は十分強いぜ」


 見事二枚目の防護陣を突き破り、第二試合はエドワードの逆転勝ちとなった。


「どうする? 三回戦するか?」


「そうしたいところだけど……生憎魔力切れよぉ」


 木在がそう言ってへたり込むとエドワードはふぅ、とため息をついていったん休憩となる。


「……流石に中級の追加詠唱と上級を連発すりゃきついわな」


 そういうエドワードも少しだけ息が上がっており、あの時の様に上級に連発の時のテンションでは無いのも相まって休憩を欲していた。


 しかし――


「あれれー? エド先輩もう駄目なんですか?」


 気が付けば、すぐ近くに一人の少女が立っている。


「……お前、確かおっさんの――」


「そうでーす! だけどあの人に破門されちゃって、今は別の人に師事しているんですよ!」


 その纏う雰囲気の違いを、エドワードは感じ取っていた。


 四賀はただニコニコとしたまま、エドワードの後ろに突然立っていた。


 振り返って見て改めてわかるが、明らかにあの時とは違う。この少女とはあの時見ただけにせよ、にじみ出る魔力がまるで別人だ。


 そして木在も、短い時間であったにせよ彼女と話をし、その感覚を覚えている。


 しかし違う。あの時とは明らかに、身に纏う雰囲気が禍々しさを、闇を感じることができるのだ。


「で、今回その人からエド先輩らの実践に交じって来いって言われたんですけど、連絡行っていませんでした?」

 連絡も何も、たった今聞いたことである。エドワードはその言葉の背後に不穏さを感じながらも、まずは彼女と演習を通してその裏を突きとめようと考えた。


「……連絡は来ていないが、練習するなら構わんぞ。たった今木在と一戦交えたところで、木在は休憩をいれるところだったからな」


「アラ、アタシはまだイケるわよ?」


 木在は四賀を警戒してか、その場に残ろうとするがエドワードはそれを必要ないといった意味の言葉で返す。


「ま、今回は俺がやるからその間休んどけ」


「はぁーい」


 木在はあっさりと休憩しにどこかへ出かけると、残ったエドワードと四賀で防護陣を組み始める。


「……」


「えへへー、ちゃんとできていますよね?」


 エドワードはあの場でコーエンとテオドールのやり取りを聞いていた。


 その内容は、四賀はまず魔力をコントロールする術が身についておらず、コーエンが基礎から教えなければ、赤ちゃんに立って歩くことから教えるレベルだと言っていた。


 それが今、立って歩くどころか逆立ちができるレベルにまで仕上がっているではないか。


「……」


「どうしたんですか? なんか怖いですけど……」


「……何でもない」


 一か所。一か所だけ防護陣を構築した時の魔法陣が違う。


 それは普通の魔導師が見ても気が付かない箇所。恐らく生徒会の中でもエドワードしか気づかないであろう箇所。


「……」


 ――魔法陣が、一か所だけ非対称であること。


「……そっちからから来ていいぞ」


「呪文の制限とかってあります?」


 一年生なのに変な質問をする奴だ――とエドワードは一瞬思ったが、それはエドワード自身が制限する事なのかと解釈をした。


「俺は一応中級以上は使わねぇつもりだが――」


「あっ、別に使ってもらって構わないですよ!」


 どういう事だろうか。


 よほど師事した師匠の指導が上手いのか、それともただ単に無謀なだけか。


「……戦ってみればわかるか」


「じゃあお言葉に甘えてこっちから行きますよ!」


 そう言ってまず仕掛けてきたのは四賀の方からだった。


「――滅相滅私めっそうめっし犠牲あれ。滅相滅私めっそうめっし破壊あれ。全ては炎王えんおうの通り道。全ては灰に還る道――」


 その急激な魔力の膨れ上がり様は、エドワードにあることを思い出させた。


「お前……!」


 それは先ほど先崎が感じさせたものと似ているが非なるもの。


 何せ空に展開される明らかに魔法陣の展開が大規模過ぎる。

 

「――何かしらあれは……」


 遠くにいた木在もそれを感じ取り、そしてまた見て取った。あれは明らかに常人が構築できる魔法陣ではない。


「――見せてあげましょう! 私が覚えた最初の呪文を!」


 四賀は天に右手を掲げ、魔法陣から生まれる獄炎を受け入れる。


「――暴走爆走ブレイズレース!!」


 真っ赤なドレスを身に纏い、爆炎をたずさえた少女がエドワードの目の前に降り立つ。


「さあ……試合開始しましょうかっ」



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