表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/40

魔力対暴力

 それは魔法史上まだ誰も見たことが無いであろう、守護縛鎖キュアーによる『魂の縛鎖』を、身に纏うという行為だった。


「……コーエン、一体どういう事をしたのだよ?」


 ハクトはあまりの混乱ぶりに、仕事モードと口調が入り混じってしまう。そしてドラウグルスも、自分の知らない魔法体系を見て唖然としていた。


「バ、バカな……我は知らんぞ、そのような魔法など!」


「知る訳が無いだろうが、たわけが」


 自らに纏わりつく鎖を見たコーエンは、実験成功と言わんばかりに右手に絡みついた鎖を掲げる。


「まあいい、とりあえずは第一段階成功だ……『縛鎖』の実体化はできた。後は貴様を殴り倒すだけだ」


 当の本人しか確認できないことを確認し終えると、コーエンは改めてドラウグルスの方を向く。


「丁度いい。貴様で試させてもらおうか」


 先ほどから挑発を連発するコーエンに対し、ドラウグルスも改めて戦闘態勢を取る。


「先ほどから擂輪縛撃グラインドサークルを抜け出したりと、ふざけた真似をしおって、もう許さんぞ!」


 重力の輪を複数携え、ドラウグルスは激昂する。ハクトもその様子に加勢しようとするが、コーエンはそれを許さない。


「どうしてさ! あいつは唯でさえ魔力消費が激しい擂輪縛撃グラインドサークルを、いくつも従えている! 流石のコーエンだって――」


「俺を前にして、魔力という軟弱なものにすがること自体が愚かなのだ」


 コーエンはそういうと、猪突猛進にドラウグルスへと突っ込んでゆく。


「愚かなのは貴様の方だ!」


 もちろん懐に入り込もうとするのを、ドラウグルスがやすやすと許すわけが無い。すぐに重力の輪がコーエンへと向かって行き、その手足を引きちぎらんと喰らいかかる。


「無駄だぁ!!」


 両手足を掴もうとする輪は、コーエンに当たったそばから砕けては消えてゆく。


 そしてそれはまるで、呪文が解呪されるのと似たようだった。


「なっ!? バカなっ!? 詠唱破棄してあるはずだから、解呪は不可能――」


「だぁから貴様は愚かなのだぁ!!」


 胸部に一発。それはまるで攻城兵器を撃ち付けるような打撃であり、魔法では中々味わえない痛みをくれる。


 続けて腹部に鎖が巻きつかれたニーキック。その二発を前に、ドラウグルスは無様にも地に伏そうとする。


「ごっ――」


「――これで終わりと思ったか?」


 地に伏せる顔の横で、コーエンもまた体をかがめていた。右腕を大きくそらせ、それがこれから渾身の一撃を与えることを示す。


「この――愚か者がッ!!」


 止めの一撃、顎への掌底。


 強制的に突き上げられた顔に意識などあるはずも無く、ただ体を仰け反らせてその場に倒れるのみ。

 

「す、すごい……」


「どうだ? これが魔法を使わない戦い方だ」


「ていうより、人間ってここまでバウンドするもんなんだ……」


 ハクトは目の前で繰り広げられた人間離れした技に、ただただ絶句した。

 

「試験運転は成功だ。これで改良型守護縛鎖アドバンスドキュアーは完成だ。後で貴様に詳しく教えてやろう。その仕組みを」


 その言葉と同時にコーエンの身体に纏わりつく鎖は消え、残ったのはいつもの筋骨隆々な肉体のみ。


「……と、とりあえずドラウグルスは倒したんだね」


「ああ。後は拘束呪文できちんと拘束しておけ――」


「ゲヒャ、ゲヒャヒャ……」


 それが断末魔なのか、ドラウグルスは再び老衰し元の姿へと戻ってゆく。


 コーエンはそれをすでに興味を無くした顔で見下し、そして手に握られていた大杖を蹴り飛ばす。


「最後の抵抗でもしようとしたのか?」


「ゲヒャヒャ、もうわしの役目は十分果たした……闇に堕ちる候補も見つけた……」


「先崎なら、私がそうはさせんぞ」


「ゲヒャ、それは本人が決める事じゃ……」


 そういうと粉になるかのように、足元から風になびいて消えてゆく。


 それはドラウグルスの、最期の瞬間。誰もがそう感じていた。

 

「ゲヒャ、最期に……あの忌々しい会長の顔でも、拝んでいくか――」


 そう言って、口元まで来た死を前に、笑みを浮かべる。


「! まずい!」


 ハクトはその瞬間気づいた。これは自らただ死に逝くのではない。最期の呪いを掛けに行くのだと。


「もう遅い――魂贄呪カース!」


 黒い魂だけが高速で空へと延びて行き、その後ある方向へと向かう。


「コーエン!」


「分かっている。魂贄呪カースなどという古い禁呪の存在を、俺も忘れかけていた!」


 コーエンはすぐさまハクトの箒に乗りかかり、ハクト達もまたその黒い魂を追うため空へと飛び立つ。


「あれを受けると色々とまずいぞ」


「分かっている! だから私もこうやって追っているのだ!」


 ここから先は時間との勝負となる。先に魂に追いつくのが先か、ドラウグルスの悲願が達成されるのが先か。




 ――決死の追いかけっこが始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ