タネあかし
魔力自体に関しては諸説ある。イデア器官から自然生成され、外へと吐き出されるもの。あるいは空気と同様、自然の一部であり、それをイデア器官が溜め込んでいるだけであるとの説も存在する。
しかしいずれにせよ言えることは、魔力自体は決して消えることは無いという一点だけである。体内から放出された魔力は大気中を漂い徐々に薄れていく。しかし魔力は薄まっていくだけで決して消えることは無い。そして放出されたここから魔力がどうなっていくのかはいまだ知られていない。ただその場に暫くはとどまり続けるようで、魔法を使った事件の際に重要な手ががりとされている。
放出された魔力のその後を追った学者もいるが、いずれも老衰のために志半ばでこの世を去ってしまった。しかしこれから言えることは、最低でも人の寿命が尽きるよりも長い期間存在出来るという事である。よって今では魔力自体は消えないという事が魔力に関する大前提となっているのである。(魔ほろば出版「魔力とソーサラー」より内容を一部抜粋)
「――その左目に、何か秘密でもあるのか?」
コーエンとエドワードはただ話しているだけであるが、その空間はまるで対峙するかのような空気を帯びている。
「……俺の左目は、ただ怪我をしてこうなっているだけだ」
「フン……本当にそうか?」
不敵な笑みを浮かべる大男に対し、彼の左目の怪我に関する人物が文字通り横槍を入れる。
「ゴチャゴチャ分けわかんねぇ事言ってんじゃねぇぞおっさん! 会長の目に触れるなよ! ――暴発槍!」
サラの手元から飛び出したバタフライナイフが、炎を纏って槍を模る。サラは槍を構え、コーエンの方へと放る。槍はコーエンの方へ一直線に進み、その肉体を貫かんと炎を巻き上げる。
「コーエンさん危ない!」
しかしサラの放った魔法に対し、コーエンはその右手を突き出すだけ。
「……無駄だ」
その言葉の通りコーエンにその槍は届くことなく、纏った炎は砕かれてバタフライナイフだけがその手に突き刺さる。そして大男の手のひらからは、赤い血が流れ始める。
「……分かりやすくすれば、これが解呪だ。本当に魔法を解呪できた時には、このように砕け、魔力が分散される。だがその男は魔法が砕ける事無く、消え去った……魔力は一体どこに消えたんだ?」
「……!」
その場の誰もが言葉を失った。先ほどエドワードが見せていた解呪と、この男が見せた解呪とでは大きな違いがあったからだ。
「解呪とは、魔法の術式を理解し、それを逆算してずらす、あるいはまったく別の術式に書き換えることで魔法を――魔力を崩す。そのためには相手の撃つ魔法を理解しておかなくてはならない……まぁ大げさに言えば、すべての魔法を解呪できるなら、この世にある魔法全てを理解しているという事だ」
コーエンの裏付けを聞くと、その場の全ての者が納得し驚いていた。そして今まで信頼していたエドワードに対し、ほんの少しの疑念の視線が向けられる。
「……俺が知っている限りでは魔力を溜め込む呪文といったものがあるが、それは禁呪だからな……」
「……あんた一体、何が目的だ?」
エドワードは特に痛いところを突かれている訳でもない様で、首を傾けてコーエンの目的を問う。
「さぁな。ただその左目に何かあるのかと思っただけだ」
「左目は昔の怪我だ。それとあんたの言うとおり、魔力を消している訳じゃねぇ。かといって禁呪を使っている訳じゃねぇぞ?」
「そうか? 禁呪ではない方法で魔力を溜める方法があるのならば、ぜひともご教授願いたいものだな」
コーエンの皮肉交じりの頼みごとに対し、エドワードお茶でも逃がすかのごとく笑いながら断る。
「ま、それは企業秘密ってことでここでは話せねぇわ。でもあんたが最初にタネに気づいたんだ、後で個別に来るなら教えさせていただこうか」
「わ、わたしにも教えろ!」
「お前は駄目だ。どうせまともなことに使わねぇ」
「何だとーっ!?」
エドワードは頬を膨らませるロザリィをあしらいながらも、自分の魔法を見抜いたコーエンに対し、心の中では別の思考を巡らせていた。
――あの男は危険だと。




