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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十九章 謎の予言者

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参:港町バモス

 その日のうちにダイス貴族学校側にラシェルの外出を申請して許可をもぎ取り、ラシェルには城に泊まってもらって明日バモスへ出発することにした。


 そして翌日、私とラシェル、候補者三人が準備を整えたところでオロチを呼び出し、事情を説明した。


「なるほど、承知いたしました。その不届きな予言者に鉄槌を下すために、リベラグロのバモスへ転移すればよろしいのですね?」


 バモスは、先の新婚旅行中の事件で、フルメンサキへ渡る直前にオロチも立ち寄っている。

 直接転移することは可能だ。


「ええ。でも、急に転移魔術で近付いたら予言者に察知されてしまうもしれないから、少し離れた所にしましょう。勿論、遮蔽魔術をかけた状態で」

「承知いたしました」


 遮蔽魔術をかけた上でバモス近隣に転移すれば、流石に予言者にも気付かれることはないだろう。


 と、話がまとまったところで、クロヴィスが私の肩を軽く叩いた。


「……アリス、くれぐれも無茶はするなよ。何かあったらすぐに俺を呼べ」

「わかってるわよ。クロヴィスこそ、ちゃんと仕事するのよ」


 クロヴィスが仕事をしないと、側近であるイーサンに皺寄せがいってしまう。

 このままでは彼が過労で倒れてしまう気がしている私だ。


「ああ、わかってる」


 クロヴィスが僅かに苦笑する。


 皆がそれぞれ遮蔽魔術を発動させ、その直後、オロチが転移魔術を唱えた。

 瞬き一つの間に、私たちは、草原地帯に移動していた。


「ここから南へ十分ほど歩けばバモスに到着します」


 辺りを探知魔術で探り、人の気配や魔術による罠などがないことを確認してから、三人を振り返る。


「では、ここから団長選出の課題として、予言者を探してもらうわ。もしも危険だと判断したら、即座に転移魔術で別の安全な場所へ転移してね。自分の命が最優先よ」

「はい」


 三人がしかと頷いたところで、私はバモスの方に視線を投じる。


「当然、探知魔術だけで見つかるとは思っていないわ。これからバモスへ行き、聞き込みもする必要がある。そこで、貴方達には私の眷属であるオロチの分身がついていって、立ち振る舞いや魔術の精度を見るから、そのつもりで」


 私の言葉受け、オロチの姿が三人になり、それぞれの背後に控える。


「……聖女様の眷属とはいえ、魔物が背後にいると思うと落ち着きませんね」


 苦笑したのはベルノルトだ。その感覚は人間として至極真っ当であり無理もない反応である。

 まして、魔術師団員は魔物の討伐にも駆り出されることがあるため、魔物は基本的に凶暴で人を襲うものという認識が強い。


「町では聞き込みをするなら、人混みに入る前に遮蔽魔術を解除してね。日が暮れる頃には一回どこかで集合しましょう。集合場所は追って知らせるわ。念のため言っておくけど、今の課題は予言者の居場所を突き止めることだからね。居場所を突き止めたからって、命令を無視して一人で捕らえに行ったりしないように」

「承知しました」

「では一旦解散」


 私がぱん、と手を叩くと、三人はそれぞれ町の方へ足早に移動していった。


 ブルーノとベルノルトは団長になることには後ろ向きだと聞いていたが、それでも課題には真面目に取り組む姿勢が見える。

 おそらく、自分を推してくれている後輩たちに報いたい気持ちはそれなりにあるのだろう。


 リーダーシップをとることは苦手でも、人望があるとそういうことが起きるのだ。


「……さて、私たちも行きましょうか」

「はい」


 ラシェルが遮蔽魔術を解除する。彼女もこれから聞き込みをするのだ。

 本当は彼女にはあまり表立った捜査をやらせるつもりはなかったのだけど、彼女があまりにもその予言者を許せなというので、私たちも三人の動きを気にしつつ、聞き込みをしてみることにしたのだ。

 とはいえ、私が姿を見せたら聖女であると勘付かれる可能性もあるので、あくまでも私は遮蔽魔術をかけたまま、ラシェルの後ろに控えることにした。


 これで、一般人がはたから見たらラシェルが一人で歩いているように見える。


 私には遮蔽魔術がかかった状態なので、ラシェルからは私の姿は視認しづらくなっているが、『確実にその場所にいる』とわかっている場合、遮蔽魔術は完璧には作用しなくなるという特性があるため、ラシェルが意識している限り姿は見えるし会話もできる。


「じゃあ行きましょうか。ガリュー、異変を察知したらすぐに知らせてね」

『わかってる』


 仔狐の声が頭に響く。つくづくこういう場面で便利だと痛感する。


 オロチの言葉通り、十分程歩いたところで、見覚えのある港町が見えてきた。


 他国との貿易港でもあるため、田舎にしてはそれなりに大きな町だ。

 以前来た時も活気があったが、その時より妙に賑わっているように感じる。


「おや、お嬢ちゃん一人かい?」


 町に入ったところで、ラシェルが町民らしき中年の女性に声を掛けられた。


「ええ」


 にこやかにラシェルが応じると、女性は少々心配そうな顔をした。


「アンタもラティオ様の予言目当てだろうけど、そんな若い娘が一人でやって来るなんて危ないよ。この辺には魔物が出ることもあるからね」

「ご心配ありがとう。そこまで荷馬車に乗せてもらってきたから大丈夫よ」


 ラシェルが適当な嘘で誤魔化すと、女性は少し安堵したように息を吐いた。


「それより、ラティオ様って……」


 早速手がかりになることを聞けそうだ。

 ラシェルがあくまでも好奇心でやって来ただけの一般市民を装えば予言者に繋がる証言は得られやすいと思っていたが、まさかこれほどすぐに予言者の名前を聞くことになるとは思わなかった。


「ラティオ様は町外れの教会によく来ているよ。ただ、毎日いる訳じゃないから、運がよくないと会えないけどね」

「そう……予言って本当に当たるのかしら?」

「勿論さ! 前兆のなかった大嵐を言い当てたり、失くし物がどこにあるかとか、この町の領主の娘の婚約を発表の随分前に言い当てたり、言うことが全て実現するんだよ! ラティオ様は本当にすごいお方さ!」

「そう……どんな方なの? 年齢は? 女性?」


 ラシェルがついつい気になることを連続で投げ掛ける。

 幸い、女性は不審に思う様子もなく答えてくれた。


「とってもお優しい方だよ。女性で、二十歳くらいかな」


 つまり私より少し年上か。

 ラティオが長命種のエルフであれば見た目と実年齢は一致しないのだが。

 それに、変化魔術を使っている可能性も大いにあり得る。見た目の情報はあまり当てにならない。


「この町じゃあ、もしかしたらラティオ様こそが本物の聖女なんじゃないかとさえ言われているんだ」


 聞き捨てならない言葉に、私より先にラシェルが眉を顰めた。

 ガリューがムッとした顔をしたのが雰囲気でわかり、私はその頭をぽんぽんと軽く叩いて宥める。


「それはどういう?」


 ラシェルの言葉に険が滲んだのを敏感に察知して、女性は少し慌てて取り繕った。


「ああ、聖女アリス様を疑っている訳じゃないよ。ただ、ほら、こないだまでリベラグロと敵対していた帝国の聖女とか言われてもピンとこないっていうか……それに浄化魔術? って言われてもアタシらみたいな田舎者じゃあわからないからね。身近に予言がバンバン当たるラティオ様のような方が現れたら、そっちが聖女なんじゃないかって思うのも無理はないさ」


 その言葉が、胸の奥に引っ掛かる。


 聖女の本来の定義は、完璧な浄化魔術が使えること。

 歴代の聖女の中にはお飾りとして祀り上げられ、浄化魔術としては精度の低いものしか使えなかった者もいるが、浄化魔術が全く使えなかった聖女は存在しない。


 お飾り聖女の存在は一般市民は知り得ないことだが、逆に言うと、帝国の一般市民は皆『聖女は必ず浄化魔術が使える』と思っている。

 浄化魔術が使えない者が、聖女になることは決してない。


 だが、彼女の言う通り、ここはつい最近まで帝国と敵対していたリベラグロ王国だ。

 暁の女神を祀るダイス教はリベラグロでも信仰されており、この町の教会もダイス教のものだ。だが帝国のものとは宗派が異なり、リベラグロには独自の神官の階級制度がある上に、聖女の概念がない。


 だからだろうか、浄化魔術が使えないただの予言者を、聖女ではないかと持て囃しているのは。


 下手をしたら、帝国の皇太子妃である私に対する不敬罪が適用されかねないのに。そのことに気付いていないようだ。


『……アリス、妙だな』

「そうね……まるで暗示にでも掛かっているかのよう……」


 ガリューに対してそう答え、私は再び女性を見た。


 魔術の気配はない。

 操作魔術で操られている訳ではなさそうだ。

 だが、僅かに魔力の気配はしている。


「……教会に向かいながら、他の町民にも話を聞いてみましょう」


 私がそう囁くと、ラシェルが小さく頷き、教会に向かって歩みを進めつつ、何人かに声をかけてラティオについて聞いてみた。

 すると、皆口を揃えて同じことを言った。


 ラティオ様は素晴らしい。

 ラティオ様の予言は必ず当たる。

 ラティオ様こそ真の聖女だ。

 予言通り、今代の聖女は間もなく不貞が明らかとなり、皇太子殿下から離縁されるだろう。


 最後に話を聞いた男がそう言った瞬間、ガリューが僅かに殺気を漏らしてしまったので慌ててそれを押さえ込ませたが、何か不穏なものを察知したらしい男は慌てた様子でその場を去ってしまった。


『アリス、ごめんよ。アリスに対する侮辱を聞き流すことができなかった……』

「眷属だものね。いいのよ。仕方ないわ」


 しょんぼりしたガリューの頭を撫でて宥めつつ、私たちは教会の扉を叩いた。


「はい?」


 中から現れたのは初老の男だった。

 白髪に翠の瞳をしていて、身なりからしてリベラグロの神官だろうと察せられる。


 帝国では神官は神殿にしかおらず、下位組織の教会に滞在しているのは神司しんしと呼ばれる階級の者だが、リベラグロではその階級も含めて神官と呼んでいるらしい。


「……ここに、ラティオ様がいらっしゃると聞いて来たのですが……」


 ラシェルがおずおずとした雰囲気を意識して尋ねる。

 と、神官の男は僅かに眉を下げた。


「……本日は来ておりませんね」

「そうですか……いつ来たら会えるかわかりますか?」

「さぁ……私にはわかりかねます」


 その男は首を横に振る。

 何だろう、少し迷惑そうな顔だ。


「……ラティオ様って、どんな方なんですか?」


 私と同じことを思ったらしいラシェルがそう尋ねると、神官は深々と溜め息を吐いた。

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