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飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


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7/17

誰も行けない谷へ

 頭が真っ白になった。

 周囲の音が、だんだん遠くなっていく。


 私の横を《ガルグレイブ》が次々と通り過ぎていった。

 もがくように羽根をバタつかせながら。


 呆然としている私の手の中で、

 ほうきが――強く震えた。

 何度も。

 何度も。


 まるで「負けるな」「行こう」と言っているみたいに。


 私は我に返った。


「うん、そうだね。行こう」


 私はほうきにそう応えると、リノアの後を追った。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 谷へ向かった頃には、

 もう《ガルグレイブ》の姿はなかった。

 おそらく谷へ吸い込まれてしまったのだろう。


 やがて谷の裂け目が見えてきた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 落ちることなんて怖くなかった。


 死ぬかもしれない。


 そんなこともどうでもよかった。


 リノアを助けたい。


 ただ、それだけだった。



――不思議と頭は冷静だった――


 私はなぜか直感的に、

 いつもなら絶対にしない行動に出た。


 私は谷の壁沿いを飛んだ。


 なぜ飛べるのか。


 そんなことを考える余裕はなかった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 谷の壁沿いを滑るように降りていく。


 どれだけ降りただろう。



 谷の壁沿いの木に、

 リノアが引っかかっているのを見つけた。


 生い茂る木の葉がクッションになってくれたようだ。


 私もその木へ降り立つ。


「リノア……?」

 返事はない。


 肩から流れた血が木の葉を赤く染めていた。

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※※ 次回 6/22 21:00 公開 ※※

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