ガルグレイブ襲撃
リノアがそっと手を差し伸べてくれた。
「ゆっくりでいい……」
「うん」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼女は、私が飛び上がるまで待ってくれた。
上空で無様な私を笑っていた子でさえ、
飽きたのか、先へ進んでいったというのに。
でも、私は今、ひとりじゃない。
私は飛んでいるとは言いがたいほど低く、
ふらふら飛びながら、ゆっくり進んでいる。
けれど、不思議といつもより高く飛べた。
私は知っていた。
彼女が風魔法で見えないパイプを作り、その中へ私を誘導してくれていたことを。
でも彼女に聞いたら、
「何のこと?」と、とぼけられるだろう。
リノアは、そういう子だった。
こうしてリノアが支えてくれているのに、
私は時々、
見えないパイプから落ちかけたり、
木にぶつかりそうになった。
そのたび、リノアが隣で支えてくれた。
「前見て!!」
「きゃ……」
「下見ないで……」
「え、あ、う……!」
「そぅそぅ。いい感じ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ほら、できてる! 自信持って……」
彼女の声を聞いていると、不思議と少しだけ勇気を出せる。
やがて、森の奥へ入った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
急に空気が変わった気がした。
なんだか急に寒くなった。
季節が変わったみたい。
気がつくと、霧も濃くなっていた。
この変化に、リノアも周囲を警戒した。
「《竜喰いの裂け目》が近いね。来すぎちゃったかな?」
時々、ものすごく強い風が来る。
谷から吹き上がる風らしい。
私はほうきを必死に握った。
飛ばされまいと耐えるだけで精一杯だった。
「怖い……」
「大丈夫。私もついてる」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その時だった。
グギャアアアアアッ!!
甲高い大きな鳴き声。
はるか上空から、何かが降下してきた。
「魔物!?」
大きな鳥型の魔物だった。
鋭く大きな嘴。
紫色に光る目。
極彩色で淡く光る「派手で目立つ翼」。
「《ガルグレイブ》……!」
リノアの顔色が変わる。
谷の奥に棲むという魔物だ。
地上で目にすることは、ほとんどない。
私でも知っている。
出会ったら、逃げろ。
そう言われる魔物だ。
《ガルグレイブ》が私たちへ突進してきた。
私は生まれて初めて、「死ぬ」と思った。
リノアが私の前へ出た。
初めて見た。
彼女が恐怖で顔を強張らせる姿を。
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※※ 次回 6/21 22:00 公開 ※※
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