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飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


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5/20

ガルグレイブ襲撃

 リノアがそっと手を差し伸べてくれた。


「ゆっくりでいい……」


「うん」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 彼女は、私が飛び上がるまで待ってくれた。


 上空で無様な私を笑っていた子でさえ、

 飽きたのか、先へ進んでいったというのに。


 でも、私は今、ひとりじゃない。


 私は飛んでいるとは言いがたいほど低く、

 ふらふら飛びながら、ゆっくり進んでいる。


 けれど、不思議といつもより高く飛べた。


 私は知っていた。


 彼女が風魔法で見えないパイプを作り、その中へ私を誘導してくれていたことを。


 でも彼女に聞いたら、

 「何のこと?」と、とぼけられるだろう。


 リノアは、そういう子だった。


 こうしてリノアが支えてくれているのに、

 私は時々、

 見えないパイプから落ちかけたり、

 木にぶつかりそうになった。


 そのたび、リノアが隣で支えてくれた。


「前見て!!」


「きゃ……」


「下見ないで……」


「え、あ、う……!」


「そぅそぅ。いい感じ」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「ほら、できてる! 自信持って……」


 彼女の声を聞いていると、不思議と少しだけ勇気を出せる。


 やがて、森の奥へ入った。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 急に空気が変わった気がした。


 なんだか急に寒くなった。

 季節が変わったみたい。


 気がつくと、霧も濃くなっていた。



 この変化に、リノアも周囲を警戒した。


「《竜喰いの裂け目》が近いね。来すぎちゃったかな?」


 時々、ものすごく強い風が来る。

 谷から吹き上がる風らしい。


 私はほうきを必死に握った。

 飛ばされまいと耐えるだけで精一杯だった。


「怖い……」


「大丈夫。私もついてる」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 その時だった。


 グギャアアアアアッ!!


 甲高い大きな鳴き声。


 はるか上空から、何かが降下してきた。


「魔物!?」


 大きな鳥型の魔物だった。


 鋭く大きな嘴。

 紫色に光る目。

 極彩色で淡く光る「派手で目立つ翼」。


「《ガルグレイブ》……!」


 リノアの顔色が変わる。


 谷の奥に棲むという魔物だ。


 地上で目にすることは、ほとんどない。


 私でも知っている。

 

 出会ったら、逃げろ。


 そう言われる魔物だ。


 《ガルグレイブ》が私たちへ突進してきた。


 私は生まれて初めて、「死ぬ」と思った。



 リノアが私の前へ出た。


 初めて見た。


 彼女が恐怖で顔を強張らせる姿を。

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※※ 次回 6/21 22:00 公開 ※※

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