おまけ短編8 報告書に書けない飛行
「風上から、巨大樹に向けて、流されてみるのはどうだ?」
「狙ったところに、降りられるわけないだろう」
「だよなぁ……」
ここは風が強すぎる。
話し合うにも、大きな声を出さないと難しい。
仲間たちの声も、だんだんかれてきた。
もう、考えられる案も出し尽くした。
思いつく案は、すべて試した。
残念ながら、すべて失敗に終わった。
私たちは魔法師団だ。
この国で、最も高く、空を飛べる者たち。
それなのに――
誰一人、あの子を助けられない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そんな時、その横を何かが通り過ぎた。
それは――
強風の中を、一人の少女が飛んでいく。
低空で。
2本のほうきを操りながら。
いつの間にか、
全員が彼女の飛行に目を奪われていた。
悔しかった。
あれほど見事な飛行を目の前で見せられて、
理解すらできなかったのだから。
その少女は巨大樹の元までたどり着いた。
本当なら、援護に向かうべきだった。
だが、彼女なら助けてしまう気がした。
どうしても、その飛び方の先を見届けたかった。
目を離せなかった。
今度は、巨大樹の幹を昇り始めた。
垂直に。
そんな事をしたら、落ちると思った。
でも、落ちない。
とことん常識を裏切ってくれる。
巨大樹の幹を降り始めた。
垂直に。
「この国の魔法の頂点」などと呼ばれていたのが、恥ずかしい。
彼女たちが無事に地上へ降り立った瞬間、
私たちは全力で彼女たちの元へ走った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
出動を終えて報告書を書いたが、酷い報告書になった。
「正体不明」という言葉があちこちに並ぶ。
この報告書を呼んで、何が起こったのか、理解できる者はいないだろう。
けれど、私たちも理解できていない。これ以上、書きようがない。
団員たちは、彼女たちの再現を試みた。
誰ひとり成功しなかった。
見ただけではダメだ。直接聞かねば……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やがて、彼女たちが魔法学校に通っていることが分かった。
しかし――
「Gクラス?」
ありえない。
彼女たちは、私たちでは、実現不可能なことを成し遂げた。
なのに――
「Gクラス?」
……どういうこと?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……で、やってきた訳か、レオン」
「はぁ、お久しぶりです。ブレンダ先生」
「今度は、どんな厄介事だ?」
「厄介事だなんて、そんな?」
「お前は、厄介事しかもって来ないんだが……」
「そちらの生徒さんに、教えを乞いたいな……と」
「は?」
「自分で何を言ってるか、わかってるのか」
「はぁ……」
「まったく……。普通の方法じゃ、ダメだぞ」
「さすが先生。話が早い。
で、どうやればいいです?」
「また、まるなげか……」
「はは……」
「いいか、お前たちが教師としてこの学校に来い」
「え?」
「お前たちが指導する体で聞け」
「え~と……」
「こうするには、どうすればいいと思いますか、〇〇さん。
みたいな感じだ……」
「ほうほう……」
「なんなら、手本も見せてもらえ」
「うんうん……」
「分かりました。
それでいきましょう。
明日から」
「おい、ちょっと待て。いきなりすぎないか?」
「これでもうちは、この国で一番の権限を持っていますから」
こうして私たち魔法師団は、彼女たちに指導をもらうことになった。
この時の私は、飛行魔法を教わるだけだと思っていた。
とんでもない勘違いだった。
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