おまけ短編6 退屈を壊した少女
「はぁ……つまらない。本当につまらない……」
最近入学した魔法学校は、必ずGクラスから始まる決まりになっている。
Gクラスでは、飛行魔法しか教えてもらえない。
私は実家のアルヴェイン家で、家庭教師から予習を受けていた。
Cクラスの課題までクリアできるところまで教えられていたのに……。
それでも、Cクラスに入ることさえできないらしい。
もう覚えていることを何度も聞かされるなんて……。
予習が、こんな形でアダになるとは思わなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ある日の終業後。
どこからか歌声が聞こえてきた。
とても澄んだ、きれいな歌声だ。
気になってロッカー室を覗くと、とんでもない光景が飛び込んできた。
――複数のほうきと、遊んでる!?――
私の常識が、パリンと音を立てて壊れた気がした。
は?
何それ?
意味が分からない。
ほうきたちは、まるで意思を持っているみたいだった。
それぞれが、勝手に動いている。
ほうきって、思念を集めて、人の意思で初めて動くものじゃないの?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰宅後、実家の家庭教師に聞いてみた。
「お嬢様は、お疲れだったのでしょう。
人の意思で複数のほうきを操ることはもちろん、
ほうきが自律して動くことなど、ありえません」
だよね?
そのはずだよね?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし、その光景は翌日も、その翌日も続いた。
見間違いじゃない。
その子は、いつもロッカー室の真ん中にいた。
背は低く、近づくと空気まで少し軽くなるような、不思議な感覚がある。
こげ茶色の髪は、なぜか古いほうきと同じ色に見えた。
短く切りそろえられているせいか、動くたびに小さく跳ねる。
茶色の瞳は静かだった。
静かすぎて、見ている私の方が落ち着かなくなる。
「こんにちは。
私はリノア・アルヴェイン。
いつも、ここで遊んでるの?」
「あ……こんにちは。
私はノエル・アストレアです。
ロッカー室なら、学校の備品のほうきが使えるから……」
話してみると、とても面白い子だった。
私たちは、
その日友だちになった。
彼女が言うには、ほうきには意思があって、
どんなほうきも自分の意思で動けるらしい。
私の中の『常識』というものが、音を立てて崩れていった。
あんな光景を見せられた以上、
彼女が言うなら、そうなのだろう。
あんな光景を見せられて、否定できるはずもない。
私は、その日から毎日ロッカー室へ通うようになった。
だって、こんな面白い子を放っておけるはずがないもの。
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