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【本編完結】飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


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おまけ短編3 グレンの回想

「あなたの作るものって、とてもおいしいわ」


 食べ物をいっぱい口に入れているのに、普通に会話してくる変な女性はセレスティナ。

 ピンクゴールドの長い髪は、光に当たると妙にきらきらして見える。


 見た目だけなら綺麗なのに、どこか落ち着きがない。

 そのせいで、綺麗なのか危ないのか分からなくなる人だ。


 私より10歳ほど年上の、ご近所さん。

 歳は離れているが、永遠の子供みたいな彼女は、いつも私の遊び相手だった。


 生まれた時からずっと。

 こういうのを幼馴染っていうんだろうか?


「そうかい。普通だと思うんだけど……」


「これだけおいしいんだから、お店でも開くべきだわ」


「ね、グレン。そうしましょう」


「今日は、なんだかグイグイくるね」


「そう?

 実はね、昨日助けた人に『お礼をしたい』って言われて、お店をもらっちゃったの」


「ほら、やっぱり。

 私にそれを押し付けたいんだろう。まったく……」


「私がそういう性格だって知ってるくせに。

 いい物件よ。お客さんには困らないと思うわ。

 魔法学校に近いんだもの」


「へ、へぇ……」


 まずい。完全に彼女のペースだ。


 もちろん料理をするのは好きだし、おいしそうに食べてくれる人の顔を見るのも大好きだ。


「ちょっと考えてみて!

 3日間の猶予があるわ。もう契約は済ませてあるけど……」


「お、おい……」


 なんてこった。

 彼女のことだ。

 私のサインで契約しちゃったな……。


 彼女は、人のサインを真似るのがとてもうまい。

 誇れるような特技ではないが……。


 私にとっても悪い話ではない。

 覚悟を決めるか。


「そうは言っても、私1人ではどうしようもないぞ」


「大丈夫。頼れる相棒を置いていくわ。

 手を出して」


 恐る恐る右手を差し出すと、彼女は右手首に何かを巻き付けた。


「うわぁぁ……。

 何、これ……」


「ほうきよ。

 とっても優秀で、家事全般をこなしてくれるわ」


「ほうき?」


「本体は喫茶店の壁に掛けてあるから安心して」


「あの……もしかして、これも誰かにもらったの?」


「あ、やっぱり分かっちゃった。

 てへへ……」


 彼女はこうして、いつも私にいろんなものを押し付けていく。


 まぁ、いいか。

 これまで押し付けられたものも、ちゃんと役に立っているしな……。


「とりあえず、そのお店に連れて行ってくれるかい?」


「もちろ~ん。

 えい!」


 彼女が相棒のほうきを操ると、景色が一変した。

 気づけば、もう店の中にいる。


「そうやって瞬間移動を多用するの、やめてくれる?」


「いいじゃない。便利なんだから」


「でも……まぁ、いいお店だね」


「これ、何をした報酬でもらったの?」


「デカい口の魔物がいてね。

 土の下に封じ込めたの。

 あいつは動けると思ってるかもしれないけど、実は私が魔法で縛ったから動けな~い!」


 あの時の私は知らなかった。


 その魔物が、後に《竜喰いの裂け目》と呼ばれ、国中に知られる存在になることを。


「それ、大丈夫なの?

 セレスティナ。君はやることがいつも雑だよ!」


「大丈夫よ。私が生きてるうちは……」


「はぁ……まぁ、いいか。

 いつものことだしね」


「なんかね、このお店の店主が、その魔物に喰われちゃったらしくて……」


「誰か代わりはいないかって頼まれちゃったんだ。

 閉店するには、もったいないお店でしょ?」


「まぁ、そうだね。

 ところで、さっき腕に巻いてくれた子には名前はあるの?」


「ないわ。

 好きに名付けていいわよ。

 あ、でも私の名前を付けるのはナシね。

 なんなら名前を付けずに、『相棒』と呼んでもいいと思うわ」


「そうするよ。

 私は名付けのセンスが酷いって言われてるからね」


「あ……」


 急に店内が少しずつ綺麗になり始めた。

 この子が掃除を始めたのか……。


「ね、便利でしょ?」


「すごいな。

 すごいなんてもんじゃない……」


 仕事が完璧すぎて、思わず声が出た。


「でしょ、でしょ。

 もっと褒めていいのよ!」


「褒めるよ。

 君じゃなくて、相棒の方をね」

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