届かない空
「そんな……」
魔導ビジョンが、親友リノアの危機を伝えていた。
彼女の胸元には、幼い子ども。
彼女がいる場所は、巨大樹の頂上。
レンジャーたちは救助へ向かった。
けれど、巨大樹が傾き始める。
救助は中止された。
魔導ビジョンが、刻一刻、状況を伝えている。
――魔法師団の方々が、巨大樹の根元に到達しました!!――
――これなら助かるでしょう!!――
――あぁ!! しかし届きません!!――
――これ以上、高く飛べないようです!――
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
本当に?
私の元にあのコがいれば、
助けに行ける!
だけど、今、私の元には、あのコはいない!
そんなことを考えてしまった自分が嫌だった。
もう飛ばないと、決めたのは、自分なのに。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
手元で新しいほうきが、トントンと私を叩く。
慰めてくれているのだろう。やさしいコだ。
私は、ほうきに言う。
「ありがとう。あなたは、やさしいね」
リノアにもらったほうきが、私の服を何度も引っ張っている。
まるで……
「早く行こう」と言うみたいに。
魔法学校は辞めた。
あのコが壊れてから、空を飛ぶのもやめた。
だから――
今さら、こんなことを考える資格なんてない。
「リノア……」
私は魔導ビジョンに映る親友の姿を見守っていた。
お願い!
誰か!
誰か、彼女を助けて!!
私にできることは、もう祈ることだけだ。
とても、もどかしい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ふいに新しいほうきが私の足元へ潜り込み、
気づけば私はその上にまたがっていた。
飛ぼうとしている。
誰も、このコに飛び方なんて教えていないのに……
「え?」
思わず、声が出た。
フワッと体が浮いた。
その瞬間。
あのコ特有のクセが現れた。
私は知っている。
誰よりも知っている。
間違えるはずがない。
「あぁ……」
思わず涙がこぼれた。
「そうだったんだね」
こんなに近くに、いてくれたのに、気づかなかったなんて……
私の気持ちを察したのか、
ほうきがぷるる……と震えて応えてくれる。
「そうだね。行こう!」
「ありがとう。もう大丈夫!」
私はリノアにもらったほうきも引き寄せ、
2本のほうきにまたがった。
ほうきは、1人乗りだ。
彼女を助けるには、もう1本のほうきが必要だ。
新しいほうきに声をかける。
「このコに、飛び方を教えてあげて!」
今度はリノアにもらったほうきにも声をかける。
「お願い……このコの飛び方を、覚えて!」
リノアにもらったほうきも、何かを理解したように震えた。
私たちの飛び方は、ちょっと特殊だ。
このほうきにも「それ」を覚えてもらう必要がある。
2本のほうきは、互いにぷるる……と震え、応えてくれる。
「ありがとう」
「それじゃ、行こうか!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
私が飛び出そうとした時だった。
「行ってこい」
喫茶店主のグレンさんは、それだけ言った。
止めようとはしなかった。
まるで、飛べることを知っていたみたいに。
私は、2本のほうきで、リノアのいる方へ飛び出した。
今度こそ。
今度こそ、間に合わせる。
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