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【本編完結】飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


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プレゼント

 ほうきの修理ができなかったので、私は魔法使いになる夢を諦めた。


 今日は、学校を辞める手続きのため、魔法学校を訪れている。


 一度は憧れ、努力してきた場所だった。

 少し名残惜しい気もした。


 でも、あのコがいない今、飛ぶつもりはありません。


 ブレンダ先生は、少し寂しそうに言った。


「どうしても、辞めるのか?」


「はい、もう、あのコもいないので……」


「……」


 先生は、言葉を詰まらせ、視線を逸らした。

 私のほうきが壊れた日のことを思い出しているのかもしれない。


「決意は、変わらないんだな……」


「はい」


 決意したはずなのに、涙があふれてきた。


「退学ではなく、休学扱いにしておく」


「でも先生、私は……」


「お前は、十分頑張った」


「だから、無理に続けろとは言わん」


「だが……」


「もしも、気が変わったら、来ればいい」


「はい……」


「私は……私は……待っているぞ……」


 私は静かに頭を下げた。


「ありがとうございました」


「本当は、もっと別の結果にしてやりたかった」



 校舎を出る前、教室を見上げた。


「ありがとう」


 なぜか、そんな言葉が口をついて出た。


 でも、もう戻らないと決めていた。


 もう「あのコ」は、いないのだから……


「あのコ」の代わりなど、考えられなかったから……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ノエル!!」


 魔法学校を出ようとした時、リノアに呼び止められました。


 リノアは私のバイト先を知らず、ずっと私を探していたそうだ。

 リノアは、リハビリを終え、すでに復帰していた。


 元気そうだった。


 リノアの後ろに何かが隠れていた。


 ほうきだ。

 どこか恥ずかしそうにしている。

 いや、リノアから、離れたくないのか。


 このコは、私が昔使っていたほうきによく似ている。


 だから私にプレゼントしたいという。


「このコ、本当は渡したくないの」


 リノアは苦笑した。


「じゃあ、何で?」


「ノエルにどうしても使ってほしかったから」


 ほうきは、リノアに体を寄せ、名残り惜しそうにしていた。

 けれど、それでも、ゆっくりと私の方へ近づいてきた。


 リノアに懐いていた、ほうきには、申し訳ない。


 見た目は似ていても、このコはあのコじゃない。


 代わりにはならない。


 それでも、リノアの気持ちは受け取りたかった。


「ありがとう。大切にするね」


 リノアと別れたあと、


 私はほうきに話しかけた。


「もし帰りたくなったら、リノアのところへ返してあげるからね」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 私は喫茶店のバイトを続けるつもりです。


 私は仕事用のほうきに加え、

 リノアにもらったほうきも持って、喫茶店に通勤しました。


「おや、それは?」


「私の親友に頂いたんです」


「しまっておくのは、かわいそうなので、このコも一緒でいいですか?」


「いいけど、2本も使えるのかい?」


「8本くらいなら、同時に使っていましたので」


「……」


「グレンさん?」


「……いや」


「何でもない」


 そう言ったものの……


 喫茶店主のグレンさんは、しばらく私とほうきを見比べていた。


 2本のほうきを使って仕事をしていても、

 グレンさんは、それ以上、何も聞かなかった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 喫茶店の向かいに、新しい店ができた。


 大きな画面に映像を映す、不思議な店らしい。


 店の中からも見える。

 少し楽しみだ。



 その時はまだ。


 それが私の日常を大きく変えることになるとは、

 思ってもいなかった。

 お読みいただき、ありがとうございます!


 少しでも続きが気になったら、

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