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【本編完結】飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


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直せない理由

 ようやく、修理をお願いできるくらいのお金が貯まった。


 私は喫茶店主のグレンさんに、仕事を休みたいと願い出た。

 修理工房は、馬車で3日ほどかかる場所にある。



 グレンさんは仕事用に買った新しいほうきも、連れて行きなさいと言った。

 ほうきは水を生み出したりできるので、長旅ではとても重宝する。

 ありがたい申し出だったので、ご厚意に甘えることにした。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 今回の旅では、夜は宿屋に泊まるが、

 昼食は、馬車が途中で停車するので、各自で用意する。



 コップを叩けば、好みの温度の水で満たされる。


 火を起こし、料理を作ることだってできる。


 カバンの中で、食材を冷やすこともできる。


 ほうきは、とても便利な万能器具だ。

 連れて行っていいと言ってくれた店主さんには、感謝だ。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 数日の旅を経て、修理屋さんのところにたどり着いた。


 修理屋を営む木霊族のコーダさん。

 木のような見た目をしている。


 こちらの言葉は、わかるようだが、

 話す時は、1語か2語しか口にしない。

 そのため、意思疎通は難しいとされている。


 反面、ほうきとは、以心伝心、すべて伝わるらしい。



 コーダさんは私たちを見るなり、驚いたような表情を浮かべた。


 コーダさんは、古いほうきを見た。

 次に、新しいほうきを見た。


 しばらく黙る。


「……発見」


「え?」


「奇跡」


 私は意味が分からなかった。


 珍しく、新しいほうきは私ではなく、コーダさんにすり寄った。


「良く、来た」


「修理をお願いしたいんです」


 コーダさんは首を傾げた。


「不要」


「どうしてですか?」


 コーダさんは古いほうきを指差した。


「空」


 次に新しいほうきを指差した。


「居る」



「修理できないんですか?」


「違う」


 コーダさんは、困ったような表情を浮かべた。


 私の目には涙が浮かんできた。


「このコと一緒にいたいんです」


 新しいほうきが、少しだけ揺れた。


 コーダさんはやれやれ……とでも言いたそうな表情を浮かべた。


「一緒、希望?」


「はい。いつまでも、一緒にいたいんです」


 コーダさんは、新しいほうきを見た。


 それから、小さく息を吐いた。


「……理解」


 古いほうきも、このまま朽ちさせるつもりはないらしい。


 コーダさんは欠片を手に取り、ペンダントへと加工してくれた。


 代金はいらないという。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 帰り道。

 胸元では、小さくなった古いほうきが揺れている。


 修理はできなかった。

 理由も、よく分からなかった。


 それでも、胸元にはあのコがいる。


 だから、もう少しだけ頑張ろうと思った。


 ふと隣を見る。

 新しいほうきが、静かに浮いていた。


 行きより、少しだけ、静かに。


 私は胸元のペンダントに触れた。


「これで良かったんだよね?」


 返事はない。


 ただ、新しいほうきが、

 ふるふる……と小さく震えた。


 まるで何かを伝えたそうに。

 だけど、その言葉は、私には分からなかった。

 お読みいただき、ありがとうございます!


 少しでも続きが気になったら、

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