直せない理由
ようやく、修理をお願いできるくらいのお金が貯まった。
私は喫茶店主のグレンさんに、仕事を休みたいと願い出た。
修理工房は、馬車で3日ほどかかる場所にある。
グレンさんは仕事用に買った新しいほうきも、連れて行きなさいと言った。
ほうきは水を生み出したりできるので、長旅ではとても重宝する。
ありがたい申し出だったので、ご厚意に甘えることにした。
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今回の旅では、夜は宿屋に泊まるが、
昼食は、馬車が途中で停車するので、各自で用意する。
コップを叩けば、好みの温度の水で満たされる。
火を起こし、料理を作ることだってできる。
カバンの中で、食材を冷やすこともできる。
ほうきは、とても便利な万能器具だ。
連れて行っていいと言ってくれた店主さんには、感謝だ。
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数日の旅を経て、修理屋さんのところにたどり着いた。
修理屋を営む木霊族のコーダさん。
木のような見た目をしている。
こちらの言葉は、わかるようだが、
話す時は、1語か2語しか口にしない。
そのため、意思疎通は難しいとされている。
反面、ほうきとは、以心伝心、すべて伝わるらしい。
コーダさんは私たちを見るなり、驚いたような表情を浮かべた。
コーダさんは、古いほうきを見た。
次に、新しいほうきを見た。
しばらく黙る。
「……発見」
「え?」
「奇跡」
私は意味が分からなかった。
珍しく、新しいほうきは私ではなく、コーダさんにすり寄った。
「良く、来た」
「修理をお願いしたいんです」
コーダさんは首を傾げた。
「不要」
「どうしてですか?」
コーダさんは古いほうきを指差した。
「空」
次に新しいほうきを指差した。
「居る」
「修理できないんですか?」
「違う」
コーダさんは、困ったような表情を浮かべた。
私の目には涙が浮かんできた。
「このコと一緒にいたいんです」
新しいほうきが、少しだけ揺れた。
コーダさんはやれやれ……とでも言いたそうな表情を浮かべた。
「一緒、希望?」
「はい。いつまでも、一緒にいたいんです」
コーダさんは、新しいほうきを見た。
それから、小さく息を吐いた。
「……理解」
古いほうきも、このまま朽ちさせるつもりはないらしい。
コーダさんは欠片を手に取り、ペンダントへと加工してくれた。
代金はいらないという。
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帰り道。
胸元では、小さくなった古いほうきが揺れている。
修理はできなかった。
理由も、よく分からなかった。
それでも、胸元にはあのコがいる。
だから、もう少しだけ頑張ろうと思った。
ふと隣を見る。
新しいほうきが、静かに浮いていた。
行きより、少しだけ、静かに。
私は胸元のペンダントに触れた。
「これで良かったんだよね?」
返事はない。
ただ、新しいほうきが、
ふるふる……と小さく震えた。
まるで何かを伝えたそうに。
だけど、その言葉は、私には分からなかった。
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