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【本編完結】飛べない魔女と古ぼけたほうき  作者: 秋月心文


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この仕事も悪くない

 今夜のお客さまは、発光族のライトさん。


 髪や目、皮膚に意思で光る器官がある。

 体の表面に、光でさまざまな模様を描き出せるそうだ。


 茶色を基調としたエプロンに、淡い黄色の制服。


 私は注文端末を操作し、画面を見せる。


 ==ご注文は何に、なさいますか?==


 ライトさんは、手の甲に光で絵を描いた。


 ソーダの絵。


 ゼリーの絵。


 かわいい。


 発光族の人たちは、こうやって意思を伝える。


 声では会話できない種族だ。


 思わず声をかけそうになる。


 でも、その声は彼らには届かない。


 ==星砂ソーダと、光のゼリーですね。かしこまりました==


 ライトさんは、こくりと頷いた。


 私は続けて入力した。


 ==そのイラスト、とてもカワイイですね!!==


 ライトさんは少し照れたようにうつむき……


 手の甲に「ありがとう」と文字が浮かんだ。


 同時に、金色の光の粒が、ふわりとこぼれ落ちる。


 発光族は、感情によって光の色が変わる。


 金色は、確か感謝の色だったはずだ。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 ご注文の品を用意する。


 今回の注文は、注ぐだけ。

 器を移し替えるだけ。


 本来なら、簡単な作業だ。


 星砂ソーダは、発光する炭酸飲料だ。

 彼らは温度を楽しめないため、氷は入れない。


 光のゼリーは、透明な器に移して提供する。


 強い光を放ち続けるので、先にサングラスをかける。


 光のゼリーは缶詰に入っている。


 缶を開けるため、ほうきの力を借りた。


「お願いね」


 ぷるる。


 次の瞬間、缶のふたが綺麗に切り抜かれる。


 缶詰くらいなら、ほうきに頼んだ方が早い。


 器へ移すと、光の粒子が舞い始める。


 そのままでは光が逃げてしまうため、金属製のふたをかぶせて運ぶ。


 準備ができたので、ライトさんのもとへ向かった。


 ==お待たせしました。ごゆっくり、どうぞ==


 私は素早くその場を離れる。


 だって、ゼリーがとても眩しいんだもん。


 少し離れた場所から、そっと眺める。


 発光族の方が星砂ソーダを飲むと、身体の光と溶け合ってとても綺麗なのだ。


 こういう景色が見られるなら、この仕事も悪くない。

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・・ 次回 毎日 20:00 公開 ・・

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