第26話 マジかよW 天使アミムラのめちゃめちゃ展開⑫
『休憩』を終えた『キッチンスタッフ』の女がやってくる。
「『休憩』終わりました。交代です」
『キッチンスタッフ』の女は言った。
由美は、『キッチン』の出入り口へと向かう。
由美は振り返って、
「とりあえず、『新潟県魚沼産のコシヒカリ』だけなら、用意してあげる。あとは、がんばって」
と、言って、出て行く。
「ありがとうございます」
チン毛大根は頭を下げる。
由美が交代で『休憩』に行った後は、特に忙しくもなく、のんびりと『キッチン』の仕事をこなした。
やがて朝を迎える。
チン毛大根は、『キッチン』の壁時計を見る。
午前6時30分。
モーニングの時間帯だ。
ランチやディナーのように忙しくなく、ゆったりとしている。
由美と交代で調理に入った女が、
「今、何時間働いてるんですか?」
と、声をかけてきた。
「えっ」
チン毛大根は、春奈や由美のような『教育係』以外の人に、業務以外のことで、話かけられるとは思っていなかった。
なので、少し驚いて女を見る。
胸元のネームプレートには、『北村あやみ』と書かれている。
10代後半ぐらい。
黒髪のロングウェーブ。
身長は160センチぐらい。
華奢な体型。
胸はCカップ。
肌が白い。
由美とは逆で、北の大地の北海道とかにいそうな、開放的な女の雰囲気がある。
「えっと、14時間ぐらい。休憩なしで」
チン毛大根は答えた。
「休憩なしで14時間!?」
北の女は驚く。
「ええ、まぁ……」
チン毛大根は、なるべく話さないように黙々と仕込みをする。
アミムラの『なんでもできる力』によって、『乱暴で下品な言葉を、仕事終了まで連発するようになる』という設定にされているからだ!!
家族連れの客。
『ホール』の『教育係』の春奈。
天使オルーレとアミムラ。
クラスメイトのサッカー部の山田、テニス部の安永、卓球部の近藤。
『キッチン』の『教育係』の由美。
設定どおり、出会った相手には、乱暴で下品な言葉を浴びせている。
そして、この設定のおかげで、ハクマイと無謀な『カツ丼勝負』をしなければならなくなった!!
話すと、ろくなことがない。
幸いなことに、ここは『キッチン』。
『ホール』みたいに話す必要がない。
黙々とやれる。
「チンさんって呼べばいいんですか? それとも大根さん?」
北の女が仕込みをしながら、話かけてくる。
「どちらでもいいです」
チン毛大根は素っ気なく答える。
「じゃあ、チン大根さんでいいですか?」
北の女は聞く。
チン毛大根は笑う。
「それでいいです」
チン毛大根は言った。
「あたし、あやみっていいます。よろしくです」
北の女は自己紹介する。
『ホール』の注文が、厨房内のプリンターから伝票として出力される。
年配のおじさんが確認して、指示を出す。
「もう少しでピークの時間かな。がんばりましょう!!」
あやみは明るく元気よく言った。
あやみの言ったとおり、だんだんと『ホール』からの注文が増えていく。
午前8時から9時までは、ランチやディナーほどではないが、モーニングのピークとなって忙しくなる。
チン毛大根は、モーニングピークが始まる8時ちょうどに、『キッチン』の仕事8時間、『休憩』なしが終わった!!
これで、16時間働いたことになる!!
しかも、まかないの『タマゴ焼き』を口にいれた以外は、『不眠不休』で『休憩』をとってない!!
16時間の立ち仕事の影響からか、足の疲労がたまりすぎてる!!
足がすごく重い……!!
座りたい……!!
寝たい……!!
とにかく疲れた……!!
でも、そんな弱音は言ってられない!!
最後に、再び『ホール』8時間、『休憩』なしが、すぐに開始だ!!
チン毛大根は『スタッフルーム』に行く。
『キッチン』の調理服から、再び、『ホール』の制服に着替える。
これが終わったら、いよいよハクマイとの人生を賭けた『カツ丼勝負』が開始される!!
「よし、やったるか」
チン毛大根は、再び『ホール』へと向かう。
『ホール』は、モーニングピークで、スタッフ達が忙しそうにしていた。
春奈がやってくる。
「『キッチン』、大変だった?」
春奈は聞く。
「とっても」
チン毛大根は答えた。
「また『ホール』の仕事再開ね。がんばろう」
春奈は言った。
「そうですね」
チン毛大根はうなずく。
「発作は、まだ継続中?」
春奈は聞く。
チン毛大根は申し訳なさそうに、
「はい。すみません。俺が乱暴で下品な言葉を客に言ったら、フォロー頼みます」
と、お願いする。
「わかった。うしろで監視してる」
春奈は言った。
出入り口から、2人組の客が入ってくる。
「チン君、お願い」
春奈はそう言って、テーブル席に座ってる、他の客の注文を受けに行く。
チン毛大根は、2人組の客を出迎える。
40代と50代の中年男2人。
スーツ姿でネクタイを占めてる。
通勤のサラリーマンのようだ。
「いらっしゃいませ。2名様でよろしいですか?」
チン毛大根は聞く。
「はい」
50代のサラリーマンが答える。
「ご予約のお客様でいらっしゃいますか?」
チン毛大根は聞く。
「いいえ」
50代のサラリーマンが答える。
「お席へご案内します」
チン毛大根は、テーブル席へと案内する。
サラリーマン2人組が席に着く。
チン毛大根は。すぐに水とおしぼりを持ってくる。
その後、素早くメニュー表を渡す。
注文してくるまで待つつもりだったが、
「アイスコーヒー」
「ストレートティー」
と、サラリーマン2人組がすぐに注文してきた。
チン毛大根は、オーダーハンディ端末(携帯型の注文専用端末)に注文内容を入力する。
間違いがないように注文内容を確認して送信。
注文は『キッチン』へと自動転送。
すぐに『キッチン』から、アイスコーヒーとストレートティーが提供される。
チン毛大根は、サラリーマン2人組のテーブル席へと運ぶ。
30分ほど経過。
サラリーマン2人組は話し終えた様子で、注文した飲み物も飲み終える。
チン毛大根は、サラリーマン2人組の席へ行き、空いたコップを下げる。
サラリーマン2人組は、会計をするためレジへと行く。
チン毛大根は、その後をついていく。
サラリーマン2人組は、伝票をチン毛大根に渡す。
チン毛大根は、伝票から合計金額を計算して、サラリーマン2人組に伝える。
サラリーマン2人組は、料金を支払う。
チン毛大根は、お釣りを渡して、
「ありがとうございました」
と、言って、サラリーマン2人組を見送る。
チン毛大根は、サラリーマン2人組が使った、テーブルの後片づけと席の掃除をする。
そして、次の客を待つ。
よかった!!
何も起きなかった!!
口から勝手に、乱暴で下品な言葉が出てこないだけで、こんなにホッとするなんて!!
改めて、アミムラの考えた『乱暴で下品な言葉を、仕事終了まで連発するようになる』という設定が、どれだけ恐ろしいことなのか、よくわかった。




