第23話 マジかよW 天使アミムラのめちゃめちゃ展開⑨
「『キッチン』を5分だけ貸してもらえませんか?」
ハクマイは店長に言った。
「何をするんですか?」
店長が聞く。
「スタッフの『まかない』を作ってあげたいのです」
ハクマイは答える。
「わかりました。では、5分だけ」
店長は認可して、ハクマイとマサヒロを『キッチン』へと案内する。
それが合図だったかのように、客は、それそれのテーブル席に戻って行く。
スタッフも、それぞれの持ち場へ戻る。
チン毛大根と春奈だけが、この場にポツンと残る。
ハクマイは、『キッチン』で『まかない』を作る。
約束どおり、5分ほどでマサヒロと共に戻ってきた。
マサヒロの両手は2つの皿でふさがっている。
左手と右手、どちらも『タマゴ焼き』の皿である。
ハクマイは、チン毛大根と春奈を交互に見る。
「2人ともどうぞ。『まかない』です。店長から、ここで食べる認可はとりました」
ハクマイは手招きする。
空いてるテーブル席に、『タマゴ焼き』が置かれる。
「行きましょ」
春奈は言った。
「俺、契約で『休憩』なしって言われてるんですけど、いいんですか?」
チン毛大根は聞く。
「『まかない』ぐらい口にいれないと、この先持たないわよ。『休憩』とは考えずに、『まかない』を口にいれるだけって考えれば?」
春奈はそう言って、ハクマイのいるテーブル席へ行く。
「(口が勝手に動く)まぁ、そうだな。ところで、口にいれるのは『タマゴ焼き』だけでいいのかい? 俺のウインナーは口にはいれないのかい? ヘヘヘッ」
チン毛大根はそう言って、春奈の後をついていく。
チン毛大根と春奈は、ハクマイやマサヒロと向かい合うように座る。
「いただきます」
春奈はお腹が空いてたのか、早速『タマゴ焼き』を口にする。
「うっ、これはっ……!!」
春奈はそう言って、両手でほっぺたをおさえる。
「どうしました?」
チン毛大根は春奈を見る。
「あぁ、ほっぺたがとろけるわ!! まるでタマゴと共に地上から飛び上がって、そのまま空を突き破って宇宙へと昇っていくようなぁぁぁーーー!! 信じられない!! これタマゴなのぉぉぉ? 私は、今、タマゴと同化してる……!!」
春奈は昇天しそうである!!
チン毛大根は、春奈の状態に引き気味になりながら、
「いや、『タマゴ焼き』で、そこまでオーバーリアクションしなくても」
と、言った。
「ふむ。いいタマゴリアクションだ。70点ぐらいか。まだタマゴ度が足りないな」
ハクマイは冷静に観察している。
タマゴ度ってなんだ?
チン毛大根は苦笑する。
「さて、次は君だ。食べてみたまえ」
ハクマイは言った。
「いただきます」
チン毛大根は、『タマゴ焼き』を口にする。
目の前に宇宙が見えた……!!
まるで自分がタマゴになったかのように、フワフワと浮いている……!!
今、自分は銀河の中心にいる……!!
天の川が光り輝いている……!!
吸い込まれる……!!
ブラックホールだろうか……!?
このまま浮遊して、この空間に漂っていたい。
漂流していたい。
「…………!!」
何か聞こえる。
「…………!!」
なんだ?
今、最高に気持ちがいいのに。
「………起きて!! 起きて!!」
その声にチン毛大根はㇵッとする。
目の前の宇宙が消えていく……!!
目の前には、テーブル席と『タマゴ焼き』の皿。
「良かった。死んじゃったかと思った」
春奈はホッとする。
「どうだった? ワシの『タマゴ焼き』は?」
ハクマイはニヤリとする。
チン毛大根は立ち上がる。
「(口が勝手に動く)うまいなんてもんじゃねぇー!! うまいを通り越して、その先の世界へイッタ!! 最高に気持ちよかったぜ!!」
チン毛大根は持ち場へと戻る。
まさか、『タマゴ焼き』だけでイクなんて!!
俺は絶対に勝てねぇー!!
勢いだけで、どうにかできる相手じゃない!!
『カツ丼勝負』、どうすりゃいい?
負けて、夢も希望もない一生『奴隷』の道か。
それって、俺を観察してる天使達にとっては、おもしろい展開なのかもな。
『キッチン』から注文の料理が提供される。
チン毛大根は、素早くクラスメイト(『サッカー部』の山田、『テニス部』の安永、『卓球部』の近藤)のテーブル席へと運ぶ。
クラスメイトの食事が終わる。
チン毛大根は、空いた皿を下げて、会計をするためレジへと行く。
最初は、ゆっくりな時間経過だった。
まだ1時間しか経ってないのかよと感じていた。
だが客が集中して忙しくなり、時間経過が早く感じてきた。
それと同時に疲労もたまってきた。
特に足の疲労が。
長く立ち仕事をしていたし、『まかない』を口にいれた以外は、『休憩』を全然とってない。
きつくなってきた。
少しでいいから座りたい。
そう思いながら、なんとか最初の『ホール』の仕事8時間、『休憩』なしが終わる!!
次は、『キッチン』8時間、『休憩』なし!!
店内時計は、午前0時を指している。
『労働基準法』に違反してる。
学生は、午後10時から午前5時まで働けない。
だけど、ここでは、そんなの関係ない。
言っても意味がない。
天使アミムラの『なんでもできる力』によって、そうなっちまった。
それに弱音は吐きたくない。
チン毛大根は思い出す。
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「しょうがねぇな。逃げるのはカッコ悪そうだし、やってやるよ!! おもしろくなるのか、わからないけどな」
チン毛大根は、『労働基準法』を完全無視した、『ファミレス24時間超絶ブラック労働(しかも無給)』の覚悟を決める!!
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アミムラに啖呵を切っちゃったからなぁー。
やるしかねぇー!!
チン毛大根は、『スタッフルーム』で、『キッチンスタッフ』の調理服に着替える。
そのまま『キッチン』へと向かう。




