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第九十二話 陸皇七重障壁



「全部隊、攻撃開始!」


 軍団長バルガスの号令と同時に。


 王都西方大平原が。


 無数の魔力光で埋め尽くされた。


「宮廷魔導師団、第一斉射!」


「術式接続!」


「属性同期!」


 二百人を超える魔法使いが。


 一斉に杖を掲げる。


 炎。


 雷。


 氷。


 風。


 四属性の上級魔法が絡み合い。


 巨大な複合魔法陣を形成した。


「《四天災砲クアドラ・カタストロフ》!」


 直径数十メートルの魔力砲撃が。


 大平原を駆け抜ける。


 同時に。


 右翼へ展開した四体の砲装幻想機カノン・ロードが。


 両肩の長砲身をベヘモスへ向けた。


━━━━━━━━━━


砲装幻想機カノン・ロード


魔導炉出力:最大。


砲撃形態


《双星収束魔導砲》


四機同時照準:完了。


━━━━━━━━━━


『目標、最外周障壁!』


『全機、砲撃開始!』


 八門の砲口から。


 青白い光が放たれる。


 宮廷魔導師団の複合魔法。


 攻城魔導砲。


 幻想機の収束砲撃。


 そのすべてが。


 ベヘモスを覆う、最外周の透明な障壁へ直撃した。


 轟音。


 閃光。


 爆風。


 巨大な障壁全体に。


 蜘蛛の巣のような亀裂が走る。


━━━━━━━━━━


《陸皇七重障壁》


第一障壁


耐久率


100%



42%



9%


━━━━━━━━━━


「まだ残るのか!」


 騎士の一人が叫ぶ。


「同じ場所へ集中させろ!」


 勇者ミレイユが。


 巨大な魔弓を引き絞った。


 風の魔力が。


 一本の矢へ集まっていく。


「《天穿つ風神矢》!」


 放たれた矢は。


 上空で無数に分裂し。


 ただ一つの点へ収束した。


 透明な障壁が。


 内側へ大きく歪む。


「ガルド!」


「任せろ!」


 勇者ガルドが。


 巨大な大剣を構えた。


 レベル百四十八。


 勇者として長く戦い続けてきた男の全身から。


 黄金色の闘気が噴き上がる。


「《勇王破城斬》!」


 百メートルを超える黄金の斬撃が。


 障壁の亀裂へ直撃した。


 次の瞬間。


 最外周障壁が。


 音を立てて砕け散る。


━━━━━━━━━━


《陸皇七重障壁》


第一障壁:破壊。


残存障壁数:6。


固有防衛能力


《陸皇障壁爆震》


発動。


━━━━━━━━━━


「全員、防御!」


 砕けた障壁の破片が。


 突然。


 内側から膨れ上がった。


 透明だった光が。


 白熱する。


 直後。


 ベヘモスを中心に。


 巨大な魔力爆発が発生した。


 衝撃波が。


 大地を削りながら広がる。


「広域結界!」


「間に合わない!」


 前線部隊へ。


 壁のような衝撃が迫る。


「《星月神狐結界》」


 フィオナが。


 《星月神杖》を掲げた。


 月と七つの星を描く白銀の結界が。


 第一防衛線全体を包み込む。


 直後。


 《陸皇障壁爆震》が結界へ激突した。


 白銀の光が激しく揺れる。


 だが。


 割れない。


 崩れない。


 フィオナの長い髪と外套だけが。


 魔力の余波を受けて大きく靡いた。


━━━━━━━━━━


《星月神狐結界》


保護対象:第一防衛線全域。


受けた攻撃


《陸皇障壁爆震》


結界損傷率:0.8%


自動修復:完了。


負傷者:なし。


━━━━━━━━━━


「全域を一人で……」


 近くにいた宮廷魔導師が。


 信じられないものを見るようにフィオナを見つめる。


「次が来ます!」


 フィオナは。


 驚く兵士たちへ声を上げた。


「立て直してください!」


「了解した! 全隊、陣形を再構築!」


 フィオナ自身は。


 何事もなかったように杖を下ろした。


「使いやすいです」


「気に入った?」


「はい」


 リリスが尋ねると。


 フィオナは嬉しそうに頷いた。


『感想を述べている場合ではない』


 クロの言葉と同時に。


 大地が。


 低く唸り始めた。


◇◇◇


 ベヘモスが。


 巨大な前脚を持ち上げる。


 一つの脚だけで。


 小さな城塞ほどの大きさがある。


「来るぞ!」


「地面から離れろ!」


 前脚が。


 大平原へ叩きつけられた。


「《皇震踏破》」


 世界が。


 上下に跳ねた。


 地面が割れる。


 一本。


 二本。


 十本。


 数十本。


 巨大な亀裂が。


 前線部隊へ向けて伸びてくる。


 土と岩が噴き上がり。


 設置された攻城魔導砲が次々と傾いた。


「重装幻想機、前へ!」


 六体の《バスティオン》が。


 巨大な盾を大地へ突き立てる。


『脚部固定杭、射出!』


『地盤制御術式、展開!』


 幻想機の脚部から。


 巨大な金属杭が地面へ打ち込まれた。


 魔導式の大盾が連結され。


 一枚の城壁へ変わる。


 大地を伝う衝撃が。


 六体の幻想機へ直撃した。


 装甲が軋み。


 何体かが数メートル後退する。


 それでも。


 後方の救護部隊と補給物資は守られた。


「格好いい……!」


 リリスが呟く。


『見る場所が違う』


「ちゃんと全体を見てる」


 その時。


 地割れの中から。


 無数の巨大な岩槍が突き出した。


━━━━━━━━━━


陸皇岩槍ランド・スパイク


攻撃範囲


前方六・四キロメートル。


生成数


1,208。


最大全高


七十二メートル。


━━━━━━━━━━


「数が多すぎる!」


 空を飛んでいた幻想機が。


 左右へ散開する。


 だが。


 岩槍は。


 地上だけを狙ってはいなかった。


 大地から伸びた直後。


 途中で軌道を変え。


 飛翔幻想機を追尾し始める。


『三番機、回避不能!』


 一本の岩槍が。


 《エアリアル・ナイト》の左脚を貫いた。


 白銀の幻想機が。


 姿勢を崩す。


 魔力翼の一枚が停止し。


 巨大な機体が地上へ落下し始めた。


「危ない!」


「師匠!」


「《空間固定》」


 リリスが杖を向ける。


 落下していた幻想機が。


 地上五十メートルの位置で停止した。


 十メートルの巨体が。


 見えない手に掴まれたように宙へ浮かんでいる。


「《完全転移》」


 次の瞬間。


 損傷した幻想機が。


 後方の整備区域へ移動した。


 周囲にいた整備兵たちが。


 突然現れた機体を見上げて固まる。


「操縦者の生命反応は正常」


 リリスは。


 小さく頷いた。


「機体も直せそう」


『直すのは後だ』


「分かってる」


 一方。


 シグレは既に。


 岩槍の群れへ走り出していた。


「《天月歩》」


 足元へ。


 白銀の月が浮かぶ。


 シグレの姿が消えた。


 次の瞬間には。


 数百メートル先。


 迫り来る巨大岩槍の正面へ立っている。


「《纏刀・天月》」


 鞘の中で。


 《天月神刀》が白銀の光を纏う。


「《天月抜刀・白雨連華》」


 抜刀。


 数え切れない月光の斬撃が。


 大平原を駆け抜けた。


 巨大な岩槍が。


 音もなく分断される。


 ただ壊したのではない。


 落下した破片が。


 兵士や冒険者へ当たらないよう。


 すべて小さな砂粒へ変わる大きさで切断されていた。


━━━━━━━━━━


《陸皇岩槍》


切断数:372。


味方への落下被害:なし。


斬撃対象識別:正常。


━━━━━━━━━━


「悪くない」


 シグレは。


 神刀を鞘へ戻す。


「絶対、気に入ってるよね」


 リゼットが言った。


◇◇◇


 王国軍の攻撃は。


 その後も続いた。


 第二障壁。


 白色の物理防壁。


 騎士団の攻城槍。


 幻想機ランサーの突撃。


 勇者ディランの盾撃。


 三方向からの同時攻撃によって破壊。


 第三障壁。


 青色の魔力吸収障壁。


 通常の魔法は。


 触れた瞬間に吸収された。


「魔法が食われる!」


「なら、吸収できる限界を超えさせる!」


 勇者セリスが。


 光属性の細剣を掲げる。


「全魔導師、私の光へ魔力を重ねて!」


 無数の魔力が。


 一本の細剣へ流れ込む。


「《聖天光断》!」


 白金色の光が。


 青い障壁へ突き刺さる。


 障壁は光を吸収し続けた。


 十秒。


 二十秒。


 三十秒。


 やがて。


 吸収限界を超え。


 内部から大きく膨張する。


「今だ!」


 四体の《カノン・ロード》が。


 再び収束魔導砲を放つ。


 第三障壁が。


 青い光を撒き散らしながら崩壊した。


 直後。


 再び《陸皇障壁爆震》が発動する。


「二度も同じ攻撃は受けない!」


 勇者ディランが。


 巨大な大盾を大地へ置いた。


「《勇城絶壁》!」


 半透明の城塞が。


 討伐軍の前へ出現する。


 さらに。


 重装幻想機六体が盾を重ね。


 宮廷魔導師団が広域結界を展開する。


 三重の防御。


 だが。


 障壁爆震は。


 そのすべてを大きく押し込んだ。


「ぐ……!」


 ディランの両脚が。


 地面へ沈む。


 重装幻想機の装甲から。


 火花が散った。


「《星月広域結界》」


 最後に。


 フィオナの月光が全体を包み。


 爆震の残りを受け止める。


━━━━━━━━━━


《陸皇七重障壁》


破壊済み


・第一障壁


・第二障壁


・第三障壁


残存障壁数:4。


障壁再生開始まで


八分三十二秒。


━━━━━━━━━━


「再生するのか!」


「攻撃を止めるな!」


 バルガスの命令が飛ぶ。


 だが。


 ベヘモスも。


 ただ防御しているだけではなかった。


 六つの金色の眼が。


 一斉に輝く。


「何か来る!」


 リリスが。


 僅かに声を強めた。


 ベヘモスを中心に。


 大地へ巨大な魔法陣が広がる。


 半径。


 およそ五キロメートル。


━━━━━━━━━━


重力圧壊グラビティ・ドミネーション


発動。


重力倍率


1倍



4倍



12倍



28倍。


飛行能力:強制低下。


身体能力:大幅低下。


魔力消費:増加。


━━━━━━━━━━


「くっ……!」


 兵士たちが。


 一斉に膝をついた。


 騎獣が地面へ倒れ込む。


 上空の飛翔幻想機が。


 急激に高度を落とした。


 十メートルの機体が。


 次々と地上へ降下していく。


 カイルたちも。


 新しい装備の緊急防御に守られながら。


 辛うじて立っていた。


「重い……!」


「全員、無理に動くな!」


 カイルは。


 聖剣を地面へ突き立て。


 仲間を支える。


 その近く。


 地面の亀裂が。


 突然大きく開いた。


「カイル、後ろ!」


 亀裂から。


 巨大な岩槍が飛び出す。


 盾役の青年が。


 仲間の前へ立った。


「《城壁防御》!」


 新しいミスリル大盾が光る。


 岩槍が。


 正面から衝突した。


 轟音。


 青年の身体が後方へ押される。


 だが。


 盾は砕けなかった。


 緊急防御術式が作動し。


 衝撃を大地へ逃がしている。


「今度は僕が!」


 カイルが。


 《白耀聖剣》を抜いた。


「《聖光斬》!」


 白銀の斬撃が。


 岩槍の根元へ命中する。


 一撃では。


 切断できない。


 それでも。


 大きな亀裂を作った。


 弓使いの少女が。


 同じ場所を射抜く。


 魔法使いが。


 火球を叩き込む。


 最後に。


 神官の光が。


 全員の身体能力を押し上げた。


「もう一度!」


 カイルが。


 聖剣を振り抜く。


 岩槍が根元から折れ。


 五人の横へ倒れた。


━━━━━━━━━━


勇者カイル一行


災害級魔物の攻撃を防御。


連携攻撃:成功。


負傷者:なし。


装備損傷:軽微。


《白耀聖剣》


成長記録を獲得。


━━━━━━━━━━


「やった……!」


 カイルが。


 短く息を吐く。


 ベヘモスへ傷を与えたわけではない。


 ただ。


 仲間を守ることができた。


 今のカイルたちにとっては。


 それで十分な戦果だった。


◇◇◇


「重力術式の中心を切る!」


 リゼットが。


 《星炉魔神槌》を大地へ叩きつけた。


「《星炉震界修復》!」


 青白い魔導回路が。


 地面を走る。


 ベヘモスが展開した重力術式を解析し。


 接続点を次々と表示する。


「フィオナ、右側を!」


「はい!」


 フィオナの魔剣が。


 神杖へ瞬間転換する。


「《七耀術式分解》!」


 七色の光が。


 重力魔法陣へ降り注ぐ。


 複雑に絡み合った術式が。


 一つずつ解かれていく。


「シグレ!」


「見えている」


 シグレが。


 最後に残った中心線へ神刀を振る。


「《天月断界》」


 白銀の斬撃が。


 空間ごと重力術式を切断した。


━━━━━━━━━━


《重力圧壊》


術式中枢:切断。


重力倍率


28倍



11倍



3倍



1倍。


解除完了。


━━━━━━━━━━


 兵士たちが。


 次々と立ち上がる。


 飛翔幻想機が。


 再び魔力翼を展開した。


「《黒月》が重力術式を解除した!」


「攻撃を再開しろ!」


 歓声。


 命令。


 魔導砲の轟音。


 戦場が。


 再び動き始める。


「次は第四障壁だね」


 リリスは。


 ベヘモスを静かに見上げる。


『お前はまだ、ほとんど攻撃していないな』


「みんなで戦う作戦だから」


『本音は?』


「ベヘモスの能力を全部見たい」


『やはりそれか』


 リリスにとって。


 ベヘモスの障壁を破壊するだけなら。


 難しいことではない。


 だが。


 この巨大な生命が。


 何を持ち。


 どのように戦い。


 どこまで再生するのか。


 もう少しだけ見ていたかった。


 そして。


 王国軍にも。


 切り札が残されている。


◇◇◇


 戦闘開始から。


 一時間が経過した。


 勇者合同部隊。


 幻想機兵団。


 宮廷魔導師団。


 A級冒険者連合。


 全戦力を投入し。


 ようやく。


 七重障壁のうち六枚が破壊された。


 残るのは。


 最内側。


 黄金色の第七障壁だけ。


 その障壁も。


 無数の攻撃を受け。


 全体に亀裂が広がっている。


「全勇者、最終攻撃準備!」


 ガルド。


 セリス。


 ディラン。


 ミレイユ。


 四人の上位勇者が。


 それぞれの武器へ魔力を集中させる。


「カイル!」


 ガルドが叫ぶ。


「お前も来い!」


「僕もですか!?」


「勇者の力は、単純なレベルだけでは決まらん!」


 カイルが。


 《白耀聖剣》を握り締める。


 聖剣が。


 五人目の勇者の光へ反応した。


 白銀。


 黄金。


 蒼。


 緑。


 五つの勇者の魔力が。


 空中で一つに重なる。


━━━━━━━━━━


五勇者連携戦技


《五聖勇光破》


参加者


・ガルド・ゼファリオン


・セリス・アークレイン


・ディラン・クロイツ


・ミレイユ・エルフォード


・カイル・アストレイン


連携率


87%。


━━━━━━━━━━


「放て!」


 五つの光が。


 一本の巨大な聖光へ変わった。


 黄金色の第七障壁へ。


 真正面から激突する。


 ベヘモスの巨体を包む障壁が。


 激しく揺れた。


 亀裂が走る。


 広がる。


 そして。


 最後の障壁が。


 黄金の破片となって崩れ落ちた。


━━━━━━━━━━


《陸皇七重障壁》


全障壁:破壊。


障壁再生まで


三分。


《天殻多層甲》


露出。


━━━━━━━━━━


「今だ!」


 宮廷魔導師団長が。


 杖を空へ掲げた。


 その背後では。


 戦闘開始直後から。


 五百人を超える魔法使いたちが。


 一つの巨大儀式魔法を準備していた。


 空一面へ。


 直径一キロメートルを超える魔法陣が広がる。


 中心には。


 白金色に燃える巨大な星。


 魔導師団長の声が。


 戦場全体へ響いた。


「照準、ベヘモス頭部!」


「空間固定!」


「味方識別!」


「儀式魔力、臨界到達!」


━━━━━━━━━━


宮廷魔導師団


大規模儀式魔法


天墜星砲アストラル・フォール


参加術者数:527名。


総魔力充填率:100%。


目標


陸皇亀ベヘモス》頭部。


━━━━━━━━━━


「全員、退避!」


 空の魔法陣から。


 一条の星光が落ちた。


 白金色の光柱が。


 ベヘモスの頭部を完全に呑み込む。


 轟音すら。


 一瞬遅れて届いた。


 大地が揺れる。


 空が白く染まる。


 ベヘモスの巨大な頭部が。


 角も。


 六つの眼も。


 額の魔晶核もろとも。


 光の中で粉砕されていく。


 数秒後。


 星光が消える。


 そこに。


 ベヘモスの頭部は存在しなかった。


 首の根元から上が。


 完全に失われている。


 戦場が。


 一瞬、静寂に包まれた。


「やった……」


 誰かが呟いた。


「頭部を破壊したぞ!」


「宮廷魔導師団が仕留めた!」


 兵士たちの間から。


 歓声が上がる。


 勇者たちも。


 大きく息を吐いた。


 幻想機兵団が。


 武器を下ろす。


 だが。


 リリスだけは。


 ベヘモスの巨体を見つめ続けていた。


「まだだよ」


『分かっている』


 頭部を失ったベヘモスが。


 前脚を持ち上げる。


 そして。


 何事もなかったかのように。


 一歩。


 前へ進んだ。


 歓声が止まる。


「……は?」


 首の断面から。


 赤黒い肉。


 骨。


 魔力脈。


 巨大な魔晶組織が。


 凄まじい速度で伸び始める。


━━━━━━━━━━


陸皇亀ベヘモス


頭部:完全欠損。


生命活動:正常。


《多重生命核》


全核健在。


《超速再生》


最大出力。


頭部再生率


0%



18%



47%



79%



100%。


━━━━━━━━━━


 僅か。


 十二秒。


 破壊されたはずの頭部が。


 完全に再生した。


 三対の金色の眼が開く。


 額の巨大魔晶核が。


 再び赤紫色の光を放つ。


 傷跡は。


 一つも残っていない。


「グォォォォォォォォォォォォ――!」


 陸皇の咆哮が。


 絶望に沈んだ戦場を揺るがす。


 大規模儀式魔法で。


 頭部を完全に破壊されても。


 ベヘモスは。


 僅かに歩みを止めただけだった。


 リリスは。


 再生した巨獣を見上げる。


 黒い仮面の奥で。


 その瞳が静かに輝いた。


「すごい」


『嬉しそうに言うな』


「だって、本当にすごいよ」


 七重障壁。


 多層甲殻。


 多重生命核。


 そして。


 頭部すら十二秒で再構築する《超速再生》。


 王国の総力を受けてもなお。


 陸皇は健在だった。

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