第七十六話 古代迷宮の星温室
月光に照らされた巨大な温室。
銀色の葉が風もないのに揺れ。
淡く発光する花々の間を、小さな光の粒が漂っている。
天井を覆う透明な結晶板の向こうには、満天の星空。
だが。
ここは王都の地下十一階層である。
「本当に外みたいですね」
フィオナが空を見上げる。
大きな狐耳が、温室を流れる微かな水音を拾っていた。
「幻ではないのか?」
「半分は本物だよ」
リリスは《万象解析》を発動する。
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《古代迷宮の星温室》
内部環境
・擬似星空投影
・月光属性変換結晶
・自然風循環術式
・地下水浄化機構
・地脈魔力供給
・温度自動調整
・植物成長管理
現在稼働率:38%
異常箇所:多数
管理権限:未取得
無許可採取:禁止
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「星空は投影だけど、光や風は本物みたい」
『管理権限がないうちは採取できんようだな』
「うん」
クロの言葉に、リリスは少し残念そうに花畑を見る。
目の前には。
これまで一度も見たことのない素材が、数え切れないほど生えていた。
白銀色の花弁を持つ花。
透明な雫を蓄えた茸。
内部に星明かりが瞬く葡萄。
青白い魔力を吸収する苔。
「師匠」
「まだ採らないよ」
「何も言っていません」
「顔に書いてあったかと思って」
『お前の場合は、視線に書いてある』
リリスは《超広域自動収集》を停止する。
管理権限のない植物が、誤ってインベントリへ入らないようにするためだった。
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《超広域自動収集》
対象範囲から第十一階層を除外しました。
理由
・管理権限未取得
・特殊採取規則適用中
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「これで大丈夫」
「昨日より慎重になりましたね」
フィオナが微笑む。
「昨日のことは、もう反省してるよ」
『反省した者は、邪神から得た宝箱を朝食前に確認しようとはしない』
「見るだけだったのに」
「セバス殿とエレナ殿にも止められていただろう」
シグレが呆れたように言う。
結局。
《創世の宝箱》の詳しい確認は、屋敷の地下保管庫で厳重に封印してから行うことになった。
監督役として、クロ、フィオナ、シグレの三人も立ち会う予定である。
「今日は温室の攻略に集中する」
『その言葉を信じよう』
四人は、温室中央にある巨大樹へ向かって歩き始めた。
◇◇◇
星温室には。
石造りの細い道が、植物を避けるように張り巡らされていた。
道の左右には古代文字が刻まれた小さな石柱が並んでいる。
リリスが近づくと。
一番手前の石柱へ、青白い文字が浮かんだ。
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管理者不在期間
183,661日
主管理式:異常
副管理式:停止
自動修復式:魔力不足
環境維持優先順位:錯乱
守護者制御:不安定
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「五百年以上、まともに管理されていないみたい」
「それでも植物が枯れていないのか」
「迷宮から最低限の魔力だけは供給されてたんだと思う」
シグレは周囲へ視線を巡らせる。
「だが、元気そうには見えん植物も多いな」
銀色の木々の一部は枝が黒ずみ。
水路の端には、淀んだ紫色の水が溜まっていた。
蔓植物の一部も異常に伸び、ほかの植物へ絡みついている。
「管理式の優先順位が壊れてる」
リリスは温室全体の術式を解析した。
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【環境管理異常】
月光供給:12%
水分供給:163%
地脈魔力:8%
土壌栄養:局所集中
温度管理:正常
害虫排除:停止
病害隔離:停止
植物成長抑制:停止
守護者命令
「温室を保護せよ」
↓
「温室内のすべてを排除せよ」
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『最後が致命的だな』
「守護者が動く前に直せないのですか?」
「三つの管理塔を同時に復旧させないと、中央管理核へ触れられないみたい」
温室の東西南。
三方向に、細長い塔が立っている。
東は月光制御塔。
西は水流制御塔。
南は地脈制御塔。
それぞれが停止し。
中央の巨大樹へ魔力を送れなくなっていた。
「三手に分かれるか?」
「危ないから、二組にしよう」
リリスが能力画面を操作する。
「私とクロが二か所。フィオナとシグレが一か所を直して。終わった方が残りを手伝う」
「私たちだけで修復できるでしょうか」
「手順は送るよ。《技能継承支援》と《世界記録接続》で、必要な古代文字も読めるようにする」
リリスが二人へ指先を向ける。
淡い光が額へ吸い込まれた。
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一時技能共有
《古代迷宮文字解読》
《魔導回路基礎修復》
《管理式安全操作》
有効時間:3時間
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「文字が読める……」
フィオナが石柱を見つめる。
「便利な技能だな」
「危険を感じたら、すぐに呼んで」
「分かりました」
「お前も無茶をするな」
「今日はしないよ」
『今日は、か』
◇◇◇
リリスとクロは。
最初に東側の月光制御塔へ向かった。
塔の内部には、無数の円形鏡が浮かんでいる。
それぞれ異なる角度を向き。
天井から差し込む月光を、迷宮の壁へ無駄に反射していた。
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《月光制御塔》
目的
擬似月光を植物属性ごとに分配する。
異常
反射鏡座標:全損
光量変換式:逆転
過剰照射領域:3
光量不足領域:27
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「鏡を全部戻せばいいみたい」
『何枚ある』
「一万二千八百枚」
『……時間が掛かるのではないか』
「《同時工程千重》」
リリスの背後へ、千本の魔力腕が出現した。
一本につき十数枚の鏡を操作し。
空中で少しずつ角度を変えていく。
『相変わらず、生産作業では容赦がないな』
「戦闘じゃないから」
鏡の角度は。
ほんの〇・一度ずれるだけでも、照射位置が大きく変わる。
リリスは《未来軌道予測》で光の進路を計算し、《絶対軌道補正》で正しい角度へ固定していった。
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月光反射鏡
修復率
12%
↓
41%
↓
78%
↓
100%
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「最後に、光量変換式」
逆転していた魔法陣の一部を書き直す。
白い光が塔全体を満たした。
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《月光制御塔》
復旧完了。
月光供給:100%
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その瞬間。
温室の花々が、一斉に淡い光を放った。
「綺麗」
『見惚れるのは後だ。中央から妙な魔力が出ている』
クロが巨大樹の方角を睨む。
地面の下。
根を通じて。
濁った魔力が温室全体へ広がり始めていた。
◇◇◇
一方。
フィオナとシグレは、西側の水流制御塔へ到着していた。
塔の内部を。
青白い水路が複雑に巡っている。
だが。
幾つもの水門が閉じ。
一部の水路からは紫色の濁流が溢れていた。
「水を止めればよいのか?」
「すべて止めると植物が枯れてしまいます」
フィオナが壁面の古代文字を読む。
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水流再調整手順
一、汚染水路を隔離
二、清浄水路を開放
三、過剰水分を地下貯水槽へ移送
四、浄化核を再起動
注意
水路への物理的破壊は禁止
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「斬れないのか」
シグレが僅かに残念そうな顔をする。
「水路は斬ってはいけません」
「分かっている」
紫色の水が、床を這うように二人へ迫る。
触れた石材が黒く変色していった。
「《月狐氷刃》!」
フィオナが魔剣を振るう。
紫色の水だけが凍結し。
清浄な水は流れたまま残る。
「シグレさん、右側の水門を!」
「任せろ」
シグレが塔内部を駆ける。
閉じた水門の前で刀を抜き。
水門そのものではなく、絡みついていた黒い根だけを斬り落とした。
「《白雨抜刀》!」
一閃。
根は断ち切られたが。
すぐに別の根が壁の隙間から伸びてくる。
「増えているぞ!」
「管理式が、私たちを侵入者と判断しています!」
フィオナが四属性の魔力を展開する。
「《月狐魔刃・四重奏》!」
炎が黒い根を焼き。
氷が再生を止め。
風が灰を吹き飛ばし。
雷が水門の起動回路へ魔力を流した。
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水門一号:開放
水門二号:開放
浄化水路:接続
浄化核再起動まで:60秒
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「あと一分です!」
「その間、根を止めればよいのだな」
シグレは腰を落とす。
無数の黒い根が、壁と床を突き破って迫る。
「斬る対象があるなら、話は早い」
白銀色の魔力が刀身を覆った。
「《纏刀・白月連閃》!」
幾百もの斬撃が塔内を走る。
水路。
魔法陣。
壁。
必要な設備には傷一つ付けず。
黒い根だけが細切れになって床へ落ちた。
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浄化核を再起動しました。
汚染水を浄化します。
水分供給量を適正化します。
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「修復完了です!」
「こちらも終わったか」
二人は顔を見合わせる。
「リリスの方へ戻るぞ」
「はい!」
だが。
塔を出る直前。
温室中央から、巨大な咆哮が響いた。
◇◇◇
巨大樹の幹が。
内側から裂けた。
太い根が大地を突き破り。
数百本の蔓が、蛇のように空へ伸びていく。
月光を受けていた銀色の葉は黒く染まり。
幹の中央に、赤い巨大な眼が開いた。
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《古代星樹守護者》
状態:管理式暴走
敵対性:強制付与
本来の役割
・温室保護
・病害植物の隔離
・侵入者の排除
・環境維持補助
現在命令
「温室内の全生命を排除」
危険度:A+
完全破壊:禁止
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「やっぱり動いた」
『予想していたのか』
「可能性は高いと思ってた」
『先に言え』
古代星樹守護者が咆哮する。
黒い蔓が、リリスとクロへ殺到した。
「《影界潜行》!」
クロが影へ沈み。
リリスは《天地歩法》で蔓の間を抜ける。
蔓の一本が大地へ激突。
灰色の土と石畳が大きく弾け飛んだ。
「壊しちゃ駄目だから、反撃しにくい」
『ならば、縛る』
クロの影が地面を走った。
『《冥獄影鎖》!』
黒紫色の鎖が、星樹守護者の根と幹へ巻きつく。
だが。
守護者は力任せに鎖を引き千切った。
『力だけなら、先ほどの竜王には遠く及ばん』
「壊せない相手の方が大変だよ」
そこへ。
「師匠!」
フィオナとシグレが到着する。
「水流制御塔は修復しました!」
「残るのは南の地脈制御塔だな」
「うん。三つが直れば、中央管理核へ触れられる」
星樹守護者が枝を広げる。
無数の葉から、緑色の光線が放たれた。
「《損傷分散結界》!」
リリスの結界が光線を受け流す。
「私が管理塔を直す。三人は守護者を傷つけずに止めて」
『簡単に言ってくれる』
「クロならできるよ」
『仕方あるまい』
「私たちも止めます」
フィオナが魔剣を構える。
「シグレ、黒い部分だけを斬って。健康な枝には触れないで」
「承知した」
「クロは根を固定。フィオナは属性で再生を抑えて」
『お前はどうする』
「すぐ戻る」
リリスの姿が、光とともに消えた。
◇◇◇
南の地脈制御塔。
その内部は。
ほかの二つよりも酷く損傷していた。
壁面を埋め尽くす魔法陣。
中央には、砕けた地脈結晶。
床下から流れ込む魔力は、ほとんど止まっている。
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《地脈制御塔》
地脈接続率:3%
主変換核:破損
魔力供給路:断裂
修復推定時間:42分
古代星樹守護者の完全暴走まで:4分12秒
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「四十二分も掛けられない」
リリスはインベントリを開く。
神鉄。
神魔鋼。
高純度魔導核。
創石。
材料は十分にある。
「同じ物を直すより、新しく作った方が早い」
砕けた変換核を《完全分解》する。
構造を《超解析図作成》で記録。
「《神性素材融合》《超高速錬成》」
材料を組み合わせ。
古代式よりも高性能な地脈変換核を、その場で錬成する。
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《星地脈循環核》
品質:神級
機能
・地脈魔力吸収
・属性自動変換
・植物別供給調整
・過剰魔力貯蔵
・汚染魔力浄化
・自動修復
・管理核連動
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「完成」
新しい核を、制御塔中央へ設置する。
床下から。
青白い魔力が一気に噴き上がった。
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《地脈制御塔》
復旧完了。
地脈接続率:100%
三基の管理塔が正常稼働しました。
中央管理核の封印を解除します。
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リリスは《瞬間転移》で中央へ戻った。
◇◇◇
「《月狐氷刃》!」
フィオナの氷が黒い蔓を凍結させる。
「《白雨連華》!」
シグレの斬撃が。
凍った黒い部分だけを正確に削ぎ落とす。
『《冥獄重圧》!』
クロが重力を増大させ。
暴れ回る巨大な根を地面へ押さえつけていた。
それでも。
星樹守護者の赤い眼は、三人へ光を集めている。
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警告
《星樹消滅光》
対象
フィオナ・ルーヴェル
シグレ・ヤルク
クロ
発射まで:3秒
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「間に合った」
リリスが星樹守護者の前へ現れる。
「《迷宮管理核接続》!」
右手を巨大樹の幹へ触れた。
無数の古代文字が。
リリスの腕から星樹守護者の全身へ流れ込んでいく。
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三基の管理塔と接続。
中央管理核へ侵入します。
異常命令を検出。
「温室内の全生命を排除」
命令を削除します。
本来命令を復元。
「温室内の生命と環境を保護」
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「《過去痕跡再現》《世界記録接続》!」
五百年以上前。
正常に動いていた頃の管理式を読み出す。
「《無損失再加工》《魔導回路自動設計》!」
壊れた術式を書き換え。
欠けていた部分を補い。
暴走した命令を、本来の形へ戻していく。
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中央管理式
修復率
21%
↓
49%
↓
76%
↓
100%
守護者制御を正常化します。
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星樹守護者の眼から。
赤い光が消えた。
放たれる寸前だった《星樹消滅光》も霧散する。
黒く染まっていた葉が。
一枚ずつ、本来の銀色へ戻っていく。
大地を覆っていた根は静かに土へ沈み。
巨大な枝が、リリスたちを包むようにゆっくりと下がった。
『――管理者』
古く。
穏やかな声が。
四人の魂へ響く。
『長き不在を経て、管理式の修復を確認』
「もう苦しくない?」
『異常命令、消失。正常稼働へ移行』
巨大な眼が閉じる。
幹の裂け目も塞がっていった。
『新たなる管理者候補へ、感謝を』
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第十一階層の修復を完了しました。
《古代迷宮の星温室》
稼働率
38%
↓
100%
守護者暴走:解除
植物損傷率:0.3%
許容範囲内
攻略評価:最高
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「最高評価」
『今回は本当に壊さずに済んだな』
「少しだけ枝を斬った」
シグレが刀を納める。
『損傷した部分だけだ。問題あるまい』
「植物を相手に戦うのも難しいですね」
フィオナが息を吐く。
「でも、二人ともすごく上手だったよ」
「お前が管理式を直さなければ、いつまでも終わらなかった」
「四人で攻略したんだよ」
その言葉に。
シグレが僅かに目を見開く。
やがて。
冒険者カードに刻まれた黒い月の紋章へ触れ。
「……そうだな」
小さく頷いた。
◇◇◇
中央管理核から。
白金色の光が降り注ぐ。
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《古代迷宮の星温室》
管理権限を付与します。
第一管理者
《ノクス》
共同管理者
フィオナ・ルーヴェル
シグレ・ヤルク
管理補助獣
クロ
付与権限
・適正採取
・植物育成
・環境調整
・守護者命令
・転移地点登録
・素材再生管理
・緊急保護
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「私たちにも管理権限が?」
フィオナが驚く。
「攻略に参加した全員へ付いたみたい」
『補助獣という表記は気に入らんがな』
「従魔より偉そうだよ」
『そういう問題ではない』
管理権限を得たことで。
温室内の植物へ、採取可能の印が浮かび始めた。
リリスの目が輝く。
「採っていいみたい」
『待て』
「管理画面も確認するよ」
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【適正採取規則】
一回の採取上限
各素材:全体量の10%
再生期間
・通常植物:1~3日
・希少植物:7~30日
・古代植物:30~90日
根、母株、種子個体の採取禁止
自動収集との連動:可能
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「今度こそ大丈夫」
リリスは《生態系非破壊採取》と《超広域自動収集》を連動させる。
温室内から。
収穫時期を迎えた素材だけが、光となってインベントリへ収納されていった。
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【新規素材登録】
101 月光薬花
月光を蓄える白銀色の薬花。
回復薬、精神安定薬、月属性薬の素材。
102 銀葉治癒草
葉脈へ治癒魔力を循環させる銀色の薬草。
外傷、内傷、魔力回路損傷の治療に有効。
103 星蜜葡萄
果実内部へ星属性の蜜を蓄える葡萄。
食用、霊薬、魔力回復菓子の素材。
104 魔力蓄積苔
周囲の余剰魔力を安全に吸収・保存する青白い苔。
魔導具電池、魔力貯蔵槽、結界維持素材に使用可能。
105 古代生命樹の樹液
古代星樹守護者から自然分泌された生命樹液。
生命薬、成長装備、植物系魔導具の素材。
106 虹雫茸
七属性の雫を傘へ生成する透明な茸。
多属性薬、属性耐性薬、錬金触媒に適する。
107 精霊湧水
温室地下の精霊水脈から湧き出す清浄な水。
薬、料理、酒、魔導液の基礎素材。
108 迷宮温室土
地脈魔力と生命力を豊富に含む特殊土壌。
希少植物の栽培、種子保存、人工温室造成に使用可能。
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現在確認済み累計:108種類
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「百八種類」
『良かったな』
「うん」
「星蜜葡萄は食べられるのですよね?」
フィオナが宝石のような果実を見る。
「食べられるよ。一房だけ、そのまま試してみよう」
リリスは管理規則に従い。
成熟した房を一つだけ採取した。
水で洗い。
四人で分ける。
クロの分は粒を多めにした。
「甘い……!」
フィオナの耳が嬉しそうに揺れる。
「ただ甘いだけではないな。後味が涼しい」
シグレも、もう一粒口へ入れる。
『魔力も僅かに回復するようだ』
「屋敷でお菓子にしてもらおう」
「マルタさんなら、きっと美味しく作ってくださいます」
温室の中央。
完全に正常化した古代星樹が。
銀色の葉を静かに揺らした。
その根元へ。
一つの白金色の宝箱が浮かび上がる。
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《白金の宝箱》
第十一階層最高評価報酬
・《星温室管理証》×1
・《古代植物栽培術式書》×1
・《自動灌漑魔導核》×1
・《星温室種子保管庫の鍵》×1
・白金貨×300
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「種子保管庫」
『今日は、鍵を使うだけなら構わん』
「邪神の宝箱より信用されてる」
「当然です」
「当然だな」
『当然だ』
またしても。
三人の返事が綺麗に重なった。




