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第七十一話 新たなる百の上位スキル



 《天聖革アークレザー》を発見した翌朝。


 リリスは地下工房の椅子へ座り、半透明の能力画面を眺めていた。


 素材整理。


 衣服製作。


 召喚訓練。


 迷宮探索。


 屋敷の設備拡張。


 やりたいことが増え続けていたため、しばらく能力の確認を後回しにしていた。


 その結果。


━━━━━━━━━━


リリス・ルクスヴィア


保有SP:1,500,000


未使用SP警告


大量のSPが長期間使用されていません。


新規上位スキルの取得が可能です。


━━━━━━━━━━


「百五十万も残ってた」


『残しすぎだ』


 黒い首布を巻いたクロが、作業台の横から画面を見上げている。


「最近、素材のことばかり考えてたから」


『いつものことだろう』


「否定できないね」


 工房にはフィオナとシグレも来ていた。


 フィオナはリリスの後ろから画面を覗き込み、大きな狐耳をぴんと立てる。


「師匠は、さらにスキルを取得するのですか?」


「うん。前に百個取得したけど、まだ足りない分野があるから」


「すでに十分すぎるほど強いと思うが」


 シグレが呆れたように言う。


「戦闘以外にも必要な技能があるよ」


 リリスが思い描いているのは、未来のことだった。


 自分の商会。


 いつか持ちたい領地。


 仲間たちと暮らす城。


 人々が安全に挑戦できる世界最高の人工ダンジョン。


 神鉄やオリハルコンを安定して得られる資源地帯。


 便利な街。


 豊かな農地。


 学校や治療院。


 それらを実現するためには、単純な戦闘力だけでは足りない。


「今回は、今まで持っていない上位スキルだけを選ぶ」


「百個すべてですか?」


「全部」


『そして、すべて最大レベルにするのだろう』


「もちろん」


 クロは諦めたように息を吐いた。


◇◇◇


 リリスは《万象解析》を使い、取得可能なスキルを選別する。


 既存技能との重複。


 上位互換によって完全に不要となる技能。


 現在の能力で代用できる技能。


 それらを除外する。


━━━━━━━━━━


新規上位スキル検索


検索対象:全系統


既存スキルとの重複:除外


類似度90%以上:除外


将来有用性:最高優先


検索結果:100種類


重複判定:0


━━━━━━━━━━


「ちょうど百個」


「最初から百個になるよう選んだのではないか?」


「少しだけ調整した」


「やはりな」


 シグレの指摘を聞き流し、リリスは最初の一覧を開いた。


━━━━━━━━━━


【空間・転移系上位スキル】


01 《天涯瞬歩》

視認地点へ予備動作なしで瞬間移動する。


02 《星界座標記憶》

一度訪れた場所の座標を永久記録する。


03 《次元門生成》

任意の二地点を結ぶ安定転移門を作る。


04 《空間固定》

指定領域の転移、歪曲、崩壊を封じる。


05 《空間折畳》

距離を圧縮し、移動・輸送時間を短縮する。


06 《位相透過》

壁や結界を異なる位相から通過する。


07 《帰還標識》

仲間へ安全な帰還地点を設定する。


08 《転移阻害突破》

転移封印や空間妨害を無効化する。


09 《遠隔物質転送》

指定物資を離れた場所へ直接輸送する。


10 《異界工房展開》

外界から隔離された専用作業空間を作る。


━━━━━━━━━━


【時間・演算系上位スキル】


11 《思考時間加速》

外界一秒の間に長時間思考できる。


12 《作業時間圧縮》

製作や整理に必要な時間を大幅短縮する。


13 《局所時間停止》

指定した物体や狭い範囲の時間を止める。


14 《時間遅延耐性》

時間停止や加速による干渉を防ぐ。


15 《未来軌道予測》

数秒先までの動きや攻撃軌道を予測する。


16 《過去痕跡再現》

場所や物体に残された過去の状態を読み取る。


17 《同時工程千重》

最大千種類の作業を並列処理する。


18 《瞬間記憶固定》

見聞きした情報を完全な状態で保存する。


19 《永劫劣化停止》

素材や完成品の経年劣化を停止させる。


20 《熟成時間制御》

薬、食材、金属などの熟成速度を調整する。


━━━━━━━━━━


「《熟成時間制御》……」


 リリスの黒い瞳が輝く。


『神鉄の生成速度を上げようと考えたな』


「まだ何も言ってないよ」


『顔に出ている』


◇◇◇


━━━━━━━━━━


【武技・戦闘系上位スキル】


21 《万武装適応》

あらゆる武器を最高効率で扱う。


22 《絶対軌道補正》

攻撃軌道を最適な角度へ自動修正する。


23 《破界一閃》

空間や結界ごと対象を斬る。


24 《天墜重撃》

武器へ超重量を付与して叩き込む。


25 《無拍連撃》

攻撃の間を消し、途切れない連撃を放つ。


26 《魔力刃成形》

任意の形状・長さの魔力刃を生み出す。


27 《武器遠隔操作》

複数の武器を離れた場所から操る。


28 《闘気実体化》

闘気を盾、刃、鎖などへ変化させる。


29 《反撃未来読》

敵の反撃を事前に読み、最適な回避を行う。


30 《必中破断》

防御の最も脆い一点へ攻撃を導く。


━━━━━━━━━━


【魔法・属性系上位スキル】


31 《天象魔法》

雷雨、風雪、晴天などの気象を操作する。


32 《地脈魔法》

大地を流れる魔力を制御する。


33 《星辰魔法》

星光を利用した攻撃、支援、転移を行う。


34 《虚空魔法》

何も存在しない空間の力を操る。


35 《生命魔法》

生命力の回復、活性、安定化を行う。


36 《霊魂魔法》

魂や霊体を保護・浄化・誘導する。


37 《重力魔法》

重量、落下方向、引力を自在に変える。


38 《結界魔法極意》

複数の高位結界を同時展開する。


39 《複合属性融合》

異なる属性を安全に融合する。


40 《魔法現象保存》

発動済み魔法を保存し、任意の時に再使用する。


━━━━━━━━━━


「戦闘系も増えているではないか」


「必要になるかもしれないから」


「何と戦うつもりだ」


「まだ決めてないよ」


 その答えが一番恐ろしい。


 シグレの表情には、はっきりとそう書かれていた。


◇◇◇


━━━━━━━━━━


【防御・支援系上位スキル】


41 《絶対姿勢維持》

どのような衝撃でも姿勢と重心を崩さない。


42 《全属性吸収》

受けた属性攻撃を魔力へ変換する。


43 《因果遮断》

呪い、運命干渉、結果固定を遮断する。


44 《守護領域展開》

範囲内の味方と建造物を同時に守る。


45 《損傷分散結界》

一か所へ集中した被害を領域全体へ分散する。


46 《状態異常反転》

毒や弱体化を回復・強化効果へ変換する。


47 《精神侵食完全防御》

洗脳、恐怖、幻覚、精神汚染を防ぐ。


48 《魂魄固定》

魂の損傷、分離、消滅を防止する。


49 《装備損傷代替》

装備へ加わる損傷を魔力で肩代わりする。


50 《戦闘自動補給》

戦闘中に消耗品と魔力を自動補給する。


━━━━━━━━━━


【生産・製作系上位スキル】


51 《超位金属変換》

金属を同系統の上位素材へ変換する。


52 《神性素材融合》

神性を帯びた素材同士を安定融合する。


53 《生体素材加工》

臓器、皮、骨などを劣化させず加工する。


54 《魔導回路自動設計》

目的に合う魔導回路を自動で設計する。


55 《装備進化誘導》

成長装備の進化方向を指定する。


56 《固有能力移植》

素材の能力を別の装備へ移植する。


57 《完成品格上昇》

完成品の品質を一段階以上引き上げる。


58 《大量同時製作》

同一品質の製品を大量に同時製作する。


59 《無損失再加工》

完成品を素材へ戻し、損失なく作り直す。


60 《創作設計顕現》

頭の中の設計を立体映像や図面として再現する。


━━━━━━━━━━


 リリスは《創作設計顕現》へ意識を向けた。


 工房の中央に、巨大な城の立体映像が現れる。


 中央城郭。


 錬金工房。


 図書館。


 温泉。


 学校。


 治療院。


 工房街。


 その地下には、百を超える階層を持つ人工ダンジョン。


「まだ正式な設計ではないよ」


「思い描いただけで、ここまで出るのですか?」


 フィオナが目を見開く。


「これなら、いつか本当に作れるね」


『本当に作るつもりなのだろう』


「うん」


◇◇◇


━━━━━━━━━━


【採取・素材管理系上位スキル】


61 《資源脈完全探知》

鉱脈、水脈、霊脈、植物群生地を発見する。


62 《再生周期把握》

採取地点の再生時期と安全採取量を把握する。


63 《生態系非破壊採取》

周辺環境を傷つけず素材を回収する。


64 《希少個体発見》

希少種、変異種、上位種を見つけ出す。


65 《素材由来逆算》

完成品から使用素材と産地を逆算する。


66 《素材相性予知》

素材同士を組み合わせた結果を事前に知る。


67 《自動熟成監督》

熟成中の素材を監視し、異常を防止する。


68 《未知素材安全隔離》

未鑑定素材を自動的に封印・隔離する。


69 《素材特性抽出》

必要な特性だけを素材から取り出す。


70 《収集経路最適化》

最も安全かつ効率的な採取経路を作る。


━━━━━━━━━━


【迷宮・領域系上位スキル】


71 《迷宮構造設計》

目的に応じた迷宮構造を設計する。


72 《階層自動生成》

設定条件に従って新しい階層を生成する。


73 《魔物生態配置》

魔物が共存できる環境を構築する。


74 《宝箱循環設定》

宝箱の出現、内容、再生周期を設定する。


75 《安全転移網構築》

迷宮や都市へ安全な転移網を作る。


76 《迷宮管理核創造》

迷宮全体を制御する管理核を製作する。


77 《資源再生地脈構築》

鉱石や植物が再生する地脈を作る。


78 《侵入者危険度判定》

侵入者の力量と目的を自動判別する。


79 《緊急救命転送》

危険な人物を治療区域へ強制転送する。


80 《領域環境自在化》

温度、天候、重力、昼夜を領域ごとに調整する。


━━━━━━━━━━


「世界最高のダンジョンを作るための技能ですね」


「初心者でも安心して挑める場所にしたいから」


「深層は?」


「強い人向けに、すごく難しくする」


『結局、危険な階層も作るのだな』


「挑戦したい人もいるからね。緊急転移は付けるよ」


◇◇◇


━━━━━━━━━━


【商業・領地運営系上位スキル】


81 《商流最適化》

商品の仕入れ、販売、在庫を最適化する。


82 《適正価格算定》

売り手と買い手が納得できる価格を算出する。


83 《需要未来予測》

地域ごとの需要変化を予測する。


84 《物流網統合》

倉庫、店舗、輸送路を一括管理する。


85 《契約絶対記録》

契約内容を改変不可能な形で保存する。


86 《不正取引感知》

詐欺、横領、偽装、買いたたきを発見する。


87 《人材適性分析》

本人の希望を含め、向いている仕事を判定する。


88 《組織運営補助》

大規模な組織の業務を自動整理する。


89 《公平分配》

利益や物資を公正な基準で配分する。


90 《都市機能設計》

道路、水道、住宅、公共施設を最適配置する。


━━━━━━━━━━


【成長・共鳴系上位スキル】


91 《仲間成長共鳴》

仲間同士の訓練成果を高める。


92 《経験値共有調整》

経験値の分配率を安全に変更する。


93 《技能継承支援》

習得者が他者へ技能を教えやすくする。


94 《才能開花促進》

本人が持つ才能の成長を補助する。


95 《危機幸運転換》

危機的状況を好機へ変える可能性を高める。


96 《奇跡発生補助》

極めて低い成功率を現実的な範囲へ引き上げる。


97 《未来分岐選定》

複数の選択肢が生む結果を比較する。


98 《願望設計補助》

曖昧な願いを安全で具体的な目標へ変換する。


99 《世界記録接続》

世界に刻まれた知識や出来事の痕跡を読む。


100 《超越技能統合制御》

多数の高位技能を衝突させず同時使用する。


━━━━━━━━━━


「百個、確認完了」


 リリスが取得画面へ手を伸ばす。


━━━━━━━━━━


取得費用


新規取得:2,000SP×100


Lv.1からLv.MAX:8,000SP×100


合計消費SP:1,000,000


取得後残存SP:500,000


実行しますか?


━━━━━━━━━━


「実行」


 地下工房を、七色の光が満たした。


 百個の光球がリリスの周囲へ現れる。


 一つ。


 二つ。


 十。


 五十。


 百。


 それぞれが身体へ吸い込まれるたび、膨大な知識と感覚が定着していく。


 空間。


 時間。


 武技。


 魔法。


 防御。


 製作。


 素材。


 迷宮。


 商業。


 仲間の成長。


 新しい力は互いに衝突することなく、《超越技能統合制御》によって一つへまとめられた。


━━━━━━━━━━


新規上位スキル100種類を取得しました。


全技能の強化を開始します。


Lv.1



Lv.10



Lv.50



Lv.100



Lv.MAX


全技能の強化が完了しました。


取得数:100


Lv.MAX到達数:100


失敗:0


重複:0


消費SP:1,000,000


残存SP:500,000


━━━━━━━━━━


 光が消える。


 リリスはゆっくりと目を開いた。


「終わった」


「何か変わりましたか?」


 フィオナが尋ねる。


「できることが増えたよ」


 試しに《同時工程千重》を発動する。


 工房内に百の魔法陣が展開された。


 素材の整理。


 薬瓶の洗浄。


 金属の精錬。


 布地の裁断。


 魔導具の点検。


 すべてが同時に始まる。


 さらに《作業時間圧縮》を重ねると、数時間分の作業が数秒で終了した。


「……これ以上、作業を速くする必要があったのか?」


 シグレが呆然とする。


「一万種類以上の素材を整理するから」


『それなら必要かもしれんな』


 クロまで納得してしまった。


 次にリリスは《迷宮構造設計》を発動する。


 先ほどの城と人工ダンジョンが、さらに詳細な立体映像へ変わる。


 初心者用草原階層。


 鉱石が再生する洞窟。


 薬草園。


 水中階層。


 空島階層。


 高位冒険者向けの神域階層。


 各所には休憩所、治療所、転移門、救難設備が設けられていた。


「いつか、ここでみんなが素材を集められるようにしたい」


「商会の商品も、そこで得られた素材から作るのですか?」


「うん。領民や冒険者にも、きちんと利益が出るようにする」


 フィオナは立体映像の街を見つめ、柔らかく微笑んだ。


「楽しそうな場所ですね」


「まだ設計だけだけどね」


「お前なら、いずれ本当に作るのだろう」


 シグレが言う。


「悪くないと思う」


 それは、シグレなりの強い賛同だった。


 リリスは百個の新しいスキル一覧を閉じる。


 強くなるためだけではない。


 素材を集めるため。


 物を作るため。


 仲間を守るため。


 人々が働き、稼ぎ、安心して暮らせる場所を作るため。


 今回得た百の上位スキルは。


 リリスが思い描く未来を、少しだけ現実へ近づける力だった。

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