第六話 新装備の試し斬りと王都西の森
新しく仕上げた装備を身につけた翌朝。
私は宿の部屋で《鉄牙剣》を鞘から抜いた。
灰銀色の刃。
その内部には、少量だけ組み込んだ《創晶石》による銀白色の魔力経路が細く伸びている。
魔力を流せば、その線が淡く輝いた。
「昨日は作っただけだったし、今日はちゃんと試してみよう」
盾は《岩鱗小盾》。
防具は《岩鱗革鎧》。
その下には、暗灰色の上衣と黒い長ズボンで構成された《厚布の鎧下》。
最初に買った装備を残しながら強化したので、身体への馴染みも悪くない。
「よし」
装備を確認し、《インベントリ》に保存食と水、ポーション類が入っていることも確かめる。
そのまま宿を出た。
◇◇◇
まず向かったのは冒険者ギルド。
受付には今日もエレナさんがいた。
「おはようございます、リリスさん」
「おはようございます」
私を見るなり、エレナさんの視線が装備へ移った。
「あれ? 防具が変わりました?」
「強化しました」
「昨日の革鎧ですよね?」
「はい」
「一日で?」
「はい」
エレナさんが少し黙った。
「……もう驚かないことにします」
「まだ三日くらいしか会ってないですよ?」
「その三日が濃すぎるんです」
なるほど。
「今日は何か依頼を受けますか?」
「新しい装備を試したいので、王都の近くで少し強めの魔物を狩ろうかなと」
「少し強め……」
エレナさんが警戒するような顔になる。
「どの辺りを考えています?」
「昨日行ったルミナス丘陵の先に森がありましたよね」
「《西ルミナス森林》ですね」
エレナさんが地図を取り出した。
「入口付近ならFランクでも入れます。ただし、丘陵より魔物の種類は多くなります」
「素材も?」
「もちろん増えます」
「行きます」
「予想通りの反応ですね」
地図を見る。
王都から西へ進み、ルミナス丘陵を越えた先。
広い森林地帯。
「常設依頼もありますよ」
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《西ルミナス森林・常設依頼》
《フォレストウルフ》討伐
《アーマーボア》討伐
《森薬草》納品
《青樫材》納品
《魔力茸》納品
各種魔石・魔物素材買取
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「木材も納品できるんですね」
「ええ。ただし無断で大規模伐採するのは禁止です。落ち枝や指定区域の木材、魔物によって倒された木などが中心ですね」
「分かりました」
木材。
茸。
薬草。
そして魔物素材。
今日は結構楽しめそうだ。
「暗くなる前に戻ってくださいね」
「はい」
「それと、本当に森の奥へ行きすぎないように」
「はい」
「……二回言っておきます」
信用がない。
◇◇◇
西門を抜ける。
昨日歩いたルミナス丘陵を進んでいくと、《自動収集Lv10》が早速働き始めた。
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《薬草》×30
《魔力草》×20
《解毒草》×20
《香草》×30
《山茸》×20
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さらに岩場を通る。
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《鉄鉱石》×70
《銅鉱石》×40
《魔晶砂》×30
《創晶石》×18
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「今日も順調」
半透明の銀白色をした《創晶石》が《インベントリ》へ増えていく。
小さな欠片でも、その内部には細い光の筋がゆらゆらと揺れている。
昨日大量に見つけたとはいえ、集められる時に集めておきたい。
いくらあっても使い道はある。
◇◇◇
一時間ほど歩くと、景色が変わってきた。
草原と岩場が減り、木々が増える。
やがて目の前には背の高い森林が広がっていた。
「ここが西ルミナス森林」
森へ足を踏み入れる。
空気が少し冷たい。
土の匂い。
木々の香り。
葉の隙間から差し込む光。
そして。
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《自動収集》
発動
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《森薬草》×40
《薬草》×30
《魔力草》×20
《癒し苔》×30
《食用茸》×40
《魔力茸》×20
《森苺》×30
《青樫の落枝》×12
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「いきなりいっぱい」
昨日の丘陵とは素材の種類が違う。
まず《森薬草》を取り出す。
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《森薬草》
分類:薬草
品質:普通
森林の魔力を吸収して育つ薬草。
通常の薬草より回復成分が多く、
中級以下の回復薬や傷薬の材料として利用される。
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「普通の薬草より上」
これは錬金に使いたい。
続いて《癒し苔》。
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《癒し苔》
分類:薬用素材
品質:普通
湿度の高い森林に生える苔。
傷口の炎症を抑え、
治癒を助ける成分を含む。
軟膏や湿布薬の材料として利用される。
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「軟膏も作れるんだ」
ポーションだけじゃない。
飲み薬。
塗り薬。
毒消し。
強化薬。
錬金術師として作れる物はいくらでもありそうだ。
「全部集めよう」
歩く速度が少し落ちた。
魔物を探しに来たはずなのに、素材を見るたびに寄り道しているからだ。
◇◇◇
しばらく進むと、一本の大きな木が倒れているのを見つけた。
根元を見る限り、自然に倒れたものらしい。
幹は青みを帯びた灰褐色。
「これが青樫?」
《鑑定》。
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《青樫》
分類:木材資源
品質:普通
硬さと弾力を併せ持つ森林樹。
乾燥後も歪みにくく、
盾、弓、杖、家具など幅広く利用される。
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「弓にも使えるんだ」
それは覚えておこう。
今は剣を使っているけれど、遠距離武器も欲しい。
私は倒木へ触れる。
「《採取》」
必要な部分だけを切り出すよう意識すると、《自動収集》が連動した。
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《青樫材》×24
《青樫の枝》×38
《青樫の樹皮》×16
《青樫の樹脂》×8
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「木一本から色々取れる」
木材だけではない。
枝。
樹皮。
樹脂。
全部用途がありそうだ。
樹脂を《鑑定》する。
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《青樫の樹脂》
分類:植物素材
品質:普通
青樫から採れる粘性の高い樹脂。
接着剤、
防水剤、
錬金素材として利用される。
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「こういう地味な素材も大事なんだよね」
希少素材だけあっても何も作れない。
普通の木材や樹脂、布、革。
基礎素材が大量にあってこそ錬金術は楽しい。
◇◇◇
その時。
《気配察知》に反応が入った。
「四体」
距離は近い。
しかもこちらへ移動している。
私は《鉄牙剣》を抜いた。
木々の間から灰色の影が飛び出す。
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《フォレストウルフ》
Lv14
種族:獣系魔物
危険度:低~中
森林に生息する狼型魔物。
俊敏で、
複数個体による連携攻撃を得意とする。
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「鉄牙狼と同じくらい」
四体。
昨日戦った鉄牙狼より少し細身だ。
一体目が横から飛び掛かる。
「試してみよう」
魔力を剣へ流す。
《鉄牙剣》内部のアルケリウムが反応し、細い銀白色の線が淡く輝いた。
振る。
ザンッ!
「軽い」
昨日の鉄の剣とは違う。
肉だけではない。
骨へ当たった感触もほとんど抵抗にならなかった。
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《フォレストウルフ》
討伐
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二体目。
正面から突っ込んでくる。
小盾を構える。
ガンッ!
牙が《岩鱗小盾》へぶつかった。
衝撃はある。
でも、かなり小さい。
「盾もいい感じ」
弾き返して、一閃。
二体目を倒す。
三体目と四体目が左右へ分かれた。
右。
左。
《気配察知》と《危険察知》で動きが分かる。
まず右へ踏み込み、剣を振る。
三体目。
返す刃で左。
四体目。
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《フォレストウルフ》
×4
討伐
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《自動収集》
発動
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《フォレストウルフの牙》
《フォレストウルフの爪》
《フォレストウルフの毛皮》
《フォレストウルフの肉》
《フォレストウルフの腱》
《フォレストウルフの魔石》
フォレストウルフの遺骸
収納完了
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「かなり強くなってる」
新装備は成功。
特に剣。
切れ味が明らかに上がっている。
「作ってよかった」
◇◇◇
そこからさらに森林を歩く。
魔物を倒す。
素材を集める。
また歩く。
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《森薬草》×80
《魔力草》×40
《癒し苔》×50
《魔力茸》×40
《食用茸》×60
《森苺》×50
《薬樹の葉》×30
《青樫の落枝》×24
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途中で小さな沢も見つけた。
冷たい水が岩の間を流れている。
「綺麗」
《鑑定》。
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《清水》
品質:良質
地下水を源とする清潔な水。
飲用可能。
調合、
料理、
錬金術などにも利用できる。
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「これ欲しい」
革の水筒だけでは足りない。
でも《インベントリ》がある。
空いている瓶や容器へ水を入れ、次々収納していく。
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《清水》×50瓶
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「ポーション作りに使ってみよう」
普通の井戸水と品質が変わるかもしれない。
沢沿いを少し歩くと、水辺に青白い茸が生えていた。
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《月光茸》
分類:魔力茸
品質:良質
薄暗い場所で魔力を蓄積する茸。
夜になると淡く発光する。
魔力回復薬、
魔力触媒などの材料として利用される。
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「良質!」
すぐ回収する。
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《月光茸》×30
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さらに沢の石の隙間。
きらりと銀白色の光。
「あ」
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《創晶石》×26
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「森にもあるんだ」
エレナさんや露店の店主が言っていた通り、かなり広い範囲に分布しているらしい。
それでも見つけると嬉しい。
半透明の銀白色の結晶。
内部で細い光の筋がゆっくり揺れている。
一個だけ取り出して眺めてから、また収納した。
◇◇◇
昼を過ぎた頃。
少し開けた場所へ出た。
そこで《危険察知》が強く反応する。
「……前」
今までの魔物より明らかに大きい。
木の陰から姿を現したのは、黒褐色の巨大な猪だった。
肩まで一メートル半近い。
身体を覆う皮膚の一部が、岩のように硬く変質している。
口元からは太い牙。
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《アーマーボア》
Lv22
種族:獣系魔物
危険度:中
森林や丘陵に生息する大型猪型魔物。
厚い皮膚と硬質化した外皮を持つ。
高い突進力を持ち、
正面からの攻撃に強い。
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「Lv22」
今まで戦った中では高い方。
自分はLv25。
レベル差はほとんどない。
「新装備の試しにはちょうどいいかも」
《アーマーボア》が地面を前脚で掻く。
土が飛ぶ。
次の瞬間。
「来た」
一直線に突進してきた。
速い。
身体が大きい分、迫力もある。
正面から盾で受けるのはやめる。
直前で横へ跳ぶ。
巨大な身体が通過した。
すれ違いざまに《鉄牙剣》を振る。
ガキンッ!
「硬い」
刃は入った。
でも浅い。
ロックリザード以上の硬さ。
アーマーボアが方向転換する。
「なら」
《身体強化》。
さらに魔力を剣へ。
銀白色の魔力経路が強く輝く。
真正面は硬い。
なら狙う場所を変える。
脚。
脇腹。
首。
アーマーボアが再び突進。
避ける。
今度は後脚へ。
ザシュッ!
「入った」
バランスを崩す。
その隙に横へ回り込む。
「ここ」
首と肩の境目。
硬い外皮が薄い場所。
剣を振り下ろした。
ザンッ!
深く刃が入る。
アーマーボアが大きく鳴き、そのまま地面へ崩れた。
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《アーマーボア》
討伐
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《女神の加護》
獲得経験値10倍
適用
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《レベルアップ》
Lv25
↓
Lv26
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「上がった」
昨日から初めてのレベルアップ。
続いて《自動収集》。
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《アーマーボアの硬皮》×20
《アーマーボアの牙》×8
《アーマーボアの肉》×70
《アーマーボアの骨》×24
《アーマーボアの腱》×12
《アーマーボアの魔石》×1
アーマーボアの遺骸
収納完了
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「硬皮」
早速取り出す。
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《アーマーボアの硬皮》
分類:魔物素材
品質:良質
アーマーボアの硬質化した皮。
耐摩耗性と耐衝撃性に優れる。
革防具、
盾、
靴などの補強材に利用される。
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「これも防具素材になるんだ」
でも今すぐ使う必要はない。
昨日強化したばかり。
「取っておこう」
素材は腐らない。
《インベントリ》内部では時間が止まっている。
後でもっと良い組み合わせを思いついた時に使えばいい。
◇◇◇
午後も森林入口付近を中心に探索を続けた。
奥へは行かない。
今日はエレナさんとの約束を守る。
それでも十分だった。
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《本日の討伐記録》
《フォレストウルフ》×31
《アーマーボア》×8
《ブルースライム》×12
《角兎》×16
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総討伐数
67体
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レベルもさらに上がった。
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《リリス・ルクスヴィア》
Lv25
↓
Lv30
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「三十」
五レベル上昇。
《女神の加護》のおかげでAPとSPもまた大量に増えている。
でも、それは宿へ戻ってから確認すればいい。
今は素材。
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《本日の主な採取物》
《森薬草》×310
《魔力草》×180
《癒し苔》×190
《魔力茸》×140
《月光茸》×30
《食用茸》×220
《森苺》×180
《薬樹の葉》×120
《青樫材》×68
《青樫の枝》×124
《青樫の樹皮》×52
《青樫の樹脂》×26
《清水》×50瓶
《創晶石》×74
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「満足」
むしろ大満足。
そして今日は、初めて手に入れた魔物素材も多い。
フォレストウルフ。
アーマーボア。
まだ解体していない遺骸も全部残っている。
「帰ったらまた忙しくなりそう」
それが嬉しい。
◇◇◇
夕方。
王都へ戻ると、私は冒険者ギルドへ立ち寄った。
「ただいまです」
「お帰りなさい、リリスさん」
エレナさんが私の姿を確認する。
服に多少の土埃はついているけれど、大きな怪我はない。
「ちゃんと戻ってきましたね」
「約束したので」
「森の奥には?」
「行ってません」
「良かった……」
そこまで心配されていたらしい。
「常設依頼の素材があります」
「今日はどれくらいでしょう?」
「そんなに多くないですよ」
「リリスさんの『そんなに多くない』は信用してません」
「失礼な」
討伐記録を見せる。
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フォレストウルフ×31
アーマーボア×8
その他低級魔物×28
━━━━━━━━━━
エレナさんが記録を見る。
少し黙る。
「……本当に一人で?」
「はい」
「アーマーボア八体?」
「はい」
「装備を試したかったので」
また額へ手を当てられた。
「素材もあります」
「でしょうね」
「青樫材とか森薬草とか」
「そちらは錬金術師ギルドへ持っていくんですか?」
「全部は売らないです」
「やっぱり?」
「使いたいので」
私はフォレストウルフの討伐証明素材と、アーマーボア素材の一部だけを納品した。
残りは保存。
そして。
「リリスさん」
査定書をまとめていたエレナさんが、少し真面目な表情でこちらを見る。
「はい?」
「登録からまだ数日ですが、討伐実績と納品実績がFランクとしてはかなり多いです」
「いっぱい狩りましたからね」
「いっぱいという範囲を超えてますけど」
書類が一枚追加される。
「ギルド内で確認した上になりますが、この調子なら近いうちにEランクへの昇格試験を受けてもらうことになると思います」
「昇格試験」
「はい。レベルだけで昇格することはありませんが、今の実績なら試験を受ける資格は十分です」
「何をするんですか?」
「簡単な実戦確認と、冒険者としての判断力を見る試験になります」
「面白そう」
「普通は緊張するところなんですが」
「そうなんですか?」
「……まあ、リリスさんらしい気はします」
Eランク。
受けられる依頼が増える。
つまり。
「行ける採取場所も増えます?」
「そこが気になるんですね」
「はい」
エレナさんが笑った。
「増えますよ。採取護衛や森林調査、鉱山周辺の依頼なんかもあります」
「受けます」
「まだ試験日も決まってません!」
「あ」
少し早かった。
でも。
新しい場所。
新しい魔物。
新しい素材。
それらに近づけるなら、ランクを上げる理由としては十分だった。
私は報酬を受け取りながら、もう次の採取場所のことを考え始めていた。




