第四話 ルミナス丘陵の素材採取
王都の西門を抜けると、街道の向こうに緩やかな丘がいくつも連なっていた。
昨日歩いた草原よりも起伏があり、遠くにはむき出しになった岩肌も見える。
あそこが《ルミナス丘陵》らしい。
「鉱石、いっぱいあるといいな」
目的は《創晶石》だけじゃない。
鉄鉱石。
銅鉱石。
魔晶砂。
薬草。
魔力草。
それから、私がまだ知らない素材。
錬金術師ギルドで見た採取地図を思い出しながら、街道を西へ進んでいく。
そこで一つ忘れていたことに気づいた。
「そういえば、採掘……」
私は《採取Lv10》を持っている。
でも、鉱石を本格的に集めるなら《採掘》もあった方がいい。
立ち止まってスキル一覧を開く。
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保有SP:23940
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《採掘》
未取得
取得必要SP:1
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「取得」
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《採掘》
Lv1
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そのまま強化する。
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《採掘》
Lv1
↓
Lv10
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消費SP:10
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保有SP:23930
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「よし」
これで鉱石も問題ない。
昨日は百しかなかったSPが、今では二万以上ある。
十SP使った程度では、ほとんど減った気がしない。
女神様の加護が改めてすごい。
◇◇◇
しばらく歩くと、平坦だった草原が少しずつ丘陵地帯へ変わっていった。
丈の短い草。
低木。
所々に露出した岩。
街道から少し外れただけで、《自動収集Lv10》が次々と反応する。
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《自動収集》
発動
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《薬草》×40
《魔力草》×20
《止血草》×30
《食用野草》×40
《香草》×20
《山苺》×30
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「相変わらず速い」
歩いているだけなのに素材が増えていく。
しかも《女神の加護》には《素材獲得量10倍》がある。
普通なら数本しか取れない場所でも、私の場合はまとまった数になる。
少し進む。
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《薬草》×30
《解毒草》×20
《魔力草》×30
《丈夫な蔓》×40
《山茸》×20
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「解毒草もある」
これは解毒薬の材料にできそうだ。
道具屋で買った解毒薬はまだ残っているけれど、自分でも作ってみたい。
インベントリに収納された一本を取り出して《鑑定》する。
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《解毒草》
分類:薬草
品質:普通
体内に入った毒素を弱める成分を持つ薬草。
解毒薬や毒耐性薬などの材料に利用される。
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「いい素材」
すぐに収納した。
もう少し歩くと、今度は見慣れない銀色の葉が目に入った。
「これは?」
《鑑定》。
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《銀露草》
分類:魔力植物
品質:普通
葉の表面に魔力を含んだ露を生成する植物。
魔力回復薬や魔力触媒の材料として利用される。
比較的涼しく、
魔力濃度の高い場所に群生する。
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「魔力回復薬」
欲しい。
そう思った瞬間には《自動収集》が反応していた。
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《銀露草》×40
入手
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「……便利すぎる」
でも嬉しい。
LGOでは、珍しい素材を見つけても一つずつ採取しなければならない場所も多かった。
今は見つけて範囲へ入ればどんどん集まる。
素材集めが止まらなくなりそうだ。
◇◇◇
丘を一つ越えたところで、足元の岩肌に赤茶色の筋が走っているのを見つけた。
「鉱石?」
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《鉄鉱石》
品質:普通
鉄を多く含む一般的な鉱石。
武器、防具、工具、
建築資材など幅広く利用される。
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「見つけた」
《採掘Lv10》を意識する。
同時に《自動収集》が発動した。
岩肌の一部が淡く光り、採取可能な鉱石だけが綺麗に分離して《インベントリ》へ収納されていく。
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《鉄鉱石》×90
入手
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「おお……」
つるはしを振るう必要すらなかった。
《採掘》と《自動収集》を組み合わせると、露出している鉱脈なら自動で採れるらしい。
「これは楽しい」
周辺を探す。
すぐに別の反応があった。
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《銅鉱石》×70
《鉄鉱石》×110
《魔晶砂》×50
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「魔晶砂?」
インベントリから少量だけ取り出してみる。
普通の砂より少し重い。
細かな粒の一つ一つに、淡い光が混じっていた。
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《魔晶砂》
分類:魔力鉱物
品質:普通
微細な魔力結晶を含む砂。
魔道具、
錬金触媒、
魔法陣用顔料などに利用される。
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「これも使えそう」
保存。
とりあえず今は何でも集める。
使い道は後から考えればいい。
《インベントリ》は容量無制限なのだから、持って帰れる量を気にする必要もない。
◇◇◇
素材を探しながら丘の斜面を進んでいると、《気配察知》に反応が入った。
「前方……三」
岩陰。
何かがいる。
鉄の剣を抜き、小盾を構える。
岩陰から出てきたのは、灰褐色の鱗に覆われた大型のトカゲだった。
体長は一メートルほど。
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《ロックリザード》
Lv8
種族:爬虫類系魔物
危険度:低
岩場や丘陵地帯に生息する魔物。
硬質な鱗で身体を守る。
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「初めて見る魔物」
LGOにも似た魔物はいたけれど、少し姿が違う。
三体のロックリザードがこちらを警戒している。
一体が大きく口を開き、飛び掛かってきた。
「速くはない」
昨日とは身体能力が全然違う。
Lv25。
《剣術Lv10》。
《身体強化Lv10》。
飛び掛かってくる動きが、かなりゆっくりに見えた。
半歩横へ移動。
鉄の剣を振る。
ガキンッ!
「硬い」
鱗に当たった剣から鈍い感触が返ってきた。
でも、止められたわけじゃない。
そのまま力を込める。
ザンッ!
刃が鱗を断ち、その下まで斬り込んだ。
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《ロックリザード》
討伐
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残る二体も動き出す。
一体は正面。
もう一体は右側。
「《身体強化》」
地面を蹴る。
正面の一体へ近づき、首元へ剣を振り下ろす。
一撃。
その勢いのまま身体を回し、右から迫ってきた個体へ小盾を叩きつけた。
ゴッ!
ロックリザードが地面を転がる。
「盾も使いやすい」
起き上がる前に剣を突き下ろした。
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《ロックリザード》
×3
討伐
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《自動収集》
発動
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《ロックリザードの鱗》
《ロックリザードの皮》
《ロックリザードの爪》
《ロックリザードの牙》
《ロックリザードの肉》
《ロックリザードの魔石》
ロックリザードの遺骸
収納完了
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「鱗」
気になる。
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《ロックリザードの鱗》
分類:魔物素材
品質:普通
硬度に優れた鱗。
革鎧や盾の補強材、
防具用錬金素材として利用される。
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「盾の補強に使えるんだ」
今使っている《鉄補強の木小盾》を見る。
普通の初心者用装備。
ロックリザードの鱗を貼り合わせれば、少し強化できるかもしれない。
「試してみようかな」
またやりたいことが増えた。
◇◇◇
それからも素材を集めながら丘陵を進んだ。
ロックリザード。
ホーンラビット。
小型のスライム。
時々、草原とは違う魔物も出てくる。
でもLv25まで上がった今の私には、それほど苦戦する相手はいなかった。
それよりも素材の方が気になる。
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《自動収集》
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《薬草》×60
《魔力草》×30
《止血草》×40
《解毒草》×20
《銀露草》×20
《山茸》×30
《食用茸》×40
《香草》×20
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《採掘》
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《鉄鉱石》×120
《銅鉱石》×90
《魔晶砂》×70
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「増える増える」
インベントリを見るのが楽しい。
その時だった。
《気配察知》ではない。
《自動収集》の範囲に、今までとは少し違う採取反応が入った。
「……何?」
斜面の上。
大きな岩がいくつも重なっている場所へ近づく。
太陽の光が岩の隙間へ差し込み、その奥で銀白色の何かが一瞬輝いた。
「あ」
駆け寄る。
岩の裂け目。
そこから半透明の銀白色の結晶が何本も伸びている。
内部には細い光の筋。
ゆらゆらと揺れながら、結晶の奥を巡っていた。
「アルケリウム……!」
今朝買った小さな欠片とは違う。
一つ一つが手のひらほどある。
さらに奥にも続いている。
「《鑑定》」
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《創晶石鉱脈》
規模:小規模
品質:普通~良質
自然に形成されたアルケリウム鉱脈。
周辺魔力を長期間吸収して成長する。
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「鉱脈!」
思わず声が弾んだ。
普通に流通している素材だとは聞いていた。
でも、自分で鉱脈を見つけるのは別だ。
「採れるかな」
《採掘Lv10》。
《自動収集Lv10》。
二つを意識する。
岩の隙間で光が広がった。
表面に露出していたアルケリウムが一本ずつ分離していく。
そのまま次々と《インベントリ》へ。
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《創晶石》
×80
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×140
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×230
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「まだある」
鉱脈の奥へ手を触れる。
魔力を感じる。
石の中に埋まった結晶の位置まで、何となく分かる。
《採掘》が補助してくれているらしい。
さらに回収する。
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《創晶石》
×320
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×470
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×610
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「六百十……」
今朝買った二十三個が一気に少なく感じる。
しかも。
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《良質な創晶石》
×18
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「良質もある」
一本取り出す。
普通品質より透明度が高く、銀白色の光も少し強い。
内部を揺れる光の筋も多かった。
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《良質な創晶石》
分類:魔力鉱物
品質:良質
通常品より高い魔力伝導性と
魔力蓄積性能を持つアルケリウム。
高品質な魔道具や装備、
錬金触媒に適している。
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「これは取っておこう」
もちろん普通品質も取っておく。
全部欲しい。
売るのは余った物だけでいい。
さらに鉱脈の一番奥。
大きな岩の下から、淡い銀白色の光が漏れている。
「まだある?」
周囲の小石を退ける。
そこにあったのは、今までの結晶とは比較にならないほど大きな塊だった。
「……大きい」
横幅は私の胴体よりもある。
半透明の銀白色。
内部では何本もの光の筋が交差し、ゆっくりと揺れている。
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《創晶石大結晶》
分類:魔力鉱物
品質:良質
長い年月をかけて成長した
大型のアルケリウム結晶。
通常の小結晶より多くの魔力を蓄積できる。
大型魔道具、
装備製作、
錬金触媒などに利用可能。
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「欲しい」
迷う理由がなかった。
《採掘》を発動する。
周囲の岩盤から大結晶だけを丁寧に切り離す。
一瞬、銀白色の光が強くなった。
そして。
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《創晶石大結晶》
×1
収納完了
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「やった」
思わず笑ってしまった。
別に伝説の素材ではない。
世界各地にある基幹資源。
それでも、自分で見つけた大きな結晶は特別に感じる。
「何作ろうかな」
魔道具。
装備。
錬金設備。
加工して小さくすることもできる。
いや。
「最初はこのまま取っておこう」
せっかくの大結晶。
すぐに使うのは少しもったいない。
◇◇◇
気がつけば、太陽が西へ傾き始めていた。
「……危ない」
素材に夢中になって時間を忘れていた。
ガレスさんにも、奥へ行きすぎるなと言われている。
今日はここまで。
帰る前にインベントリを確認する。
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《本日の主な採取物》
《薬草》×340
《魔力草》×180
《止血草》×210
《解毒草》×90
《銀露草》×60
《食用野草》×260
《香草》×120
《山苺》×170
《山茸》×120
《食用茸》×140
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《鉄鉱石》×480
《銅鉱石》×350
《魔晶砂》×220
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《創晶石》×610
《良質な創晶石》×18
《創晶石大結晶》×1
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「……いっぱい」
かなり満足。
そして魔物素材。
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《討伐》
《ロックリザード》×18
《ホーンラビット》×14
《ブルースライム》×9
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ドロップ品と遺骸もすべて収納済み。
ロックリザードからは、二つだけ珍しい物も出ていた。
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《レアドロップ》
《岩甲核》×2
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《鑑定》。
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《岩甲核》
分類:魔物素材
品質:希少
硬質な魔力を凝縮した特殊素材。
盾や鎧へ加工することで、
防御力と耐衝撃性能を高められる。
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「これ、使える」
今の革鎧。
木小盾。
ロックリザードの鱗。
岩甲核。
アルケリウム。
組み合わせれば、今より強い装備にできるかもしれない。
頭の中にいくつも案が浮かんでくる。
「早く帰ろう」
今度は別の意味で足が速くなった。
◇◇◇
夕方。
西門から王都へ戻り、そのまま錬金術師ギルドへ向かった。
「お帰り」
受付近くにいたガレスさんがこちらを見た。
「どうだった?」
「いっぱい取れました」
「ほう。初めてなら上出来だな」
「見ます?」
「もちろんだ」
素材の納品場所へ移動する。
まず薬草類。
続いて鉄鉱石。
銅鉱石。
魔晶砂。
「待て」
「はい?」
「多くないか?」
「《自動収集》が便利だったので」
「そういう問題か?」
さらに《創晶石》を出す。
全部は売らない。
普通品質の中から一部だけ。
それでも作業台の上に銀白色の結晶がどんどん積み上がっていく。
内部を揺れる無数の光の筋が重なり、周囲が淡く照らされた。
「……何個採った?」
「普通品質が六百十個です」
「今日だけで?」
「はい」
「良質も十八個あります」
「待て待て」
「大結晶も一個」
「まだあるのか?」
私は《インベントリ》から大結晶を取り出した。
ドンッ。
作業台の上へ置く。
半透明の銀白色。
内部では何本もの光の筋がゆっくりと揺れている。
周囲の錬金術師たちまで振り返った。
「……これはなかなか立派だな」
「使えそうですか?」
「十分使える。売るのか?」
「これは売りません」
「即答だな」
「何か作りたいので」
ガレスさんが笑う。
「なるほど。やっぱりお前は錬金術師だな」
「最初からそう言ってます」
「昨日二百四十体狩ったと聞いたからな」
「素材のためです」
「それも含めて、か」
私は大結晶を《インベントリ》へ戻した。
売るのは普通品質の薬草や鉱石の一部だけ。
良質素材。
銀露草。
岩甲核。
アルケリウム。
それらは全部残しておく。
使いたい素材が、一日で一気に増えた。
明日は何を作ろう。
ポーション?
盾の強化?
革鎧?
それともアルケリウムを使った、新しい魔道具?
考えるだけで楽しくなる。
五百年後の世界に来て、まだほんの数日。
それなのに、私の《インベントリ》には見たことのない素材が少しずつ増え始めている。
「……やっぱり来てよかった」
小さく呟く。
きっとこの世界には、今日見つけたものなんて比べ物にならない素材がまだ眠っている。
なら。
全部、自分の目で見てみたい。
そして。
できるだけたくさん集めたい。
私の異世界での楽しみが、また一つ増えていた。




