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第四十話 赤鋼鬼王と剣聖



 赤石丘陵の北側。


 街道へ向かっていた《赤鋼鬼王》が、巨大な大剣を肩から下ろした。


 高さだけでも普通の赤鋼鬼とは比べものにならない。赤黒い肉体を覆う《王鋼鬼殻》は分厚い全身鎧のようで、胸や肩には幾重にも硬質な装甲が重なっている。


 その巨体から放たれる威圧感も、さっきまで戦っていた八体とは別物だった。


━━━━━━━━━━


赤鋼鬼王クリムゾン・スティールオーガキング


Lv112


危険度:


S(ランク)


分類:


上位王種


━━━━━━━━━━


 私は二振りの《双耀聖剣》を構える。


「まず街道から離すんだよね」


『ああ。あのまま南下される方が厄介だ』


 アルは《剛魔城塞大楯》を前に出した。


 今日は岩王装備ではなく、普段使いの《剛魔鋼》装備。万能型とはいえ、S(ランク)相手に正面を任せる以上、油断はできない。


「ノルンは右。ヴァルカは上から牽制して」


「ウォン!」


「グオオッ!」


『リリスはどうする?』


「近接」


『そう言うと思った』


「《剣聖》まであと少しだから」


『分かっている。ただし、技能のために攻撃を受けるなよ』


「そこまでしないよ」


『ならいい』


 信用が微妙な気がする。


◇◇◇


「グオォォォォォォォォッ!!」


 赤鋼鬼王が咆哮した。


 次の瞬間、巨体が踏み込む。


「速い!」


 何十トンあるのか分からない身体が、一気に加速した。


 最初に狙われたのはアル。


『来い!』


 大楯を正面へ。


━━━━━━━━━━


《大楯固定》


━━━━━━━━━━


 鬼王の巨大な大剣が横薙ぎに振るわれる。


 ガァァァァンッ!!


 金属同士を叩きつけたような爆音が丘陵へ響いた。


『くっ……!』


 アルの両脚が地面を削り、数メートル後退する。


「アル!」


『問題ない! だが重い!』


「グオォッ!」


 赤鋼鬼王がさらに踏み込み、大剣を振り上げる。


 今度は上段。


「させない」


 私は右側から一気に距離を詰めた。


「《疾風加速ゲイル・アクセル》」


 風を纏う。


 加速。


 鬼王の大剣が振り下ろされるより先に、その右脚へ入った。


「《装甲断ち》!」


 右剣。


 ザァンッ!


 硬い。


 分厚い《王鋼鬼殻》へ刃が食い込み、表面を大きく削る。


 でも、切断までは届かない。


「グォッ!」


 鬼王が私へ蹴りを放つ。


「《見切り》」


 後ろへ跳ぶ。


 巨大な脚が目の前を通過し、地面を蹴り砕いた。


「やっぱりSランク」


『今ので分かったのか!?』


「硬さ」


『そういう意味か!』


◇◇◇


「ウォォォン!」


 右側からノルン。


━━━━━━━━━━


《白銀疾駆》


━━━━━━━━━━


 鬼王の視線が一瞬動く。


 そこへ。


━━━━━━━━━━


《銀嵐刃》


━━━━━━━━━━


 白銀の風刃が左腕へ走った。


 ガギィンッ!


「グォォッ!」


 表面に傷。


 浅い。


「ウォフ……」


「硬いよね」


「グオオオオッ!」


 上空からヴァルカ。


━━━━━━━━━━


《緋炎竜息》


━━━━━━━━━━


 真紅の炎が鬼王の頭上から降り注ぐ。


「グオォォォォッ!」


 鬼王は左腕で顔を覆いながら、大剣を上空へ振った。


━━━━━━━━━━


《衝撃波斬》


━━━━━━━━━━


 赤い斬撃。


 巨大。


「ヴァルカ!」


「グオッ!」


 ヴァルカは翼を畳み、急降下。


 斬撃が頭上を通過する。


 そのまま地面すれすれで翼を開き、鬼王の背後を抜けた。


「グルァァッ!」


 尻尾。


 横。


 ドガァンッ!


 鬼王の膝裏へ直撃する。


「グォッ!?」


 巨体がわずかに傾いた。


『今だ!』


 アルが大楯を押し出しながら突進。


━━━━━━━━━━


《盾打撃》


━━━━━━━━━━


 ドゴォンッ!


 鬼王の正面。


 さらに。


 大戦斧。


『《重斬撃》!』


 ズガァァンッ!


 肩の《王鋼鬼殻》へ深い亀裂が入る。


「開いた」


 私は即座に踏み込む。


「《瞬閃》!」


 銀白色の剣閃。


 アルが作った亀裂へ正確に入る。


 ザシュッ!


「グオォォォォォッ!」


 今度は。


 通った。


◇◇◇


 鬼王。


 怒る。


 赤い魔力が一気に噴き上がった。


━━━━━━━━━━


《闘気爆発》


━━━━━━━━━━


『離れろ!』


「うん!」


 飛び退く。


 直後。


 ドォォォォンッ!


 鬼王を中心に赤い衝撃波が爆発した。


 地面の岩が吹き飛ぶ。


 私は二剣を交差。


「《金剛障壁アダマン・バリア》!」


 透明な魔力障壁。


 衝撃。


 受ける。


 ズザザザッ!


「強い」


 障壁。


 割れてはいない。


 でも。


 かなり押された。


『リリス!』


「大丈夫!」


 視線を戻す。


 鬼王。


 さらに。


━━━━━━━━━━


《赤鋼硬化》


━━━━━━━━━━


 赤黒い装甲。


 増す。


 先ほど入れた傷まで、硬質化した皮膚が覆い始める。


「再生もある」


『長引かせると面倒だな』


「じゃあ崩す」


『どうする?』


「剣で」


『そこは変わらんのか!』


◇◇◇


 私は二本の聖剣へ魔力を流した。


 右。


 光。


 左。


 風。


「《属性剣》」


 鬼王が走る。


 真正面。


 大剣。


 一撃。


「《双剣受流し》!」


 右剣。


 左剣。


 大剣の刃へ同時に触れる。


 力を受けるんじゃない。


 流す。


 ガギギギギィィンッ!


 腕に。


 重い衝撃。


 でも。


「行ける」


 軌道を逸らす。


 巨大な大剣が私の左側へ落ち、地面を割った。


 その瞬間。


 懐。


「《双剣連撃》!」


 右。


 左。


 右。


 左。


 肩。


 胸。


 脇腹。


 腕。


 光の剣で硬質化を削り、風の剣で傷口へ斬り込む。


「グォォォォッ!」


 鬼王。


 拳。


 来る。


 身体を沈める。


 頭上。


 拳が通る。


「《反月》!」


 左剣。


 下から。


 ザァンッ!


 肘の装甲。


 切る。


 続けて。


「《高速斬撃》!」


 右剣。


 五閃。


 同じ一点。


 ザザザザザッ!


 亀裂。


 増える。


「《剛断》!」


 最後。


 二剣。


 重ねるように叩き込む。


 ズバァンッ!


「グオォッ!?」


 右腕の《王鋼鬼殻》が大きく砕けた。


━━━━━━━━━━


《剣聖》


実戦条件進行:


限界到達


━━━━━━━━━━


「……!」


『どうした!?』


「来た」


 表示。


 続く。


━━━━━━━━━━


《剣術系統》


実戦・技量条件


達成


━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━


《上級剣術》


《上級二刀流》


《双剣術》


《見切り》


《受流し》


《カウンター》


《装甲断ち》


《魔力斬撃》


《属性剣》


《剣撃限界突破》


関連条件達成


━━━━━━━━━━


 金色。


 見覚えのある。


 弓聖を取った時と。


 同じ光。


━━━━━━━━━━


特殊技能解放


《剣聖》


━━━━━━━━━━


「取れた!」


『本当か!?』


「うん!」


━━━━━━━━━━


《剣聖》


習得完了


━━━━━━━━━━


 その瞬間。


 変わった。


 握っている剣。


 重さ。


 刃。


 間合い。


 自分の手の延長みたいに。


 自然に分かる。


 鬼王の大剣。


 肩。


 腰。


 視線。


 全部。


 次の動きが。


 さっきより。


 はっきり見える。


「……すごい」


『感想はあとだ! 来るぞ!』


「あ」


 鬼王。


 大剣。


 横薙ぎ。


 でも。


「遅く見える」


 一歩。


 前。


 普通なら避ける方向と。


 逆。


 大剣の内側へ。


 刃が。


 背中のすぐ後ろを通過する。


「ここ」


 右剣。


「《一閃》」


 ただの。


 基本戦技。


 でも。


 剣聖。


 取得後。


 初めて。


 振る。


 シュンッ。


「……?」


 音。


 小さい。


 一瞬遅れて。


 鬼王の胸。


 分厚い《王鋼鬼殻》に。


 斜め。


 大きな。


 裂け目。


 ズバァァァンッ!


「グオォォォォォッ!?」


「威力上がってる」


『今ので《一閃》なのか!?』


「うん」


『お前の基本技がおかしくなったぞ!』


◇◇◇


 表示。


━━━━━━━━━━


《剣聖》


分類:


聖級剣技能


━━━━━━━━━━


効果:


《剣術総合補正・聖級》


《斬撃威力超強化》


《剣撃速度超強化》


《剣撃精度超強化》


《間合認識超強化》


《受流し性能超強化》


《見切り性能超強化》


《反撃補正超強化》


《装甲斬断補正》


《魔力剣撃制御超強化》


《剣戦技成長補正》


━━━━━━━━━━


 さらに。


━━━━━━━━━━


《聖級戦技習得条件》


解放


━━━━━━━━━━


上位段階:


《剣王》


━━━━━━━━━━


習得条件:


未達成


《剣聖》熟練不足


━━━━━━━━━━


「剣王も出た」


『今は鬼王を見ろ!』


「分かってる」


 本当に。


 アルの言う通り。


 今は。


 目の前。


◇◇◇


「グオォォォォォォッ!!」


 赤鋼鬼王。


 完全に怒った。


 両手。


 大剣。


 持つ。


 赤い魔力。


 最大。


━━━━━━━━━━


《大剣豪撃》


━━━━━━━━━━


 来る。


『私が受ける!』


「待って」


 アルが動くより。


 先。


「私やる」


『正面からか!?』


「受けない」


 大剣。


 振り下ろされる。


 私は。


 二本の聖剣。


 構え。


 重ねる。


「《見切り》」


 刃。


 軌道。


 完全。


 把握。


 そして。


「《受流し》」


 キィィィィィィンッ――!


 真正面から。


 止めない。


 ほんの。


 少し。


 角度。


 変える。


 鬼王の最大斬撃。


 私の右側。


 地面。


 ドゴォォォォォォンッ!


 巨大な亀裂が一直線に走った。


『……今のを流したのか』


「うん」


 鬼王。


 大剣。


 地面。


 刺さる。


 腕。


 伸び切る。


「隙」


 右剣。


 光。


 左剣。


 風。


「《双剣連撃》」


 今までより。


 速い。


 銀白。


 淡緑。


 何本もの線。


 胸。


 肩。


 腕。


 腹。


 脚。


 ザザザザザザザザザザンッ!


「グオォォォォッ!」


 王鋼鬼殻。


 次々。


 割れる。


『速すぎる!』


「剣聖すごい」


『戦いながら感心するな!』


◇◇◇


 鬼王。


 大剣。


 引き抜く。


 でも。


「ウォォォン!」


 ノルン。


━━━━━━━━━━


《銀狼咆哮》


━━━━━━━━━━


 空気が震え、鬼王の動きが一瞬止まる。


 上。


「グオオオッ!」


 ヴァルカ。


━━━━━━━━━━


《急降下突撃》


━━━━━━━━━━


 ズドォォォンッ!


 背部。


 直撃。


 鬼王。


 片膝。


 つく。


『リリス!』


「うん」


 アル。


 前。


 大楯。


 そのまま。


━━━━━━━━━━


《盾打撃》


━━━━━━━━━━


 ドガァンッ!


 鬼王の大剣。


 腕。


 弾く。


『決めろ!』


「任せて」


 聖剣。


 左右。


 魔力。


 集中。


 剣聖になって。


 今なら。


 もっと。


 できる。


「《魔力圧縮》」


 右。


 光。


 左。


 風。


 二つの属性は混ぜない。


 それぞれ。


 最大。


 高める。


 鬼王の胸。


 すでに。


 装甲。


 割れている。


 弱点。


 見える。


「《弱点看破》」


 心臓。


 そこ。


「《瞬閃》」


 一歩。


 消えるように。


 踏み込む。


 右。


 ザンッ!


 左。


 ザンッ!


 二閃。


 交差。


 そのまま。


 背後へ抜ける。


 静か。


 一瞬。


「グ……オ……」


 赤鋼鬼王。


 胸。


 巨大な十字。


 走る。


 次の瞬間。


 ズバァァァァンッ!


 魔力。


 内部。


 炸裂。


「グオォォォォォォ……!」


 巨体。


 前。


 倒れる。


 ドォォォォンッ!


 赤石丘陵。


 地面。


 揺れる。


━━━━━━━━━━


赤鋼鬼王クリムゾン・スティールオーガキング


討伐完了


━━━━━━━━━━


「やった」


『ああ!』


「ウォォォン!」


「グオオオッ!」


◇◇◇


 私は聖剣を見る。


 弓聖。


 そして。


 剣聖。


━━━━━━━━━━


《弓聖》


習得済


━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━


《剣聖》


習得済


━━━━━━━━━━


「両方取れた」


『本当に取ったな』


「うん」


『欲張りを実現する奴は初めて見た』


「次は弓王と剣王」


『少しは聖級を楽しめ!』


「熟練足りないからまだ無理」


『だからそういう問題ではない!』


 アル。


 今日も元気。


◇◇◇


 その時。


 経験値。


━━━━━━━━━━


《パーティー経験値共有》


対象:


リリス


アルドラ


ノルン


ヴァルカ


━━━━━━━━━━


 S(ランク)


 Lv112。


 上位王種。


 大きい。


━━━━━━━━━━


リリス・ルクスヴィア


Lv113



Lv116


━━━━━━━━━━


「三つ上がった」


『三つ!?』


「十倍」


『分かっていてもすごいな……』


━━━━━━━━━━


アルドラ・ヴァルグレイヴ


Lv91



Lv92


━━━━━━━━━━


『私も一つ上がった』


「おめでとう」


『ありがとう』


━━━━━━━━━━


ヴァルカ


Lv94



Lv95


━━━━━━━━━━


「グオオッ!」


「ヴァルカも」


 ノルンにも。


 共有経験値。


 ちゃんと入っている。


「みんな育つね」


『Sランクを相手にすればな』


「また探す?」


『今は探すな』


「冗談」


『間が短かったから本当に冗談だな』


 判定方法。


 そこなんだ。


◇◇◇


 《自動収集》。


 発動。


━━━━━━━━━━


《赤鋼鬼王の王鋼鬼殻》×100


《赤鋼鬼王の王角》×30


《赤鋼鬼王の剛牙》×40


《赤鋼鬼王の大剣》×10


《赤鋼鬼王の王血》×50


《赤鋼鬼王の魔石》×10


━━━━━━━━━━


希少素材:


《鬼王赤鋼核》×1


品質:


逸話級(エピック)


━━━━━━━━━━


「王鋼鬼殻」


『作るなよ』


「まだ何も言ってない」


『さすがに分かるようになってきた』


「何か作れそう」


『やっぱり言った!』


 さらに。


━━━━━━━━━━


宝箱生成


━━━━━━━━━━


《白金宝箱》×1


━━━━━━━━━━


「白金」


『Sランクの上位王種だからな』


「開けたい」


『宿で』


「分かってる」


『本当に?』


「最近ちゃんと宿で開けてる」


『それはそうだな』


「成長」


『そこは認める』


 今日は。


 素直に褒められた。


◇◇◇


 少し休んでから、街道周辺を確認する。


 他に大型反応。


 なし。


 赤鋼鬼王が向かっていた方向も。


 やっぱり。


 街道。


「先に見つけられてよかった」


『ああ。あれが街道へ出れば、普通の護衛隊では厳しかっただろう』


「じゃあ倒して正解」


『今回はな』


「今回は?」


『今後もSランクを見つけたら全部戦う、という意味ではないぞ』


「分かってる」


『ならいい』


「たぶん」


『撤回しろ!』


◇◇◇


 昼。


 帰る前。


「お腹空いた」


『朝、おにぎりを食べて宿の朝食も食べただろう』


「もうお昼」


『……確かに』


 大きな岩。


 日陰。


 座る。


 《インベントリ》。


「おにぎり」


『さっそく役に立ったな』


「でしょ?」


 作りたて。


 そのまま。


 温かい。


「アル何味?」


『甘辛肉』


「好きだね」


『うまかったからな』


「私は焼魚」


 ノルン。


 こっち。


 見る。


「ウォン」


「おにぎりはダメ」


「ウォフ……」


「お肉あるよ」


「ウォン!」


 復活。


 早い。


 ヴァルカにも。


 大量。


 焼いた肉。


 出す。


「グオオッ!」


『結局お前が一番準備がいいな』


「食材いっぱい買っててよかった」


『今まで料理しなかったのが不思議なくらいだ』


「これから作る」


『それは楽しみだ』


「今度カレー」


『昨日言っていた料理か』


「うん」


『期待している』


◇◇◇


 白米。


 魚。


 海苔みたいな乾燥食材。


 一緒。


「おいしい」


『こっちもだ』


 アル。


 甘辛肉。


 もう。


 半分。


 ない。


「早い」


『戦ったから腹が減った』


「もう一個いる?」


『頼む』


「何味?」


『焼肉』


「はい」


 おにぎり。


 二個目。


「百個作って正解」


『……』


「アル?」


『今回は何も言えん』


「勝った」


『何と戦っているんだ』


 食事。


 平和。


 さっきまで。


 Sランクと戦っていたのに。


 こういう時間。


 好き。


◇◇◇


 夕方。


 王都冒険者ギルド。


 エレナさんの受付へ。


「ただいま」


「お帰りなさい。依頼は――」


「達成しました」


「よかったです」


「赤鋼鬼八体」


「八体ですね。確認数以上ですので問題ありません」


「あと」


「……」


 エレナさん。


 止まる。


「まだ言ってない」


「その“あと”で嫌な予感がしました」


「《赤鋼鬼王》」


「…………」


「Lv112」


「…………」


「S(ランク)


 エレナさん。


 静かに。


 アルを見る。


「アルドラさん」


「すまない」


「なぜアルが謝るの?」


「一応止める側だからだ」


「……戦闘理由を聞いても?」


「街道へ向かっていたので、アルと相談して迎撃しました」


 エレナさんの表情。


 少し。


 変わる。


「街道へ?」


「うん」


「それなら……判断としては間違っていません」


「よかった」


「ただし!」


「はい」


「Sランクです! 無事だったからよかったものの、本来なら緊急討伐隊を編成する相手なんですよ!」


「でも倒せました」


「結果論です!」


 その通り。


 たぶん。


◇◇◇


「それと」


「まだあるんですか?」


「《剣聖》取れました」


「…………」


「エレナさん?」


「今日はもう驚かないことにします」


「弓聖と剣聖、両方」


「聞こえています!」


 驚いてた。


『無理だったようだな』


「うん」


「二人とも聞こえてますからね!」


 王都冒険者ギルド。


 今日も。


 エレナさんの声が。


 よく響いていた。

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