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第三十八話 上級料理と炊きたての白米



「お昼食べよう」


『急に日常へ戻ったな』


「お腹空いた」


『お前、食べなくても平気なんじゃなかったか?』


「食べたいのは別」


『……それもそうか』


「お肉あるよ」


『行こう』


「即答」


 《弓聖》を取得した直後。


 私たちは荒野の一角で休憩することにした。


 ノルン。


 ヴァルカ。


 アル。


 そして私。


 ちょうどいい岩陰を見つける。


「さて」


 《インベントリ》。


 開く。


 食料。


 いっぱい。


 本当に。


 いっぱい。


 肉。


 野菜。


 茸。


 果物。


 調味料。


 保存食。


 飲み物。


 そして。


「白米」


『米まで持っているのか』


「いっぱい買ってある」


『……そういえば、お前は食材を大量に持っていると言っていたな』


「うん」


『だが』


「何?」


『お前が料理しているところ、一度も見たことがない』


「……」


 言われて。


 止まる。


「確かに」


『気づいてなかったのか!?』


「宿でご飯出るから」


『まあ、それはそうだが』


 《銀の月亭》の食事。


 美味しい。


 朝も。


 夜も。


 普通に満足していた。


 パンの日もある。


 白米の日もある。


 肉料理。


 魚料理。


 スープ。


 煮込み。


 色々。


 だから。


 わざわざ自分で作る必要がなかった。


 でも。


「料理スキル持ってた気がする」


『気がする?』


「確認する」


 スキル一覧。


 検索。


━━━━━━━━━━


《料理》Lv10


━━━━━━━━━━


「あった」


『持っていたことすら忘れていたのか』


「いっぱいあるから」


『便利な言い訳だな』


「でも料理Lv10」


『なら作れるんじゃないか?』


「作れると思う」


 でも。


 今の私。


 錬金術。


 上位スキル。


 装備製作。


 弓。


 魔法。


 色々。


 かなり増えている。


 なのに。


 料理だけ。


 最初の《料理》Lv10のまま。


「……ちょっと気になる」


『何がだ?』


「料理も上位あるかな」


『探す気だな』


「うん」


『昼飯はいつになる?』


「すぐ」


『本当か?』


「たぶん」


『その言葉が出たぞ!』


◇◇◇


 検索。


 料理。


 調理。


 食材。


 すると。


 出た。


━━━━━━━━━━


料理系上位技能


《上級料理》


《食材鑑定》


《食材下処理》


《高速調理》


《魔力調理》


《保存調理》


《調味調合》


《炊飯》


《火加減制御》


《料理品質向上》


━━━━━━━━━━


「いっぱいある」


『全部取る顔をしている』


「顔見えてる?」


『今は兜を脱いでいる』


「あ」


 今日は逃げられない。


「全部取る」


『やはりか』


 取得。


 続けて。


 強化。


━━━━━━━━━━


新規技能習得


《上級料理》Lv10


《食材鑑定》Lv10


《食材下処理》Lv10


《高速調理》Lv10


《魔力調理》Lv10


《保存調理》Lv10


《調味調合》Lv10


《炊飯》Lv10


《火加減制御》Lv10


《料理品質向上》Lv10


━━━━━━━━━━


「完成」


『何がだ』


「料理人」


『今、技能を取っただけだろう!』


「神級錬金術師兼弓聖兼料理人」


『肩書きが迷子になってきたな』


「まだ増える」


『増やすなとは言わんが、せめて昼飯を作ってからにしてくれ』


「分かった」


 アル。


 お腹空いてるみたい。


◇◇◇


 まず。


 調理道具。


 インベントリから取り出す。


 鍋。


 鉄板。


 包丁。


 まな板。


 器。


 炊飯用の厚手の鍋。


 買ったまま。


 ほとんど使っていなかった。


『本当に一式持っているんだな』


「買ったから」


『なぜ今まで使わなかった』


「宿のご飯美味しい」


『それを言われると何も言えんな』


 確かに。


◇◇◇


「今日は何食べる?」


『肉』


「知ってた」


「ウォン!」


「グオッ!」


「二匹も肉」


『見事に肉食組だな』


「私も肉」


『お前もか』


「でも白米も食べたい」


『では米と肉でいいだろう』


「決定」


 シンプル。


 でも。


 こういうのでいい。


◇◇◇


 白米。


 取り出す。


 真っ白。


 粒。


 綺麗。


「《食材鑑定》」


━━━━━━━━━━


《白米》


品質:良質


状態:良好


推奨調理:


《炊飯》


水分量・加熱時間:


自動補正可能


━━━━━━━━━━


「便利」


『料理でまで表示が出るのか』


「スキルだからね」


 米を洗う。


 水。


 鍋。


 そして。


「《炊飯》」


 技能。


 発動。


 水分量。


 火力。


 加熱。


 蒸らし。


 感覚で分かる。


「……すご」


『どうした?』


「米が何考えてるか分かる」


『米は考えないぞ』


「今ここで弱火」


『聞いているか?』


「もう少し」


『リリス?』


「今触らないで」


『妙なところで真剣だな!』


◇◇◇


 次。


 肉。


 今日は。


 インベントリに大量にあった。


━━━━━━━━━━


《大角牛の上質肉》


━━━━━━━━━━


「これ」


『いい肉じゃないか』


「いっぱいある」


『その言葉を聞くたびに量が怖くなる』


 肉。


 厚め。


 切る。


「《食材下処理》」


 筋。


 余分な部分。


 すぐ分かる。


 包丁。


 スッ。


 スッ。


「おお」


『……手際が突然料理人になったな』


「スキルすごい」


 塩。


 香草。


 少量の香辛料。


 さらに。


 王都で買ってあった濃い発酵調味料。


 少し甘みのある調味料。


「混ぜる」


「《調味調合》」


━━━━━━━━━━


《甘辛肉だれ》


調合成功


品質:高品質


━━━━━━━━━━


「高品質」


『たれに品質表示があるのか……』


「ゲームみたい」


『この世界で言われても分からん』


「あ」


 アルには伝わらなかった。


◇◇◇


 玉ねぎ。


 似た香味野菜。


 茸。


 切る。


 鉄板。


「《火加減制御》」


 ジュウゥゥゥッ!


 肉。


 焼く。


「……いい匂い」


『おお』


「ウォン!」


「グオオッ!」


 反応。


 速い。


「まだ」


「ウォン……」


「グル……」


「そんな顔してもまだ」


『二匹とも分かりやすいな』


 肉。


 表面。


 焼き色。


 中。


 火を通しすぎない。


 野菜。


 追加。


 茸。


 追加。


 最後。


 たれ。


 ジュワァァァッ!


 香り。


 一気に。


 広がる。


『……リリス』


「何?」


『早くしてくれ』


「アルも同じ顔してる」


『兜は外しているが、そこまで分かりやすいか?』


「かなり」


『……仕方ないだろう。この匂いは反則だ』


 分かる。


 私も。


 お腹空いた。


◇◇◇


 そして。


 鍋。


 蓋。


 開く。


 ふわっ。


 白い湯気。


「おお……」


 白米。


 炊けた。


 一粒一粒。


 つやつや。


 ふっくら。


「成功」


━━━━━━━━━━


《炊きたて白米》


品質:


高品質


料理補正:


《食感向上》


《香味向上》


《消化補助》


━━━━━━━━━━


『普通の米が高品質料理になっているぞ』


「《料理品質向上》かな」


『恐ろしい技能だな』


「毒矢より平和」


『比較対象がおかしい』


◇◇◇


 さらに。


 野菜。


 茸。


 少量の肉。


 鍋。


「スープも」


『まだ作るのか?』


「ご飯と肉だけだと寂しい」


『……なるほど』


 塩。


 香草。


 少し煮込む。


「《高速調理》」


 ただ。


 一瞬で完成。


 ではない。


 火。


 香り。


 煮え方。


 必要な工程を。


 かなり短くできる。


「便利」


━━━━━━━━━━


《肉と茸の野菜スープ》


品質:


高品質


━━━━━━━━━━


「完成」


◇◇◇


 今日のお昼。


━━━━━━━━━━


《炊きたて白米》


《大角牛肉と野菜の甘辛焼き》


《肉と茸の野菜スープ》


━━━━━━━━━━


「いただきます」


『いただこう』


「ウォン!」


「グオオッ!」


 ノルンとヴァルカ。


 味の濃い調味料は避けて。


 別に焼いた肉。


 大量。


 置く。


「待て」


「ウォン」


「よし」


 ガツガツガツガツ。


「グオオッ!」


 ヴァルカも。


 食べる。


『……あの二匹は早いな』


「いつものこと」


◇◇◇


 私は。


 白米。


 一口。


「……」


『どうだ?』


「美味しい」


 ちゃんと。


 白米。


 ふっくら。


 甘い。


 久しぶりに自分で炊いた。


 というか。


 こっちの世界では。


 初めて。


「お肉」


 甘辛。


 濃い。


 白米。


 一緒。


「……合う」


『私も食べていいか?』


「もちろん」


 アル。


 白米。


 肉。


 一緒。


『……うまい』


「でしょ?」


『ああ。これはかなりいい』


 もう一口。


『米に合うように味を少し濃くしてあるのか?』


「たぶん《調味調合》が勝手に補正した」


『たぶんで高品質料理を作るな』


「美味しければいい」


『それはそうだ』


 アル。


 食べる。


 速くなる。


「気に入った?」


『かなり』


「また作る」


『ぜひ頼む』


「即答」


『これは即答する』


◇◇◇


 スープ。


 飲む。


 優しい味。


 肉。


 茸。


 野菜。


 ちゃんと。


 全部。


 味が出ている。


「料理スキルいいね」


『今まで使わなかったのが勿体ないな』


「確かに」


 これなら。


 野営。


 休憩。


 旅。


 どこでも。


 ちゃんとした料理。


 作れる。


「今度カレーとか作れるかな」


『カレー?』


「あ」


 また。


 知らない。


「香辛料を使った煮込み料理」


『うまいのか?』


「美味しい」


『なら作ってくれ』


「分かった」


 アル。


 食べ物への対応。


 かなり素直。


◇◇◇


 食後。


「ごちそうさま」


『ごちそうさま』


「ウォン!」


「グオオッ!」


 全部。


 完食。


 ノルン。


 皿を見る。


「もう食べたでしょ」


「ウォン」


「まだ欲しい?」


「ウォン!」


 ヴァルカも。


「グオッ!」


「二匹とも?」


『お前が高品質の肉を作るからだ』


「普通に焼いただけ」


『料理技能十種類を使って普通と言うな』


「じゃあちょっと特別」


『それなら分かる』


 追加。


 肉。


 焼く。


 ノルン。


 ヴァルカ。


 満足。


◇◇◇


 帰り。


 王都。


 《銀の月亭》。


 夕方。


 食堂へ入る。


 今日の夕食。


 香ばしい匂い。


「お」


 卓上。


 白米。


 普通にある。


 肉と根菜の煮込み。


 焼き魚。


 野菜。


 汁物。


「今日はご飯」


『昼も食べただろう』


「夜も食べる」


『好きなんだな』


「うん」


 《銀の月亭》では。


 パンだけじゃない。


 米の日も。


 普通にある。


 だから。


 自分で料理するようになっても。


 宿のご飯。


 やめるつもりはない。


「ここのご飯も好き」


『昼に自分で作った料理と比べてどうだ?』


「別」


『別?』


「自分で作るのも美味しい。人に作ってもらうのも美味しい」


『……なるほど』


「両方食べればいい」


『欲張りだな』


「食べ物くらい欲張っていい」


『そこは同意する』


◇◇◇


 白米。


 一口。


「美味しい」


『昼にも聞いたぞ』


「美味しいから」


 煮込み。


 ご飯。


 汁物。


 魚。


 交互。


 食べる。


 満足。


「明日も料理しようかな」


『訓練は?』


「する」


『剣聖は?』


「目指す」


『依頼は?』


「受ける」


『料理は?』


「する」


『全部やるのか』


「うん」


『……本当に欲張りだな』


「取れるなら取る」


『それ、技能以外にも使うんだな』


「便利」


 アル。


 笑う。


◇◇◇


 夜。


 自室。


 料理系技能。


 もう一度。


 確認。


━━━━━━━━━━


《料理》Lv10


《上級料理》Lv10


《食材鑑定》Lv10


《食材下処理》Lv10


《高速調理》Lv10


《魔力調理》Lv10


《保存調理》Lv10


《調味調合》Lv10


《炊飯》Lv10


《火加減制御》Lv10


《料理品質向上》Lv10


━━━━━━━━━━


「いっぱい増えた」


 料理。


 今まで。


 ほとんど使っていなかった。


 でも。


 冒険者なら。


 外で食べることも多い。


 食材も。


 大量にある。


 白米も。


 まだいっぱいある。


「使わないともったいない」


 錬金術。


 装備。


 弓。


 剣。


 魔法。


 そして。


 料理。


 やれること。


 また。


 一つ増えた。


 というか。


 元からできたのに。


 今までやってなかった。


「明日の朝……」


 考える。


「おにぎり」


 いい。


 旅にも。


 持って行ける。


 インベントリなら。


 握りたてのまま。


 保存できる。


「いっぱい作ろう」


 その瞬間。


 隣の部屋から。


『“いっぱい”って何個だ!?』


「アル?」


『壁越しでも聞こえた!』


「百個くらい?」


『料理まで数がおかしいぞ!』


「保存できるし」


『そういう問題では――』


 少し。


 間。


『……いや、保存できるなら便利か』


「でしょ?」


『私の分も頼む』


「何個?」


『五個』


「少ない」


『一食分だ!』


「じゃあ大きめ」


『普通でいい!』


 今日も。


 アルの声が。


 銀の月亭に響いた。

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