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第三十一話 白金宝箱と新たな連携



「《上級索敵》」


 意識を広げる。


 岩。


 草木。


 小さな魔物。


 地下を這う生命反応。


 遠くを飛ぶ鳥型魔物。


 いくつもの反応が頭の中へ浮かんでくる。


「……あ」


「何かいたか?」


「いる」


 アルが兜を被り直した。


 カシャンッ。


『強いのか?』


「さっきより強い」


『それはいい』


「嬉しそう」


『実戦査定だからな』


「もう十分だと思うけど」


『念には念を入れる』


 その横。


「ウォン!」


「グオオッ!」


 ノルンとヴァルカまでやる気になっている。


「みんな戦いたいんだ……」


『リリスも人のことを言えないだろう』


「私は素材も欲しい」


『もっと駄目な理由が追加されたぞ』


◇◇◇


 反応は北西。


 距離は数キロ。


「移動しよう」


「ウォン!」


 ノルンへ跨がる。


 アルはヴァルカへ。


 バサァァッ!


 深紅の飛竜が上空へ舞い上がった。


 私たちは岩石平原を進む。


 しばらくして。


「止まって」


「ウォン」


 ノルンが速度を落とす。


 前方。


 巨大な岩山の陰。


 一つ。


 かなり大きな生命反応。


 そして。


 その周囲にも。


「七体いる」


『種族は?』


「今見る」


 《上級鑑定》。


━━━━━━━━━━


岩鎧戦蜥蜴ロックアーマー・ウォーリザード


Lv82


危険度:


B(ランク)


━━━━━━━━━━


《|岩鎧戦蜥蜴》


Lv84


━━━━━━━━━━


《|岩鎧戦蜥蜴》


Lv85


━━━━━━━━━━


《|岩鎧戦蜥蜴》


Lv87


━━━━━━━━━━


《|岩鎧戦蜥蜴》


Lv89


危険度:


A(ランク)


━━━━━━━━━━


《|岩鎧戦蜥蜴》


Lv91


危険度:


A(ランク)


━━━━━━━━━━


 最後。


 かなり大きい。


━━━━━━━━━━


岩王装甲竜ロックキング・アーマードレイク


Lv96


危険度:


A(ランク)


分類:


群れ主


━━━━━━━━━━


主能力:


《岩王装甲》


《大地震撃》


《岩槍生成》


《重圧咆哮》


《装甲再生》


《地脈強化》


━━━━━━━━━━


「一番強いのLv96」


『ちょうどいい』


「アルのちょうどいいが怖くなってきた」


『昨日Lv108を倒した奴に言われたくない』


「それはそう」


◇◇◇


 岩山の向こう。


「グルルルル……」


 いた。


 大型の二足歩行蜥蜴。


 全身を岩石みたいな甲殻が覆っている。


 手には。


 巨大な石斧。


「武器持ってる」


『あれは身体の一部ではないのか?』


「《鑑定》」


━━━━━━━━━━


《岩戦斧》


品質:


良質


━━━━━━━━━━


「ちゃんと武器」


『器用な蜥蜴だな』


「倒したら落ちるかな」


『今そこを気にするのか?』


「武器ドロップ好き」


『覚えておこう』


 何を。


◇◇◇


「作戦どうする?」


『まず私が前へ出る』


「うん」


『ヴァルカは上空から群れを分断』


「グオッ!」


『ノルンは側面を崩せるか?』


「ウォン!」


 ノルンが尻尾を振る。


『私より返事がいいな』


「ノルン賢いから」


『私も返事くらいできる』


「してみて」


『……任せろ』


「ウォン!」


「ノルンの勝ち」


『何の勝負だ!』


 ちょっと面白い。


◇◇◇


「じゃあ私は後ろから撃つ」


『それが一番恐ろしい気がする』


「手加減するよ」


『もっと恐ろしい言い方になったぞ』


 私は弓を取り出す。


 白銀。


 《聖蒼銀弓ルミナス・ミスリルアーク》。


「行こう」


『ああ!』


「ウォン!」


「グオオオオッ!」


◇◇◇


 最初に飛び出したのはアル。


 ガシャンッ!


 剛銀色の重鎧。


 巨大な大楯。


 大戦斧。


「グルァァァッ!」


 戦蜥蜴たちが一斉に反応。


 石斧を構える。


 三体。


 正面から。


『来い!』


 ガンッ!


 大楯を地面へ。


━━━━━━━━━━


《大楯固定》


━━━━━━━━━━


 銀白色の魔力障壁。


 直後。


 ドガガガァンッ!


 三本の石斧が同時に大楯へ直撃する。


「……」


 アル。


 動かない。


『軽い』


「さっきも聞いた」


『事実だ』


 大楯を振り上げる。


 ドンッ!


 三体がまとめて体勢を崩した。


『《旋牙斬》!』


 大戦斧が回る。


 ブォォンッ!


 ズガガガッ!


 岩甲殻が三体まとめて砕け散った。


「おお」


◇◇◇


 左。


 二体。


「ウォン!」


 ノルン。


━━━━━━━━━━


《白銀疾駆》


━━━━━━━━━━


 一瞬。


 消えた。


「グルッ!?」


 次の瞬間には背後。


━━━━━━━━━━


《銀嵐刃》


━━━━━━━━━━


 ズバァァッ!


 二体の脚部へ風刃。


 岩甲殻の隙間を正確に切る。


「上手い」


「ウォフ!」


 ノルンが得意そう。


 でも。


 その直後。


 上から。


 巨大な石斧。


「ノルン!」


 避ける。


 ドォンッ!


 地面が割れた。


 ノルンが少し離れ。


「ウォン!」


「怒った?」


「ウォォン!」


「怒ったね」


 白銀の毛が逆立つ。


「ほどほどにね」


「ウォン!」


 たぶん聞いてる。


◇◇◇


 上空。


「グオオオオッ!」


 ヴァルカが翼を畳む。


━━━━━━━━━━


《急降下突撃》


━━━━━━━━━━


 ゴォォォォォッ!


 狙いはLv91。


 直撃。


 ズドォォンッ!


「グルァッ!」


 巨大な戦蜥蜴が地面を転がる。


 ヴァルカは再上昇。


 そして。


 口元。


 緋色。


━━━━━━━━━━


《緋炎竜息》


━━━━━━━━━━


 ゴォォォォッ!


 炎が戦場を横切る。


 敵の進路を完全に分断。


『いいぞヴァルカ!』


「グオオッ!」


 アルの声に。


 ヴァルカが嬉しそうに翼を振った。


「仲いい」


『昨日会ったばかりだがな』


「相性よかったんだね」


『ああ』


◇◇◇


 残る。


 群れ主。


 《岩王装甲竜》。


「グルォォォォォォッ!」


 巨大な咆哮。


 地面が震える。


━━━━━━━━━━


《重圧咆哮》


━━━━━━━━━━


 空気が重くなる。


「重力系?」


 身体が少し重い。


 でも。


 問題ない。


 アルも。


『この程度なら動ける!』


 むしろ走ってる。


「剛魔鋼すごい」


『作った本人が今気づくな!』


「実戦試験大事」


『それはそうだが!』


◇◇◇


 岩王装甲竜が両腕を地面へ叩きつける。


 ドォォンッ!


━━━━━━━━━━


《岩槍生成》


━━━━━━━━━━


 地面。


 次々と。


 尖った岩槍が突き出す。


「アル!」


『任せろ!』


 巨大な大楯を斜めに。


 ガガガガガンッ!


 岩槍。


 全部砕く。


 そのまま。


 突進。


『ハァァァッ!』


━━━━━━━━━━


《盾打撃》


━━━━━━━━━━


 ドォンッ!


 大楯が岩王装甲竜の胸へ直撃。


「グルォッ!」


 巨体が揺れる。


 でも。


 倒れない。


「硬い」


『ああ。だが――』


 アルが笑った気がした。


『こういう相手は得意だ!』


 《剛魔破城斧》。


 両手。


『《装甲断ち》!』


 ズガァァァァンッ!


 岩王装甲。


 亀裂。


 でも。


 すぐ。


 ゴゴゴゴ。


 砕けた岩が集まっていく。


━━━━━━━━━━


《装甲再生》


━━━━━━━━━━


「回復するんだ」


『厄介だな』


「じゃあ再生より早く壊せばいい?」


『恐ろしいことを簡単に言うな』


「手伝おうか?」


『頼む!』


◇◇◇


 弓を構える。


「弱点」


 《弱点看破》。


 胸。


 岩装甲の奥。


 魔石。


「見えた」


 でも。


 いきなり倒すのはもったいない。


 連携を試したい。


「アル、装甲だけ壊す」


『できるのか?』


「たぶん」


『お前の“たぶん”は信用していいのか悪いのか分からんな!』


「今回は大丈夫」


 魔力矢。


「《魔力矢超圧縮》」


 銀白色。


 属性は。


 土に強くしたい。


 風。


 それから。


 貫通。


「《疾風魔力矢ゲイル・マナアロー》」


「《装甲貫通射撃》」


「《超精密射撃》」


 狙う。


「《穿甲矢》」


 放つ。


 シュンッ!


 音が。


 ほとんどない。


 次。


 ドンッ!


「グルォォッ!?」


 胸部装甲。


 中央。


 綺麗に穴が開いた。


『……装甲だけ?』


「うん」


『本当に?』


「中身は避けた」


『器用すぎるだろ!』


◇◇◇


「今!」


『分かった!』


 アルが駆ける。


 岩王装甲竜が再生を開始。


 でも。


 間に合わない。


 大戦斧。


 両手。


 銀白色の魔力が刃へ集まる。


『《魔力斬撃》!』


 さらに。


『《重斬撃》!』


 踏み込み。


『ハァァァァッ!』


 ズドォォォォォンッ!


 開いた穴へ。


 大戦斧。


 直撃。


「グル……ォ……」


 巨体。


 止まる。


 そして。


 ドォォォンッ。


 地面へ倒れた。


━━━━━━━━━━


《岩王装甲竜》


討伐完了


━━━━━━━━━━


『ふぅ』


 アルが戦斧を肩へ。


「お疲れ」


『最後はほとんどお前の穴あけのおかげだがな』


「アルが倒した」


『そういうことにしておこう』


「ウォン!」


 ノルンが戻ってくる。


「グオオッ!」


 ヴァルカも着地。


「みんなお疲れ」


◇◇◇


 敵を全滅。


 すると。


━━━━━━━━━━


《自動収集》


発動


━━━━━━━━━━


《岩鎧戦蜥蜴の岩甲殻》×240


《岩鎧戦蜥蜴の強靭皮》×180


《岩鎧戦蜥蜴の爪》×120


《岩鎧戦蜥蜴の牙》×90


《岩鎧戦蜥蜴の魔石》×60


《岩戦斧》×30


━━━━━━━━━━


「武器いっぱい出た」


『そこが一番嬉しそうなのはなぜだ』


「装備ドロップ好きだから」


『拾ったところで使わないだろう』


「コレクション」


『……なるほど』


「欲しい?」


『いらん』


 即答。


◇◇◇


 さらに。


━━━━━━━━━━


《岩王装甲竜の王岩甲殻》×80


《岩王装甲竜の大爪》×40


《岩王装甲竜の剛牙》×30


《岩王装甲竜の魔石》×10


━━━━━━━━━━


希少素材:


《地脈王晶》×1


品質:


逸話級(エピック)


━━━━━━━━━━


「エピック」


『何に使える?』


「土属性装備とか、防御装備とか」


 アルを見る。


『私を見るな』


「まだ何も言ってない」


『目が“何か作れる”と言っている』


「分かるの?」


『一日で学習した』


「早い」


◇◇◇


 そして。


 少し離れた場所。


「宝箱」


 七つ。


━━━━━━━━━━


銀宝箱×4


金宝箱×2


白金宝箱×1


━━━━━━━━━━


「おお」


『白金まで出るのか』


「群れ主だからかな」


 そう言って。


 思い出した。


「……あ」


『どうした?』


「昨日の白金宝箱」


『まさか』


「まだ開けてない」


『忘れていた奴か』


「うん」


 アルが兜を押さえる。


『今ここで思い出すのか』


「宝箱見たから」


『エレナが苦労する理由が少し分かった気がする』


「まだ会って一日なのに?」


『十分だった』


◇◇◇


 まず。


 今日の宝箱を《インベントリ》へ。


 後で開けてもいい。


 でも。


 昨日のワンダリングモンスターの白金宝箱。


「これは開けよう」


『今か?』


「今」


『まあ、止める理由はないが』


 《インベントリ》。


━━━━━━━━━━


《白金宝箱》


討伐元:


《蒼雷銀角飛竜》


Lv108


━━━━━━━━━━


 取り出す。


 白金色の大きな宝箱。


 アルが少し離れる。


『罠確認は?』


「《罠感知》」


━━━━━━━━━━


罠:


なし


━━━━━━━━━━


「大丈夫」


『開けろ』


「うん」


 蓋へ手。


 ゆっくり。


 開く。


 カチッ。


 次の瞬間。


 青白い光。


「眩しい」


 中身。


 表示される。


━━━━━━━━━━


《白金宝箱》


開封完了


━━━━━━━━━━


蒼雷竜翼外套アズール・ドラグーンマント


A(ランク)


伝説級(レジェンド)


━━━━━━━━━━


《技能書:雷纏強化》


×1


━━━━━━━━━━


《魔導書:蒼雷障壁》


×1


━━━━━━━━━━


《高純度雷晶》×50


《蒼雷魔晶》×30


《ミスリル》×100


創晶石(アルケリウム)》×80


《特級魔力回復薬》×20


白金貨×1500


━━━━━━━━━━


「外套」


 取り出す。


 濃い蒼色。


 銀白色の縁取り。


 表面。


 薄い雷紋。


「カッコいい」


『また始まった』


「アル用じゃないよ」


『まだ聞いていない』


 《上級鑑定》。


━━━━━━━━━━


蒼雷竜翼外套アズール・ドラグーンマント


A(ランク)


伝説級(レジェンド)


━━━━━━━━━━


主効果:


《雷属性耐性超強化》


《風属性耐性強化》


《飛行時風圧軽減》


《落下衝撃軽減》


《高速移動補助》


《魔力伝導強化》


《蒼雷防護》


━━━━━━━━━━


「……」


 アルを見る。


『私を見るな』


「ヴァルカに乗る時よさそう」


『やっぱり私用じゃないか!』


「だって飛行時風圧軽減あるし」


『……』


「装備する?」


『……する』


「気に入った?」


『性能がいいからだ』


「色もカッコいいよ」


『性能がいいからだ』


「二回言った」


『うるさい』


 たぶん。


 気に入った。


◇◇◇


 アルが外套を装備する。


 剛銀色の全身重鎧。


 背中から濃い蒼色の外套。


 深紅のヴァルカ。


「……」


『何だ』


「すごく」


『言うな』


「カッコ――」


『言うな!』


「ウォン!」


 ノルンが鳴いた。


「ノルンもそう思う?」


「ウォン!」


『ノルンまで!』


 ヴァルカ。


「グオオッ!」


『お前もか!?』


 私は笑った。


 ちょっと。


 アルの顔が見えないフルフェイスでよかったかもしれない。


◇◇◇


 その後。


 アルの冒険者カード。


 再び光る。


━━━━━━━━━━


《追加戦闘査定》


A(ランク)群れ主討伐


複数高位魔物との集団戦:


合格


パーティー連携:


極めて良好


前衛統率:


高評価


━━━━━━━━━━


『これで十分だろう』


「たぶん」


『今度は本当にそう願う』


「帰ったらエレナさんに見せよう」


『そうだな』


「Fランク卒業できるかな」


『する』


「Fランクアル、結構好きだったのに」


『今すぐ忘れろ』


「Lv85のFランク」


『リリス』


「ごめん」


「ウォン!」


『ノルンも笑うな!』


◇◇◇


 夕方前。


 王都へ戻る。


 今日は。


 アルの実戦。


 ヴァルカとの連携。


 新しいパーティーでの戦闘。


 どれも問題なし。


 むしろ。


 かなり強い。


 私はノルンの背中から。


 前を飛ぶヴァルカを見る。


 その上。


 剛銀色の重騎士。


 蒼色の外套。


 巨大な大戦斧。


「……やっぱりカッコいい」


 かなり離れているのに。


『聞こえているぞ!』


「あ、聞こえた」


『何回言うつもりだ!』


「思った時」


『回数制限を設けろ!』


「一日十回?」


『多い!』


「五回」


『多い!』


「じゃあ三回」


『交渉するな!』


 ヴァルカの背中から。


 アルの声が響く。


 私は少し笑いながら。


 王都へ向かった。

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