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第二十二話 霊脈素材探査盤と新たな反応



 王都へ戻ったのは、夕方になってからだった。


「ただいま」


「ウォン!」


 西門を抜ける。


 ノルンを見ても、もう門兵さんたちは武器を構えなくなった。


「今日は何を倒してきたんです?」


「地竜です」


「聞かなきゃよかった」


 最近こんな反応ばかりな気がする。


「希少個体でした」


「追加情報いらないです」


「素材いっぱい取れました」


「ギルドへ報告してください」


「はい」


◇◇◇


 冒険者ギルド。


 受付へ向かうと、エレナさんがこちらを見る。


「お帰りなさい、リリスさん」


「ただいまです」


「今日は白銀峡谷ではありませんでしたよね?」


「森です」


「よかった」


「希少個体の地竜を倒しました」


「…………」


「エレナさん?」


「一瞬安心した私が馬鹿でした」


 討伐記録を見せる。


━━━━━━━━━━


《希少個体討伐》


晶鎧地竜クリスタル・アーマードレイク


Lv67


━━━━━━━━━━


「これ、王都西方の森ですよね?」


「かなり北まで行きましたけど」


「そんな個体が生息していたんですか……」


「洞窟を守ってました」


「洞窟?」


「霊脈の近くにある鉱洞です」


 《霊脈晶泉》。


 《霊脈銀晶》。


 《霊脈晶核》。


 見つけた場所を地図に記録する。


 エレナさんの表情が変わった。


「これはかなり重要な発見ですね」


「そうなんですか?」


「霊脈の露出地点は、周辺の魔物分布や鉱物生成にも影響します。特に《霊脈銀晶》が採れる規模なら、ギルドの地図にも記録する価値があります」


「いっぱい採れました」


「ちなみに?」


「三十六個」


「……品質は?」


「高品質」


「売ります?」


「売りません」


「ですよね」


 完全に読まれている。


◇◇◇


 報告を終える。


 宿へ戻る前に、私は錬金術師ギルドへ寄った。


 目的は一つ。


「これを強くしたい」


 取り出したのは。


━━━━━━━━━━


素材魔力探知盤マテリアル・サーチャー


品質:高品質


探知範囲:約3km


━━━━━━━━━━


 今日だけでも十分活躍してくれた。


 でも。


 《霊脈銀晶》と《霊脈晶核》を見つけた今なら、もっと上を作れる。


「三キロでも便利だけど」


 もっと遠く。


 もっと細かく。


 普通の素材と希少素材を分けたい。


 《インベントリ》を開く。


━━━━━━━━━━


使用候補素材


《霊脈銀晶》・高品質


《霊脈晶核》・高品質


《白金魔晶》・高品質


《高純度ミスリル銀塊》


《高純度アルケリウム》


《月銀塊》・高品質


━━━━━━━━━━


「これで」


 必要な素材を並べる。


 長い工程は要らない。


 欲しい性能を思い浮かべる。


「《上級錬金術》」


「《魔導装備製作》」


「《素材特性融合》」


 光が素材を包んだ。


━━━━━━━━━━


《錬金開始》


━━━━━━━━━━


 銀白色。


 青白色。


 淡い月光色。


 三つの光が一つへ重なる。


 数秒。


━━━━━━━━━━


《錬金成功》


━━━━━━━━━━


霊脈素材探査盤レイライン・マテリアル・サーチャー


品質:


希少級(レア)


分類:


高位探索魔道具


━━━━━━━━━━


「できた」


 以前より少し大きい銀白色の円盤。


 中央には《霊脈晶核》。


 外周には月銀色の細い環。


 表面を青白い光がゆっくり回っている。


「《上級鑑定》」


━━━━━━━━━━


《霊脈素材探査盤》


主機能:


《広域素材探知》


《希少素材選別》


《鉱脈探知》


《植物素材探知》


《魔晶探知》


《特殊魔力反応探知》


《地中素材探知》


《方向・距離表示》


《簡易品質判定》


《登録素材追跡》


━━━━━━━━━━


最大有効範囲:


半径15km


━━━━━━━━━━


「十五キロ!」


 三キロから五倍。


 しかも地中まで。


「かなり便利になった」


 試しに起動する。


「《霊脈素材探査盤》、起動」


 中央の晶核が輝いた。


━━━━━━━━━━


探査開始


範囲:


半径15km


━━━━━━━━━━


一般素材反応:


多数


良質以上:


327


希少反応:


21


高密度魔力反応:


6


特殊反応:


2


━━━━━━━━━━


「……二つ?」


 王都の中でも反応する。


 でも一つは錬金術師ギルドの地下保管庫らしい。


「これは除外」


 もう一つ。


 王都の外。


 北西。


━━━━━━━━━━


《特殊反応》


距離:約11.8km


状態:


未登録


反応種別:


鉱物/魔晶/不明


━━━━━━━━━━


「不明?」


 普通なら鉱物か魔晶か判断できるのに。


 三つ重なっている。


「気になる」


 でも、もう夕方。


「今日は行かない」


 さすがに。


 たぶん。


◇◇◇


 宿へ戻る。


 夕食を食べてから、裏庭へ。


 ノルンには焼いた大きな肉。


「はい」


「ウォン!」


 私は隣で《霊脈素材探査盤》を眺める。


「十一・八キロかあ」


 ノルンならすぐ行ける。


「……」


「ウォン?」


「行かないよ?」


 ノルンが首を傾げる。


「今日は」


「ウォフ」


「その反応なに」


◇◇◇


 翌朝。


「行こう」


「ウォン!」


 結局こうなった。


 朝食を済ませ、王都を出る。


 目的地は北西。


 《霊脈素材探査盤》の特殊反応。


 ノルンの背中へ乗る。


「今日は急がなくていいからね」


「ウォン」


 走り出す。


「だから速いって!」


◇◇◇


 王都から離れる。


 平原。


 林。


 低い丘。


 今まであまり行っていなかった方向だ。


 途中で《霊脈素材探査盤》が次々と反応した。


━━━━━━━━━━


希少反応


距離:340m


━━━━━━━━━━


「寄り道」


 方向転換。


「ウォン!」


 丘の斜面。


 紫色の小さな花。


━━━━━━━━━━


《紫雷花》


分類:希少植物素材


品質:良質


微弱な雷属性魔力を蓄積する花。


雷属性薬品、

麻痺耐性薬、

雷属性付与素材に使用可能。


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《自動収集》


《紫雷花》×48


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「新素材」


 また走る。


━━━━━━━━━━


希少反応


距離:510m


━━━━━━━━━━


「また」


 今度は岩場。


━━━━━━━━━━


《風銀鉱》


分類:希少鉱物


品質:良質


風属性魔力を含む銀系魔力鉱石。


軽量化、

速度強化、

風属性魔導装備に適する。


━━━━━━━━━━


《採掘》


《風銀鉱》×63


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「これノルンの装備にも使えそう」


「ウォン」


「今すぐ更新はしないよ」


 《シルバー・ゲイルハーネス》を作ったばかりだから。


 素材だけ保存。


◇◇◇


 一時間も経たないうちに。


━━━━━━━━━━


特殊反応まで:


2.1km


━━━━━━━━━━


「近い」


 景色も変わっていた。


 草原が減り。


 灰白色の岩が増える。


 地面の一部に薄い青色の結晶。


「この辺、霊脈の影響あるのかな」


 《魔力感知》。


 確かに濃い。


 その時。


 前方。


 小型の魔物が複数。


━━━━━━━━━━


雷尾狐サンダーテイル・フォックス


Lv55~59


×14


━━━━━━━━━━


 黄色がかった銀色の毛。


 長い尾の先から青白い電気が散っている。


「新しい魔物」


 十四体がこちらを見る。


 直後。


━━━━━━━━━━


《雷弾》


━━━━━━━━━━


 青白い雷球が一斉に飛んできた。


「《光盾(ライト・シールド)》!」


 白金色の障壁を展開。


 バヂヂヂッ!


 雷弾を防ぐ。


「雷属性なら」


 同じ雷じゃなくて。


「《岩壁(ロック・ウォール)》!」


 雷を通しにくい厚い岩壁を複数展開。


 攻撃を遮断する。


 次に。


「《氷鎖(アイス・チェイン)》!」


 青白い氷の鎖が地面を走り、前方の四体を拘束。


━━━━━━━━━━


《拘束》


×4


━━━━━━━━━━


「残りは」


 《ファントム・ブラック・ムーン》。


「《水流魔力矢(アクア・マナアロー)》」


 水属性魔力矢を十本生成。


 《エクリプス・ブレスレット》が輝く。


━━━━━━━━━━


標的捕捉


10


━━━━━━━━━━


「《多重標的射撃マルチロック・シュート》!」


 十本の水流矢。


 別々の軌道。


 高速で飛ぶ。


 バシュシュシュッ!


━━━━━━━━━━


《雷尾狐》


×10


討伐


━━━━━━━━━━


 拘束中の四体。


「《岩槍(ストーン・ランス)》!」


 地面から岩槍が突き上がる。


━━━━━━━━━━


《雷尾狐》


×4


討伐


━━━━━━━━━━


「属性相性考えるの楽しい」


◇◇◇


━━━━━━━━━━


LEVEL UP


Lv79



Lv82


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「八十超えた」


 とうとうLv80台。


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《自動収集》


《雷尾狐の毛皮》×140


《雷尾狐の尾毛》×120


《雷尾狐の牙》×80


《雷尾狐の爪》×100


《雷尾狐の魔石》×140


《雷属性魔力腺》×40


遺骸×14


━━━━━━━━━━


《宝箱ドロップ》


《木の宝箱》×4


《銅の宝箱》×3


《鉄の宝箱》×2


《銀の宝箱》×1


━━━━━━━━━━


「銀も」


 全部収納。


◇◇◇


 さらに進む。


━━━━━━━━━━


特殊反応まで:


780m


━━━━━━━━━━


「もうすぐ」


 ノルンも何か感じているらしく、何度か鼻を動かしている。


 七百。


 五百。


 三百。


 そして。


「……あれ?」


 前方。


 岩山。


 その側面。


 半分崩れた石造りの構造物が見えた。


「人工物?」


 近づく。


 森や岩に覆われている。


 古い。


 かなり古い。


 入口らしき場所には、欠けた石柱が二本。


 その間に地下へ続く階段。


━━━━━━━━━━


《霊脈素材探査盤》


特殊反応:


直下


━━━━━━━━━━


「地下?」


 さらに。


 《上級索敵》。


 反応。


「魔物もいる」


 地下。


 複数。


 かなり多い。


 その奥。


「……大きいのも一つ」


 ノルンが低く唸る。


「グルル……」


「いるね」


 階段の前へ。


 石柱の一部に文字らしきものが刻まれている。


 《上級鑑定》。


━━━━━━━━━━


《古代地下採掘遺構》


状態:


半崩壊


内部情報:


不明


━━━━━━━━━━


推定用途:


鉱石採掘


魔晶採掘


霊脈資源採取


━━━━━━━━━━


「採掘遺構」


 その言葉だけで。


 かなり行きたい。


 《霊脈素材探査盤》を見る。


━━━━━━━━━━


内部特殊反応:


3


希少反応:


多数


高密度魔力反応:


複数


━━━━━━━━━━


「……宝の山かも」


「ウォン!」


「ノルンも行く?」


「ウォオオン!」


「決まり」


 私は《ファントム・ブラック・ムーン》を手に取った。


 黒銀色の弓身へ銀白色の光が走る。


「でもまず」


 地下から。


 足音。


 カツン。


 カツン。


 複数。


「お迎え来たみたい」


 暗い階段の奥。


 青白い二つの光が。


 一対。


 また一対。


 次々と浮かび上がった。


━━━━━━━━━━


《未知魔物反応》


接近中


━━━━━━━━━━


 私は弓を構える。


「新しい素材も、魔物も」


 たぶん。


 この地下には、かなり色々ありそうだった。

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