第二十一話 晶鎧地竜と霊脈鉱洞
青白い雷が、《幻穿黒魔弓》の弓身を走る。
「《雷撃魔力矢》」
一本の雷矢が形成された。
洞窟の入口を塞ぐように立つ《晶鎧地竜》。
Lv67。
希少個体。
全身を覆う灰銀色の鱗の上には、水晶のような装甲まで形成されている。
「グオオオオオッ!」
地竜が咆哮した。
地面が震える。
「ノルン、左右に分かれよう」
「ガウッ!」
ノルンが右へ走る。
私は左へ。
直後。
━━━━━━━━━━
《晶弾》
━━━━━━━━━━
《クリスタル・アーマードレイク》の背中に生えた結晶が光った。
「来る」
バシュシュシュッ!
十数発の青白い結晶弾。
「《岩壁》!」
ドドンッ!
目の前に厚い岩壁を三枚展開する。
結晶弾が次々と突き刺さった。
バキッ!
一枚目が砕ける。
二枚目にも亀裂。
「結構強い」
でも。
三枚目までは抜けない。
岩壁の横から出る。
「今度はこっち」
弦を放した。
バヂィンッ!
《雷撃魔力矢》が地竜の肩へ直撃する。
━━━━━━━━━━
《雷撃魔力矢》
命中
━━━━━━━━━━
《感電》
成功
━━━━━━━━━━
「グルァッ!?」
青白い雷が晶鎧の表面を走る。
「効いてる」
完全に止まりはしない。
でも動きが鈍った。
「もう一つ」
「《雷縛》!」
雷の帯が地面を這い、四肢へ絡みつく。
バチバチバチッ!
「グオオオッ!」
地竜が暴れる。
雷の拘束が軋む。
「ノルン!」
「ガアアッ!」
━━━━━━━━━━
《白銀疾駆》
━━━━━━━━━━
白銀の巨体が一気に接近。
地竜の側面へ体当たりする。
ドゴンッ!
「グルッ!」
《クリスタル・アーマードレイク》が横へよろめいた。
でも。
「硬い」
ノルンの突進を受けても倒れない。
むしろ。
長い尾が横薙ぎに振るわれた。
「ノルン、跳んで!」
「ウォン!」
ノルンが地面を蹴る。
巨大な尾がその下を通過した。
ズガァンッ!
背後の木が二本まとめて折れる。
「まともに受けたくないなあ」
◇◇◇
地竜の晶鎧を見る。
全身を覆っている。
でも。
「全部同じ厚さじゃない」
《弱点看破》。
《上級鑑定》。
さらに《魔力照準》。
━━━━━━━━━━
《晶鎧》
高強度部位:
頭部
背部
胸部
━━━━━━━━━━
比較的薄い部位:
脇腹
脚部関節
首下
━━━━━━━━━━
「ちゃんと隙間ある」
なら。
「《水流魔力矢》」
高圧水流の矢。
狙うのは前脚の関節。
「《精密射撃》」
放つ。
バシュッ!
灰銀色の晶鎧の隙間へ命中。
「グルァッ!」
血が散った。
「水は切断に向いてる」
もう一本。
反対側。
「《水流魔力矢》!」
バシュッ!
二発目も関節へ。
地竜の前脚が少し沈む。
━━━━━━━━━━
《前脚関節》
損傷
━━━━━━━━━━
「いい感じ」
でも。
《クリスタル・アーマードレイク》も黙ってはいない。
大きく前脚を地面へ叩きつけた。
━━━━━━━━━━
《岩晶壁》
━━━━━━━━━━
ズドドドドンッ!
「え?」
地面から巨大な岩と結晶の壁が次々と立ち上がる。
一枚。
二枚。
三枚。
私と地竜の間を完全に遮った。
「射線切られた」
その向こう。
魔力反応が移動する。
「来る!」
横。
《上級索敵》が大きく反応した。
━━━━━━━━━━
《地竜突進》
━━━━━━━━━━
岩晶壁を回り込んだ地竜が突っ込んでくる。
「速っ!」
巨体なのにかなり速い。
「《疾風加速》!」
身体へ風を纏う。
一気に横へ。
ドドドドドッ!
すぐ横を地竜が通過する。
地面が大きく抉れた。
「ノルン!」
「ガウッ!」
反対側からノルンが飛びかかる。
首元。
比較的晶鎧が薄い部分。
ガキンッ!
牙が食い込む。
「グルルルルッ!」
地竜が身体を振る。
「そのまま離れて!」
ノルンが跳び退く。
「今なら首が見える」
私は《ファントム・ブラック・ムーン》を構えた。
「《氷結魔力矢》!」
淡い水色の矢。
狙う。
傷ついた首元。
放つ。
パキィンッ!
冷気が一気に広がった。
━━━━━━━━━━
《凍結蓄積》
上昇
━━━━━━━━━━
「もう一発」
「《氷結魔力矢》!」
パキンッ!
傷口を中心に氷が広がる。
━━━━━━━━━━
《部分凍結》
首部
━━━━━━━━━━
「動き止まった」
「グル……!」
地竜が首を動かそうとする。
でも凍結が邪魔をしている。
「じゃあ」
今度は魔法。
「《雷槍》!」
右手から収束した青白い雷槍を放つ。
バヂィィィンッ!
凍結した首元へ直撃。
氷が砕ける。
同時に。
晶鎧も割れた。
━━━━━━━━━━
《晶鎧》
首部破壊
━━━━━━━━━━
「開いた」
◇◇◇
《クリスタル・アーマードレイク》が怒りの咆哮を上げる。
「グオオオオオオオッ!」
背中の結晶が一斉に輝く。
「また晶弾?」
違う。
周囲の魔力が地竜へ吸い寄せられている。
━━━━━━━━━━
《魔力吸収》
━━━━━━━━━━
「回復する気だ」
洞窟。
霊脈。
高密度の魔力。
相性が良すぎる。
傷ついた晶鎧が少しずつ再形成されていく。
「それは困る」
以前の《ミスリル・クリスタルゴーレム》と似ている。
だったら。
「吸わせなければいい」
左手を向ける。
「《岩壁》!」
地竜の周囲。
霊脈側。
洞窟入口との間へ複数の岩壁を出す。
━━━━━━━━━━
《魔力吸収》
効率低下
━━━━━━━━━━
「完全には止まらない」
なら。
もっと直接的に。
「《光槍》!」
白金色の光槍。
狙うのは、魔力が集まっている背中の結晶。
シュンッ!
直撃。
パァンッ!
一本の結晶が砕けた。
━━━━━━━━━━
《魔力吸収器官》
一部破壊
━━━━━━━━━━
「光魔法でも壊せる」
もう二本。
「《光槍》!」
白金色の槍が連続で飛ぶ。
バンッ!
バキンッ!
━━━━━━━━━━
《魔力吸収》
停止
━━━━━━━━━━
「よし」
◇◇◇
地竜がこちらを睨む。
かなり傷ついている。
でもまだ戦意は消えていない。
「希少個体ってやっぱり強い」
Lv67。
今の私はLv75。
レベルだけなら上。
それでも簡単には倒れない。
「じゃあ最後は」
試したばかりの技。
《ファントム・ブラック・ムーン》を構える。
「《魔穿狙撃》」
銀白色の魔力が一本へ収束する。
━━━━━━━━━━
《エクリプス・ブレスレット》
《魔力収束強化》
《魔力充填速度大幅上昇》
発動
━━━━━━━━━━
収束完了。
「でも頭は狙わない」
欲しい。
晶角。
頭部素材。
なるべく綺麗に残したい。
「胸も硬い」
狙うのは。
さっき壊した首部。
━━━━━━━━━━
《弱点捕捉》
成功
━━━━━━━━━━
「属性は……」
晶鎧。
魔力吸収。
雷はもう効くと分かっている。
「《雷撃魔力矢》」
青白い雷が超収束矢へ纏わりつく。
「それと」
「《疾風加速》」
薄緑色の風。
━━━━━━━━━━
《魔穿狙撃》
+
《雷撃魔力矢》
+
《疾風加速》
複合成立
━━━━━━━━━━
「撃つよ」
放つ。
無音。
次の瞬間。
バヂィィィンッ!
雷光が首元の砕けた晶鎧へ吸い込まれた。
一瞬遅れて。
ドンッ!
反対側へ抜ける。
「グ……ォ……」
巨体が揺れた。
前脚。
後脚。
そして。
ズズンッ。
地面へ倒れる。
━━━━━━━━━━
《希少個体討伐》
《晶鎧地竜》
Lv67
討伐
━━━━━━━━━━
「倒した」
ノルンがこちらへ歩いてくる。
「ウォン!」
「お疲れさま」
白銀色の毛を撫でる。
「ノルンもありがとう」
「ウォフ」
◇◇◇
━━━━━━━━━━
LEVEL UP
Lv75
↓
Lv79
━━━━━━━━━━
「四つ!」
希少個体。
しかもLv67。
かなり経験値が入ったらしい。
「もう七十九」
Lv80まであと一つ。
成長が早い。
━━━━━━━━━━
《自動収集》
発動
━━━━━━━━━━
《晶鎧地竜の晶鱗》×80
《晶鎧地竜の硬皮》×50
《晶鎧地竜の大爪》×40
《晶鎧地竜の牙》×30
《晶鎧地竜の晶角》×20
《晶鎧地竜の翼膜》×20
《晶鎧地竜の腱》×40
《晶鎧地竜の骨》×100
《晶鎧地竜の魔石》×10
《晶鎧地竜の肉》×180
遺骸×1
━━━━━━━━━━
「晶鱗八十」
防具。
盾。
魔導装備。
色々使えそう。
さらに。
━━━━━━━━━━
《レアドロップ》
《晶地竜核》×1
━━━━━━━━━━
「また核」
━━━━━━━━━━
《晶地竜核》
分類:希少魔物素材
品質:高品質
《晶鎧地竜》の体内で形成される
高密度魔力核。
土属性、
結晶属性、
防御強化、
魔力吸収系の特性を持つ。
━━━━━━━━━━
「これは防御系かな」
取っておこう。
そして。
━━━━━━━━━━
《希少個体討伐》
宝箱確定
━━━━━━━━━━
光が集まる。
「何箱?」
現れたのは。
━━━━━━━━━━
《金の宝箱》
×1
━━━━━━━━━━
「金!」
開けたい。
かなり開けたい。
でも。
未開封の箱が少しずつ増えている。
「今回は貯めよう」
収納。
━━━━━━━━━━
《金の宝箱》
未開封
━━━━━━━━━━
「楽しみが増えた」
◇◇◇
残ったのは。
洞窟。
「やっと入れる」
《マテリアル・サーチャー》を見る。
━━━━━━━━━━
《高密度魔力反応》
距離:
約180m
━━━━━━━━━━
「奥」
私は《ファントム・ブラック・ムーン》を持ったまま洞窟へ入る。
「ノルン、行こう」
「ウォン」
◇◇◇
洞窟内部。
暗い。
でも《暗視》がある。
壁には青白い結晶が点々と露出している。
「《灯光》」
光属性の生活・補助魔法。
白い光球を一つ浮かべる。
「これなら見やすい」
進む。
すぐに《自動収集》が反応した。
━━━━━━━━━━
《魔晶石》×90
《高純度魔力石英》×55
《晶脈石》×44
《ミスリル銀鉱》・良質×38
《月銀鉱》・良質×25
《土晶石》×48
━━━━━━━━━━
「やっぱり鉱洞」
さらに進む。
「こっちにも」
━━━━━━━━━━
《霊晶茸》×30
《晶苔》×42
《地脈根》×28
《魔晶砂》×70
━━━━━━━━━━
「植物まである」
暗い洞窟の中なのに。
霊脈の魔力だけで育っているのかもしれない。
◇◇◇
百メートルほど進んだところで。
洞窟が大きく開けた。
「……すご」
巨大な地下空洞。
中央。
地面から一本の巨大な銀白色結晶柱が伸びている。
その周囲には、細い青白色の魔力光が脈のように走っていた。
《マテリアル・サーチャー》が激しく輝く。
━━━━━━━━━━
《高密度魔力反応》
到達
━━━━━━━━━━
「これ?」
近づく。
《上級鑑定》。
━━━━━━━━━━
《霊脈銀晶》
分類:希少鉱物素材
品質:高品質
━━━━━━━━━━
霊脈とミスリル銀鉱脈が
長期間重なる地点でのみ形成される
特殊な魔力結晶鉱物。
銀系魔力金属と
高密度霊脈魔力の双方の性質を持つ。
━━━━━━━━━━
主適性:
《魔力探知強化》
《魔力伝導強化》
《魔力増幅》
《索敵魔道具》
《高位アクセサリ》
《高位魔導装備》
━━━━━━━━━━
「当たり」
かなり当たり。
「素材探知盤に使える」
今の《マテリアル・サーチャー》は半径三キロ。
これを使えば。
「もっと遠くまで探せるようになるかも」
でも。
今すぐ作り直す必要はない。
まず採る。
「《採掘》」
銀白色の結晶柱が淡く光る。
━━━━━━━━━━
《採掘成功》
━━━━━━━━━━
《霊脈銀晶》・高品質×36
━━━━━━━━━━
「三十六個」
さらに。
結晶柱の根元。
「まだある」
━━━━━━━━━━
《霊脈晶核》×3
━━━━━━━━━━
「晶核?」
━━━━━━━━━━
《霊脈晶核》
分類:希少魔力結晶素材
品質:高品質
霊脈銀晶の中心部に
極めて稀に形成される高密度結晶核。
魔力探知、
魔力増幅、
長距離索敵、
高位魔道具の中核素材に適する。
━━━━━━━━━━
「長距離索敵」
欲しかったもの、そのまま。
「これ、大事に取っておこう」
◇◇◇
地下空洞をさらに調べる。
《マテリアル・サーチャー》にも複数の反応。
━━━━━━━━━━
《追加採取》
《高純度ミスリル銀鉱》×72
《月銀鉱》・高品質×26
《高純度アルケリウム》×35
《白晶石》×48
《地晶核》×8
《霊脈晶水》×50L
《銀霊苔》×35
《霊晶茸》×24
━━━━━━━━━━
「大収穫」
戦闘もした。
レベルも上がった。
希少素材も見つけた。
洞窟まで発見。
「素材探知盤、すごく便利」
まだ高品質。
まだ半径三キロ。
それでもこれだけ見つけられた。
「もっと性能上げたいな」
いずれ。
もっと広い範囲。
もっと希少な素材だけを選別。
何十キロ先でも。
「……それはさすがに欲張り?」
「ウォン」
「ノルンは賛成?」
「ウォウッ!」
「じゃあいつか作ろう」
◇◇◇
洞窟を出る頃には、太陽が少し傾き始めていた。
「今日はここまで」
ノルンの背中へ乗る。
《インベントリ》を開く。
━━━━━━━━━━
現在Lv79
━━━━━━━━━━
新規希少素材:
《晶地竜核》
《霊脈銀晶》
《霊脈晶核》
━━━━━━━━━━
未開封宝箱:
木箱
銅箱
鉄箱
銀箱
金箱×1
━━━━━━━━━━
「また色々増えた」
まだ王都の近くだと思っていた森にも。
知らない場所。
知らない魔物。
知らない素材。
いくらでもある。
「やっぱり探索楽しい」
「ウォン!」
「帰ろう、ノルン」
白銀色の巨大狼が森を駆け出す。
私はその背中で。
手に入れた《霊脈銀晶》を使って、次は何を作ろうか考え始めていた。




