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第二十話 森の北の霊脈晶泉



 ノルンが気にしていた魔力反応を追って、森の北側へ進む。


「こっち?」


「ウォン」


 白銀色の巨大狼が迷いなく木々の間を歩いていく。


 私はその後を追いながら、《上級索敵》と《魔力感知》を同時に広げていた。


「やっぱり魔物じゃない」


 反応はある。


 でも生命反応がない。


 鉱石とも少し違う。


 一定ではなく。


 弱くなったり。


 強くなったり。


 まるで何かが脈打っているような魔力。


「素材かな」


 そう思った瞬間、少し歩く速度が上がった。


◇◇◇


 北へ進むにつれて、森の様子が少しずつ変わっていった。


 木々の幹が太くなる。


 根が地表へ大きく露出している。


 苔には淡い青白色の光。


 ところどころに銀色の小さな花も咲いていた。


「見たことない」


 《自動収集》が反応する。


━━━━━━━━━━


《銀雫草》×60


《月影苔》×48


《魔力樹皮》×55


《青晶茸》×32


《霊樹の若枝》×24


━━━━━━━━━━


「新しい素材いっぱい」


 まず《銀雫草》。


━━━━━━━━━━


《銀雫草》


分類:薬草素材


品質:良質


魔力の濃い森林に生える銀色の薬草。


魔力回復薬、

集中力強化薬、

魔力循環補助薬などに利用可能。


━━━━━━━━━━


「使えそう」


 次。


━━━━━━━━━━


《月影苔》


分類:魔力植物素材


品質:良質


月光や高密度魔力を吸収して育つ苔。


隠密系装備、

魔力隠蔽薬、

光量調整魔道具などに利用可能。


━━━━━━━━━━


「これ、外套と相性よさそう」


 《クリスタル・シャドウクローク》を今すぐ更新するつもりはないけど。


 素材としては欲しい。


「全部収納」


◇◇◇


 さらに奥へ。


 ノルンが突然立ち止まった。


「どうしたの?」


「グル……」


 今度は警戒。


 《上級索敵》。


「いる」


 前方。


 木の根元。


 大きな反応が六つ。


 でも。


「動いてない?」


 近づく。


 最初は巨木だと思った。


 違う。


 太い幹。


 そこから伸びる腕のような枝。


 根が脚のように地面へ食い込んでいる。


「木の魔物」


━━━━━━━━━━


晶根樹兵クリスタルルート・トレント


Lv52~57


×6


種族:植物系魔物


━━━━━━━━━━


高濃度の魔力を吸収し、

結晶化した根を持つ大型樹木魔物。


土属性、

植物拘束、

魔力吸収を使用する。


弱点:


火属性


切断攻撃


━━━━━━━━━━


「火に弱い」


 ちょうどいい。


 六体の《クリスタルルート・トレント》が一斉に動き出した。


 枝が持ち上がる。


━━━━━━━━━━


《根縛り》


━━━━━━━━━━


 地面から無数の根が伸びてきた。


「《火炎槍(フレイム・ランス)》!」


 赤橙色の炎槍を三本生成。


 飛んでくる根へ撃つ。


 ボォンッ!


 燃え上がった根が崩れる。


「やっぱり弱点だと効く」


 反対側。


 別の根がノルンへ向かう。


「ノルン、左!」


「ガウッ!」


 ノルンが跳んでかわす。


 そのまま一体へ突進。


━━━━━━━━━━


《白銀疾駆》


━━━━━━━━━━


 ドゴンッ!


 巨木の身体が揺れる。


 でも倒れない。


「植物だから打撃はそこまで?」


 なら。


「《火炎魔力矢(フレイム・マナアロー)》」


 赤橙色の魔力矢を六本生成。


 《エクリプス・ブレスレット》が淡く光る。


━━━━━━━━━━


《多重照準超補助》


標的捕捉


6


━━━━━━━━━━


「《多重標的射撃マルチロック・シュート》!」


 六本。


 同時発射。


 ドンッ!


 ドドドンッ!


 六体へ火炎矢が直撃。


 樹皮が一斉に燃え上がった。


「グオオオオ……!」


 低い唸り声。


 でも。


 まだ倒れない。


「生命力高い」


 一本のトレントが太い腕を地面へ叩きつける。


━━━━━━━━━━


《岩根槍》


━━━━━━━━━━


 地面から、岩石を纏った巨大な根が突き上がった。


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》!」


 身体へ風を纏う。


 横へ加速。


 回避。


 さらに。


「《水刃(アクア・カッター)》!」


 高圧水流の刃。


 シュバッ!


 燃えて弱くなった幹を横から切断する。


━━━━━━━━━━


《晶根樹兵》


討伐


━━━━━━━━━━


「火で弱らせて、水で切る」


 意外と相性いい。


「ノルン!」


「ガアアッ!」


 ノルンが別のトレントへ飛びかかる。


 燃えて脆くなった枝へ噛みつく。


 バキンッ!


 大枝が折れた。


「今!」


「《爆炎球(バースト・フレア)》!」


 残る五体の中央。


 大きな火球を放つ。


 着弾。


 ドォォンッ!


 爆炎が森の一角を包む。


 もちろん周囲の普通の木まで燃えないよう、範囲は抑えている。


━━━━━━━━━━


《晶根樹兵》


×5


討伐


━━━━━━━━━━


「上級属性魔法、やっぱり便利」


 弓だけでも倒せる。


 でも。


 弱点がはっきりしている相手なら、魔法を使った方が早い。


◇◇◇


━━━━━━━━━━


LEVEL UP


Lv72



Lv75


━━━━━━━━━━


「三つ上がった」


 現在Lv75。


 高レベルの魔物六体。


 成長補正。


 やっぱり上がるのが早い。


━━━━━━━━━━


《自動収集》


《晶根樹兵の硬樹皮》×120


《晶根樹兵の晶根》×90


《晶根樹兵の魔樹芯》×60


《晶根樹兵の魔石》×60


《霊樹樹液》×80


《硬魔木材》×150


━━━━━━━━━━


「木材いっぱい」


 錬金術だけじゃなく。


 弓。


 杖。


 魔道具。


 家具。


 色々作れそう。


 さらに。


━━━━━━━━━━


《宝箱ドロップ》


《銅の宝箱》×2


《鉄の宝箱》×2


《銀の宝箱》×1


━━━━━━━━━━


「銀も出た」


 全部未開封のまま収納する。


◇◇◇


「この先」


「ウォン」


 ノルンが再び歩き始める。


 トレントたちは、何かを守っていたように見えた。


 その奥。


 木々が途切れる。


「……わ」


 小さな空間。


 森の中にぽっかりと開いた円形の窪地。


 中央には。


 泉。


 青白い光を放つ、透き通った水。


 水底には銀色や青色の結晶が広がっている。


 周囲の木の根まで淡く光っていた。


━━━━━━━━━━


特殊地点発見


霊脈晶泉レイライン・クリスタルスプリング


━━━━━━━━━━


「霊脈晶泉……」


 《上級鑑定》。


━━━━━━━━━━


《霊脈晶泉》


分類:特殊自然環境


地下を流れる魔力の経路

《霊脈》が地表へ露出し、

地下水と結晶鉱物へ長期間影響を与えて

形成された特殊な泉。


周囲では通常より

高品質な魔力素材が生成されやすい。


━━━━━━━━━━


「これが反応の正体」


 ノルンが気づいたのも。


 魔力感知へ変な反応が出たのも。


「霊脈そのものだったんだ」


 泉の周囲へ近づく。


 《レア素材発見》。


 反応。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


「いっぱいある」


━━━━━━━━━━


《自動収集》


━━━━━━━━━━


《霊脈晶水》×100L


《霊銀花》×45


《晶脈石》×70


《月白魔晶》×32


《高純度魔力石英》×65


《霊樹樹脂》×38


《晶脈茸》×40


《魔力結晶砂》×120


━━━━━━━━━━


「水まで収納できる」


 便利。


 まず。


━━━━━━━━━━


《霊脈晶水》


分類:特殊錬金素材


品質:高品質


霊脈から溢れた高密度魔力を含む天然水。


高位ポーション、

魔力回復薬、

魔導触媒、

人工魔晶生成などに使用可能。


━━━━━━━━━━


「錬金術にかなり使えそう」


 次。


━━━━━━━━━━


《霊銀花》


分類:希少植物素材


品質:高品質


霊脈付近で稀に開花する銀白色の花。


魔力回復、

魔力循環改善、

精神集中、

魔法発動補助などの特性を持つ。


━━━━━━━━━━


「希少素材」


 嬉しい。


 さらに。


━━━━━━━━━━


《晶脈石》


分類:希少鉱物素材


品質:良質


霊脈の魔力を長期間吸収した結晶鉱石。


魔力探知、

魔力増幅、

索敵系魔道具との相性が高い。


━━━━━━━━━━


「……魔力探知」


 そこに目が止まった。


「これ」


 さっき考えていた。


 珍しい素材を探すための魔道具。


 《晶脈石》。


 《月白魔晶》。


 《高純度アルケリウム》。


 魔力探知に使える素材が揃っている。


「作れるかも」


◇◇◇


 私は泉の横へ座った。


「ちょっと錬金してみよう」


「ウォン」


 ノルンも近くで伏せる。


 《インベントリ》を開く。


━━━━━━━━━━


使用素材


《晶脈石》×5


《月白魔晶》×2


《高純度アルケリウム》×3


《ミスリル銀塊》×2


《霊脈晶水》×1L


━━━━━━━━━━


「素材の魔力反応を探す道具」


 遠くまで、とは言わない。


 まずは近距離。


 普通の《魔力感知》だと、魔物や鉱脈や魔道具の反応が混ざる。


 それを。


 素材に絞る。


「《上級錬金術》」


 光。


━━━━━━━━━━


《製作成功》


━━━━━━━━━━


素材魔力探知盤マテリアル・サーチャー


品質:高品質


分類:探索用魔道具


━━━━━━━━━━


周辺に存在する

魔力を含んだ採取素材を探知する。


使用者の《鑑定》《魔力感知》

《素材鑑定》と連動可能。


━━━━━━━━━━


主機能:


《素材反応探知》


《鉱物反応探知》


《植物素材反応探知》


《魔晶反応探知》


《簡易希少度判定》


《方向表示》


━━━━━━━━━━


有効範囲:


半径約3km


━━━━━━━━━━


「三キロ」


 今の段階なら十分。


 手のひらより少し大きい銀白色の円盤。


 中央には青白い魔晶。


 周囲に細かな目盛り。


「起動」


 魔力を流す。


 パッ。


 中央に小さな光点が浮かんだ。


━━━━━━━━━━


《素材魔力探知盤》


起動


━━━━━━━━━━


周辺素材反応:


多数


━━━━━━━━━━


一般反応:47


良質反応:19


希少反応:4


高密度魔力反応:1


━━━━━━━━━━


「……一個すごいのある」


 高密度魔力反応。


 方向は。


「北東」


 ここよりさらに奥。


 距離。


━━━━━━━━━━


約2.4km


━━━━━━━━━━


「近い」


 ノルンを見る。


「行ってみる?」


「ウォン!」


「だよね」


 私も行きたい。


◇◇◇


 《マテリアル・サーチャー》を持って森を進む。


 途中。


 素材反応を拾うたびに寄り道した。


━━━━━━━━━━


《黒銀茸》×28


《風脈草》×44


《青晶樹脂》×31


《魔銀砂》×50


《良質魔力石英》×38


《霊樹根》×20


━━━━━━━━━━


「楽しい」


 今まで以上に寄り道が増えそう。


「これ作って正解だった」


 ただ。


 高密度反応はまだ先。


 約一キロ。


 七百メートル。


 五百。


「近づいてる」


 その時。


 ノルンが鼻を動かす。


「また何かいる?」


「グル……」


 《上級索敵》。


 今度は生命反応。


 一体。


 大きい。


 でも。


「動いてない」


 さらに進む。


 木々の向こう。


 巨大な岩壁。


 その根元。


「……洞窟?」


 岩壁に大きな裂け目が開いている。


 入口の周囲には、青白い結晶。


 そして。


 《マテリアル・サーチャー》が強く光った。


━━━━━━━━━━


《高密度魔力反応》


至近距離


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「この中」


 ただし。


 洞窟の入口。


 その前に。


 何かが横たわっていた。


 灰銀色の硬い鱗。


 太い四肢。


 長い尾。


 背中には水晶のような突起。


「魔物」


 まだ眠っている。


「《上級鑑定》」


━━━━━━━━━━


晶鎧地竜クリスタル・アーマードレイク


Lv67


種族:地竜系魔物


区分:希少個体


━━━━━━━━━━


高密度魔晶地帯に棲息する

大型地竜系魔物。


全身を高硬度の晶鎧で覆い、

地下鉱物の魔力を吸収して成長する。


━━━━━━━━━━


主能力:


《晶鎧》


《晶弾》


《地竜突進》


《岩晶壁》


《魔力吸収》


━━━━━━━━━━


「Lv67」


 今の私はLv75。


 でも。


「希少個体」


 素材も気になる。


 洞窟の中も気になる。


 何より。


━━━━━━━━━━


《素材魔力探知盤》


高密度魔力反応:


《晶鎧地竜》の背後


━━━━━━━━━━


「守ってるのかな」


 眠っていた地竜の目が。


 ゆっくり開く。


「グルルルル……」


「起きた」


 ノルンが私の横へ並ぶ。


「ガルル……」


 私は《ファントム・ブラック・ムーン》を手に取った。


 黒銀色の弓身へ銀白色の光が走る。


「洞窟の中、見たいんだけど」


 《クリスタル・アーマードレイク》が立ち上がる。


「通してはくれなさそう」


 左手首。


 《エクリプス・ブレスレット》が淡く輝いた。


「じゃあ」


 まず。


「硬い相手なら雷かな」


 弦を引く。


 青白い雷が集まり始める。


「《雷撃魔力矢ライトニング・マナアロー》」


 巨大な地竜が咆哮した。


 森の北。


 霊脈のさらに奥で。


 新しい戦いが始まろうとしていた。

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