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第十八話 白金の宝箱と伝説級の魔導腕輪



 白銀峡谷からの帰り道。


 私はノルンの背中に揺られながら、何度目か分からない《インベントリ》の確認をしていた。


━━━━━━━━━━


《白金の宝箱》


×1


未開封


━━━━━━━━━━


「……開けたい」


「ウォン」


「分かってる。王都まで我慢する」


 ノルンが白銀色の耳を動かす。


 たぶん、もう何度も同じことを言っている。


「だって白金だよ?」


 《幻穿黒魔弓ファントム・ブラック・ムーン》が出たのは《金の宝箱》。


 その一段上。


 白金。


「絶対すごいの入ってる」


「ウォフ」


「ノルンも気になる?」


 少し尻尾が動いた。


「じゃあ一緒に開けよう」


◇◇◇


 夕方。


 王都西門へ到着した。


 昨日はノルンを見た瞬間に警鐘を鳴らされたけど、今日は違う。


「あ、リリスさん」


「お帰りなさい」


「ただいまです」


 門兵さんたちも、もうノルンの首元にある従魔登録札を覚えてくれたらしい。


「今日は何事もなかったですか?」


「ありました」


「聞かなきゃよかった」


「フィールドボス倒しました」


「…………」


 門兵さんが固まる。


「どこの?」


「白銀峡谷の」


「もしかして……あの巨大ゴーレム?」


「はい」


「ギルドへ報告してください」


「そのつもりです」


「エレナさん、大変だな……」


 なぜか遠い目をされた。


◇◇◇


 冒険者ギルド。


「ただいまです」


「お帰りなさい、リリスさん」


 エレナさんが私を見る。


 次にノルン。


「今日は無事――」


「ボス倒しました」


「最後まで言わせてもらえません?」


「ごめんなさい」


「それで、何を倒したんですか?」


 討伐記録を出す。


━━━━━━━━━━


《フィールドボス討伐》


白銀魔晶巨像ミスリル・クリスタルゴーレム


Lv59


討伐済


━━━━━━━━━━


「…………」


「エレナさん?」


「昨日、Dランクになりましたよね?」


「はい」


「《白銀魔晶巨像》はCランク以上推奨です」


「書いてありました」


「なぜ翌日に倒してるんですか?」


「向こうから撃ってきたので」


「またそのパターンですか……」


 ちゃんと調査優先だった。


 向こうから《魔晶砲》を撃ってきた。


 だから戦った。


「ノルンも一緒でした」


「ウォン!」


「そうですね。そこは重要ですね」


 エレナさんが記録を確認する。


「単独討伐ではありませんが、従魔との二者討伐。それでも十分すぎる実績です」


「Cランクになります?」


「さすがに昨日Dへ上がったばかりなので、今日ここで即昇格とはしません」


「そうなんだ」


「残念そうにしないでください」


 別に残念というほどではない。


 ただ、ランクが上がれば行ける場所も増える。


「今回の討伐記録は昇格査定へ大きく加算されます。それと、白銀峡谷奥部調査は文句なしの達成です」


━━━━━━━━━━


《白銀峡谷奥部調査》


依頼達成


━━━━━━━━━━


「ありがとうございます」


「それで素材は?」


「いっぱい取れました」


「でしょうね」


 《高純度ミスリル銀鉱》。


 《ミスリル銀塊》。


 《白銀魔晶》。


 《大型魔晶核片》。


 《高純度アルケリウム》。


 そして《白銀魔晶核》。


 必要な分だけ見せる。


「……《白銀魔晶核》まで」


「レアドロップでした」


「売却します?」


「しません」


「即答ですね」


「何か作れそうなので」


「それも予想してました」


 エレナさん、だいぶ私のことを分かってきた気がする。


「あと宝箱も出ました」


「フィールドボスなので確定ですね。何箱でした?」


「一個」


「ランクは?」


「白金」


「…………白金?」


「はい」


「まだ開けてないですよね?」


「これから開けます」


「そうですか」


 エレナさんが一度深呼吸した。


「明日、変な物を持ってこないでくださいね」


「変な物?」


「Aランクのエピック魔弓みたいな物です」


「あれはカッコいいですよ」


「そこじゃありません」


◇◇◇


 《銀月亭》へ戻る。


 ノルンには裏庭で待ってもらい、先に夕食。


 今日は焼いた鶏肉に香草を使ったソース。


 温かい野菜スープ。


 黒パン。


 食べ終わってから、ノルン用にも大きな肉を何塊か用意してもらった。


「はい」


「ウォン!」


 大きな肉を一口で持っていく。


「豪快」


 私はその横へ座る。


「じゃあ食べ終わったら開けよう」


 ノルンの食べる速度が少し上がった。


「そんな急がなくても逃げないよ」


◇◇◇


 しばらくして。


 裏庭。


 人がいないことを確認する。


 私は《インベントリ》から宝箱を取り出した。


 ズンッ。


 白銀色の金属。


 金色の縁取り。


 中央には大きな青白い魔晶。


━━━━━━━━━━


《白金の宝箱》


━━━━━━━━━━


「近くで見ると豪華」


 ノルンも隣へ座る。


「開けるよ」


「ウォン」


 蓋へ手を掛ける。


「開封」


 カチッ。


 瞬間。


 白銀と金色の光が一気に溢れ出した。


「うわっ」


 金箱より明らかに眩しい。


 光が収まる。


 そして。


━━━━━━━━━━


《白金の宝箱》


開封


━━━━━━━━━━


月蝕魔導腕輪エクリプス・ブレスレット》×1


《魔導書:属性魔力矢》×1


《戦技書:魔穿狙撃》×1


《白銀獣王晶》×1


《高純度ミスリル銀塊》×50


《月銀塊》・高品質×30


《白金魔晶》×10


《高純度創晶石(アルケリウム)》×30


《特級万能霊薬》×5


《白金貨》×2000


━━━━━━━━━━


「…………」


 多い。


 しかも。


「白金貨、二千?」


 金貨じゃない。


 白金貨。


 それが二千枚。


「金箱と桁が違う……」


 今すぐ使う予定はない。


 全部インベントリへ。


「まずこれ」


 一番気になる物を手に取った。


 黒銀色の腕輪。


 細身で邪魔にならない形。


 中央には、黒い円を銀白色の光が取り囲むような小さな魔晶が埋め込まれている。


「カッコいい」


 《ファントム・ブラック・ムーン》とも似合いそう。


「《上級鑑定》」


━━━━━━━━━━


月蝕魔導腕輪エクリプス・ブレスレット


装備ランク:


S(ランク)


品質:


伝説級(レジェンド)


分類:


高位魔導腕輪


━━━━━━━━━━


「……S?」


 もう一度見る。


━━━━━━━━━━


S(ランク)


伝説級(レジェンド)


━━━━━━━━━━


「えっ」


 《ファントム・ブラック・ムーン》ですらAランクのエピック。


 それより上。


「白金箱、すごすぎない?」


 性能を確認する。


━━━━━━━━━━


《魔力制御超強化》


《魔力矢威力大幅強化》


《魔力矢生成速度大幅上昇》


《魔力充填速度大幅上昇》


《魔法発動速度大幅上昇》


《属性付与効率大幅上昇》


《多重照準超補助》


《魔力消費大幅軽減》


《魔力収束強化》


《魔法威力強化》


《射撃魔法連携強化》


《魔力隠蔽強化》


《高位魔力障壁》


《装備者魔力循環最適化》


━━━━━━━━━━


「多い」


 しかも全部強い。


「装備する」


 迷う理由がない。


 左手首へ着ける。


 カチッ。


 サイズが自動で調整された。


「おお……」


 魔力を流してみる。


 違う。


 明らかに違う。


 いつもなら自分で意識して整えていた魔力が、腕輪を通した瞬間に自然と綺麗な流れへ整っていく。


「すごく使いやすい」


 右手へ魔力を集める。


「《雷槍(ライトニング・ランス)》」


 バチッ!


 一瞬。


「速っ」


 発動までほとんど間がない。


 もちろん撃たずに消す。


「これ、魔法まで強くなるんだ」


 弓だけじゃない。


 魔法。


 魔力制御。


 隠密。


 全部。


「白金箱すごい」


◇◇◇


 次。


━━━━━━━━━━


《魔導書:属性魔力矢》


品質:逸話級(エピック)


使用することで


《属性魔力矢》


を習得する。


━━━━━━━━━━


使用可能属性:








━━━━━━━━━━


「これ欲しかった」


 魔法を矢へ付与することはすでに試している。


 でもこれはもっと直接的。


 最初から属性魔力矢として形成できる。


「使用」


━━━━━━━━━━


《属性魔力矢》Lv1


習得


━━━━━━━━━━


「Lv10」


━━━━━━━━━━


《属性魔力矢》


Lv1



Lv10 MAX


━━━━━━━━━━


 使える矢も表示された。


━━━━━━━━━━


火炎魔力矢(フレイム・マナアロー)


水流魔力矢(アクア・マナアロー)


氷結魔力矢(アイス・マナアロー)


疾風魔力矢(ゲイル・マナアロー)


雷撃魔力矢ライトニング・マナアロー


光輝魔力矢(ルミナス・マナアロー)


━━━━━━━━━━


「分かりやすい」


 これなら、何の属性を撃っているのか自分でもすぐ分かる。


「試したい」


 でもここは宿の裏庭。


 さすがに撃てない。


「明日」


◇◇◇


 次は黒い戦技書。


━━━━━━━━━━


《戦技書:魔穿狙撃》


品質:伝説級(レジェンド)


━━━━━━━━━━


使用条件:


《上級弓術》Lv10


《魔導弓術》Lv10


《狙撃強化》Lv10


《貫通射撃強化》Lv10


《魔力収束》Lv10


━━━━━━━━━━


条件達成済み


━━━━━━━━━━


習得可能:


魔穿狙撃マナ・ピアース・スナイプ


━━━━━━━━━━


「これも」


 使用。


━━━━━━━━━━


新規戦技(アーツ)習得


魔穿狙撃マナ・ピアース・スナイプ


━━━━━━━━━━


単一標的への超高威力狙撃。


魔力を極限まで収束し、

一射へ集中させる。


━━━━━━━━━━


《魔力超収束》


《超長距離補正》


《超貫通補正》


《弱点狙撃補正》


《障壁貫通補助》


━━━━━━━━━━


「ボス用だ」


 《マルチロック・シュート》が多数。


 《マナ・ピアース・スナイプ》が単体。


「使い分けできる」


 しかも《エクリプス・ブレスレット》は魔力収束と狙撃連携まで強化する。


「絶対強い」


 早く撃ちたい。


◇◇◇


 最後に。


 妙にノルンが気にしている物。


 白銀色の結晶。


「これ?」


「クゥン」


「珍しい声」


 私は結晶を取り出した。


 拳より少し大きい。


 内部に白銀色の光が渦を巻いている。


━━━━━━━━━━


《白銀獣王晶》


分類:特殊進化触媒


品質:逸話級(エピック)


━━━━━━━━━━


高位の白銀系魔獣が

さらなる上位種へ至る際に用いる

特殊な進化触媒。


単独では進化条件を満たさない。


━━━━━━━━━━


適合対象を確認……


━━━━━━━━━━


「ん?」


 光がノルンへ伸びる。


━━━━━━━━━━


適合対象


《ノルン》


━━━━━━━━━━


「ノルン用!?」


「ウォン!」


 ノルンの尻尾が大きく揺れた。


━━━━━━━━━━


《ノルン》


進化条件の一部を達成しました


━━━━━━━━━━


《白銀獣王晶》


条件達成


━━━━━━━━━━


残り進化条件:


未達成


━━━━━━━━━━


進化先:


未解放


━━━━━━━━━━


「まだ進化はできない」


 ちょっと安心した。


 今すぐ進化するのも見てみたいけど。


 ノルンは仲間になったばかり。


「今の姿もいっぱい見たいしね」


「ウォン?」


 大きな頭を撫でる。


 白銀色の毛が指の間を抜ける。


「でも進化したら、もっとカッコよくなるんだろうなあ」


「ウォオオン!」


「自信あるんだ」


 《白銀獣王晶》は大切に収納。


◇◇◇


 残った素材も確認する。


━━━━━━━━━━


《高純度ミスリル銀塊》×50


《月銀塊》・高品質×30


《白金魔晶》×10


《高純度創晶石(アルケリウム)》×30


《特級万能霊薬》×5


《白金貨》×2000


━━━━━━━━━━


「白金魔晶も気になる」


━━━━━━━━━━


《白金魔晶》


分類:超高純度魔晶素材


品質:高品質


白金級宝箱などから

稀に得られる高密度魔晶。


高位魔導装備、

高出力魔道具、

特殊錬金の素材として利用可能。


━━━━━━━━━━


「これも取っておこう」


 使いたい物がまた増えた。


 でも今すぐ全部使う必要はない。


 素材は貯めておけばいい。


「それにしても……」


 左手を見る。


 黒銀色の《エクリプス・ブレスレット》。


━━━━━━━━━━


S(ランク)


伝説級(レジェンド)


━━━━━━━━━━


「私、Dランクなのに」


 弓はAランク。


 腕輪はSランク。


「装備だけすごいことになってる」


「ウォン」


「ノルンも強いけどね」


 Lv58。


 《徘徊強敵ワンダリングモンスター》だった巨大狼。


「私たち、だいぶ変わってきたなあ」


◇◇◇


 翌日のことを考える。


 試したいもの。


 《属性魔力矢》。


 《魔穿狙撃》。


 《エクリプス・ブレスレット》。


 そして。


 大量に手に入れたミスリルや月銀。


「新しい場所にも行きたい」


 でもまずは。


「新しい技、試し撃ちしよう」


「ウォン!」


「ノルンも一緒に行く?」


「ウォオオン!」


「決まり」


 白銀色の巨大な頭を撫でる。


 その後。


 私はもう一度だけ《ファントム・ブラック・ムーン》を取り出した。


 黒銀色の魔弓。


 左腕には《エクリプス・ブレスレット》。


 並べて見る。


「……めちゃくちゃカッコいい」


 弓だけでもカッコよかった。


 でも伝説級の黒銀色の腕輪まで加わると、さらに似合う。


「明日が楽しみ」


 新しい矢。


 新しい狙撃技。


 伝説級の腕輪。


 そしてノルン。


 また試したいことが増えてしまった。

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