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第十七話 白銀魔晶巨像と白金の宝箱



 《白銀魔晶巨像ミスリル・クリスタルゴーレム》の胸部。


 人の身体より大きな青白い魔晶核へ、膨大な魔力が集まっていく。


━━━━━━━━━━


《魔晶砲》


充填


20%


40%


60%


━━━━━━━━━━


「いきなり大技」


 私は《幻穿黒魔弓ファントム・ブラック・ムーン》を構えたまま後退する。


「ノルン、散開!」


「ガウッ!」


 白銀色の巨体が地面を蹴る。


━━━━━━━━━━


《白銀疾駆》


━━━━━━━━━━


 ノルンが右へ。


 私は左へ。


━━━━━━━━━━


《魔晶砲》


100%


発射


━━━━━━━━━━


 ドォォォォンッ!


 青白い巨大光線が峡谷を貫いた。


「《岩壁(ロック・ウォール)》!」


 地面から何重もの岩壁を生み出す。


 一枚。


 二枚。


 三枚。


 魔晶砲に触れた瞬間、全部まとめて砕けた。


「やっぱり止まらない!」


「《光盾(ライト・シールド)》!」


 光の障壁を斜めに展開。


 正面から受けない。


 魔晶砲の軌道を横へ逸らす。


 ギィィィンッ!


 光線が峡谷の岩壁へ直撃した。


 ドゴォン!


 巨大な岩壁が崩れ落ちる。


「威力高すぎ」


 あれをまともに受けるのは嫌だ。


 でも。


「充填中は胸の核が丸見えだった」


 弱点候補。


「ノルン!」


「ガアアッ!」


 すでに走っている。


◇◇◇


 ノルンが《ミスリル・クリスタルゴーレム》の側面へ回り込む。


 銀白色の《白銀疾装シルバー・ゲイルハーネス》が光った。


━━━━━━━━━━


《風纏》


━━━━━━━━━━


 白銀色の毛並みを銀緑色の風が包む。


 速度上昇。


「私も補助する」


 右手をノルンへ向ける。


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》!」


 さらに追い風を与える。


「ガウッ!」


 一段階。


 いや、二段階くらい速くなった。


 巨大ゴーレムの視線が追いついていない。


「いい!」


 ノルンが脚へ飛びかかる。


 巨大な牙。


 ガキンッ!


「グルッ!?」


 噛みついた瞬間、白銀色の装甲に弾かれた。


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶装甲》


━━━━━━━━━━


「ミスリル装甲、硬い」


 その時。


 ゴーレムが片脚を上げた。


「ノルン、離れて!」


━━━━━━━━━━


《地砕撃》


━━━━━━━━━━


 巨大な脚が地面へ叩きつけられる。


 ドゴォォォンッ!


 衝撃波。


 地面が割れる。


 岩片が飛ぶ。


「《光盾(ライト・シールド)》!」


 私の前に光の盾。


 ノルンは大きく跳び、空中で衝撃波をかわした。


「ウォンッ!」


「大丈夫そう」


 じゃあ。


「硬いなら、まず装甲を剥がす」


◇◇◇


 《ファントム・ブラック・ムーン》へ魔力を流す。


 銀白色の魔力矢。


「《魔力収束》」


 一本へ圧縮。


「《貫通射撃強化》」


 さらに。


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》」


 魔力矢の周囲に螺旋状の風を纏わせる。


「《穿甲矢》!」


 放つ。


 無音。


 次の瞬間。


 ガァンッ!


 右膝のミスリル装甲へ直撃。


 亀裂。


「入った!」


 もう一発。


「《穿甲矢》!」


 同じ場所。


 バキンッ!


 白銀色の装甲板が砕け飛んだ。


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶装甲》


右膝部


破損


━━━━━━━━━━


「ちゃんと壊せる」


 ゴーレムの頭部がこちらを向いた。


「ゴオオオオオオッ!」


 両腕を持ち上げる。


━━━━━━━━━━


《晶柱生成》


━━━━━━━━━━


「下!」


 地面の魔力反応。


「ノルン、走って!」


 ズドドドドドンッ!


 青白い魔晶柱が地面から次々と突き出す。


 一メートル。


 二メートル。


 さらに巨大なものは五メートル以上。


 私の足元にも。


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》!」


 身体を加速。


 前へ跳ぶ。


 背後から魔晶柱が突き上がる。


「危なっ」


 前方。


 また反応。


「《岩槍(ストーン・ランス)》!」


 こちらも地面から岩槍を生成。


 魔晶柱へ横からぶつける。


 ドンッ!


 軌道がずれた。


「魔法便利」


 攻撃だけじゃない。


 地形そのものへ干渉できる。


 今まで弓ばっかり使っていたの、本当にもったいなかったかもしれない。


◇◇◇


「今度は魔法だけで」


 ゴーレムの左脚。


「《雷槍(ライトニング・ランス)》!」


 青白い雷槍を放つ。


 バチィィィンッ!


 白銀装甲へ直撃。


 雷が全身へ走る。


「金属なら雷は通る」


━━━━━━━━━━


《雷属性攻撃》


伝導


━━━━━━━━━━


 動きが一瞬鈍った。


「もう一発!」


「《雷縛(サンダー・バインド)》!」


 雷の帯が両脚へ絡みつく。


 ゴーレムが完全に止まるわけではない。


 でも。


「動きが遅くなった」


「ノルン!」


「ガアアアッ!」


 待っていたように突っ込む。


 装甲を壊した右膝。


「そこ!」


 ノルンが跳躍。


 巨大な牙が、露出した内部へ食い込んだ。


 バキッ!


 さらに前脚。


 銀白色の爪。


 ザンッ!


━━━━━━━━━━


《右脚関節》


大破


━━━━━━━━━━


「ゴオオオッ!」


 巨像が傾く。


「やった!」


 右膝を地面へついた。


 高さが下がる。


 そして。


 胸の核が狙いやすくなる。


「今なら――」


 《ファントム・ブラック・ムーン》を構える。


 胸部。


 大型魔晶核。


「《魔力照準》」


━━━━━━━━━━


標的捕捉


成功


━━━━━━━━━━


「《魔力充填射撃》」


━━━━━━━━━━


20%


40%


60%


━━━━━━━━━━


 でも。


 ゴーレムの胸部にも光が集まり始めた。


「あっちも撃つ気」


━━━━━━━━━━


《魔晶砲》


充填開始


━━━━━━━━━━


「なら勝負」


 こちらも充填。


━━━━━━━━━━


《魔力充填射撃》


80%


━━━━━━━━━━


《魔晶砲》


60%


━━━━━━━━━━


「《魔力収束》」


━━━━━━━━━━


《魔力充填射撃》


100%


━━━━━━━━━━


「まだ足りない」


 攻撃魔法を重ねる。


「《雷槍(ライトニング・ランス)》」


 雷の魔力。


 それを撃たず。


 生成した魔力矢へ纏わせる。


 バチバチッ!


「できた」


━━━━━━━━━━


《雷属性付与》


魔力矢


━━━━━━━━━━


「さらに」


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》」


 雷を纏った魔力矢へ、圧縮した追い風。


━━━━━━━━━━


《風属性補助》


矢速上昇


貫通補正上昇


━━━━━━━━━━


「これなら」


 魔力。


 雷。


 風。


 弓。


 全部重ねる。


「《鷹眼射》!」


 放つ。


 音はなかった。


 黒銀色の弓から、雷を纏った銀白色の閃光が消える。


 ほぼ同時。


━━━━━━━━━━


《魔晶砲》


発射


━━━━━━━━━━


 ゴーレムの胸から巨大光線。


「ノルン!」


「ガアアアアアッ!」


━━━━━━━━━━


《銀嵐刃》


━━━━━━━━━━


 ノルンが横から巨大な風刃を放った。


 魔晶砲へぶつかる。


 ほんの一瞬。


 軌道がずれた。


「今!」


 私の矢が魔晶砲の横を抜ける。


 胸部。


 青白い核。


 直撃。


 ドォォォォォンッ!


「ゴオオオオオオッ!!」


 巨大な身体が揺れた。


━━━━━━━━━━


《大型魔晶核》


損傷


━━━━━━━━━━


「まだ倒れない!?」


 さすがボス。


 でも。


「効いてる」


◇◇◇


 ゴーレムの胸部。


 砕けた核の亀裂から大量の魔力が漏れ出している。


 すると。


━━━━━━━━━━


《魔力再生》


発動


━━━━━━━━━━


「回復するの?」


 周囲の魔晶が一斉に光った。


 峡谷に満ちる魔力がゴーレムへ集まり始める。


 砕いた右膝まで少しずつ再生していく。


「それは駄目」


 私は地面へ手を向ける。


 周囲の魔晶から魔力を吸っているなら。


「接続を切る」


「《岩壁(ロック・ウォール)》!」


 一枚じゃない。


 ゴーレムの周囲を囲むように複数展開。


 地面と周囲の魔晶群との間を遮る。


 さらに。


「《氷鎖(アイス・チェイン)》!」


 青白い氷の鎖を何重にも生成。


 両腕。


 胴。


 左脚。


 巨体へ絡みつける。


「グオオオッ!」


 氷が軋む。


 砕かれる。


 でも時間は稼げる。


━━━━━━━━━━


《魔力再生》


効率低下


━━━━━━━━━━


「よし」


「ノルン、胸!」


「ガウッ!」


 ノルンが走る。


 でも十メートルを超える巨像の胸は高い。


「足場作る!」


「《岩槍(ストーン・ランス)》!」


 攻撃じゃない。


 ノルンの進行方向。


 斜め上へ連続して岩柱を作る。


 一段。


 二段。


 三段。


「ウォオオオン!」


 ノルンが岩柱を駆け上がる。


「カッコいい!」


 白銀色の巨狼。


 銀白色の軽装甲。


 風を纏いながら空中へ。


━━━━━━━━━━


《白銀疾駆》



《風纏》


━━━━━━━━━━


 胸部へ。


「ガアアアアッ!」


 バキィンッ!


 ノルンの牙が、亀裂の入った大型魔晶核へ突き刺さった。


━━━━━━━━━━


《大型魔晶核》


破損率


72%


━━━━━━━━━━


「あと少し!」


 ノルンが蹴って離脱。


「次は私」


 《ファントム・ブラック・ムーン》。


 魔力矢生成。


「一発じゃなくて」


 複数。


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 すべて同じ一点へ。


━━━━━━━━━━


《魔力照準》


単一標的多重固定


━━━━━━━━━━


「《多重標的射撃マルチロック・シュート》」


 普段は複数の敵へ撃つ。


 でも今は。


「全部、核」


 五本の魔力矢が浮かぶ。


「《追尾矢》」


「《貫通射撃強化》」


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》!」


 放つ。


 シュンッ!


 五本の銀白色。


 一発目。


 亀裂へ。


 二発目。


 同じ場所。


 三。


 四。


 五。


 ドドドドドンッ!


━━━━━━━━━━


《大型魔晶核》


破損率


81%


89%


94%


98%


━━━━━━━━━━


「あと二!」


 ゴーレムが腕を振り上げる。


「ゴオオオオッ!」


 最後の抵抗。


━━━━━━━━━━


《地砕撃》


発動


━━━━━━━━━━


「ノルン、跳んで!」


 ドォォォォォンッ!


 峡谷全体が揺れる。


 私は《疾風加速》で跳躍。


 ノルンも跳ぶ。


 空中。


「これで終わり」


 《ファントム・ブラック・ムーン》を引く。


「《雷槍(ライトニング・ランス)》」


 矢へ雷。


「《魔力収束》」


 そして。


「《鷹眼射》!」


 放つ。


 銀白色と青白色。


 二色の光が一直線に走った。


 胸部。


 核。


 中心。


 パキンッ――。


 小さな音。


 次の瞬間。


 青白い大型魔晶核が内側から砕け散った。


━━━━━━━━━━


《大型魔晶核》


完全破壊


━━━━━━━━━━


「ゴ……オ……」


 巨像の光が消える。


 両腕が落ちる。


 片膝。


 そして。


 ズズズズズッ――。


「ノルン、離れて!」


「ウォン!」


 巨体が倒れる。


 ドォォォォォンッ!


 白銀峡谷に巨大な轟音が響き渡った。


━━━━━━━━━━


《フィールドボス討伐》


白銀魔晶巨像ミスリル・クリスタルゴーレム


Lv59


討伐成功


━━━━━━━━━━


「……倒した」


 着地。


 ノルンも隣へ降りる。


「ノルン!」


「ウォンッ!」


 大きな頭を抱える。


「やったね!」


 尻尾が大きく揺れた。


「初めてのボス戦、勝った!」


◇◇◇


 そして。


 表示が止まらない。


━━━━━━━━━━


《自動収集》


発動


━━━━━━━━━━


《高純度ミスリル銀鉱》×320


《ミスリル銀塊》×180


《白銀魔晶》×140


《大型魔晶核片》×80


《高純度魔晶》×120


《月銀鉱》・良質×90


《高純度創晶石(アルケリウム)》×100


《魔晶巨像の白銀装甲》×60


《魔晶巨像の魔力結晶》×70


《魔晶巨像の岩核》×10


━━━━━━━━━━


「うわ……」


 大量。


「ミスリル三百二十」


 さらに精錬済みの銀塊が百八十。


「これ、装備いっぱい作れる」


 でも。


 まだ表示がある。


━━━━━━━━━━


《レアドロップ》


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶核》×1


━━━━━━━━━━


「出た!」


 すぐ取り出す。


 両手で抱えるくらいの大きさ。


 白銀色の外殻。


 内部には青白い魔力が脈打つように流れている。


「《上級鑑定》」


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶核》


分類:希少特殊素材


品質:希少級(レア)


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶巨像》の体内で

長期間にわたり形成された特殊魔晶核。


ミスリル成分と高密度魔力が

極めて安定した状態で融合している。


━━━━━━━━━━


主適性:


《高位魔導装備製作》


《魔力障壁付与》


《魔力蓄積》


《魔力伝導強化》


《装備耐久強化》


《魔力砲撃機構》


━━━━━━━━━━


「魔力砲撃機構?」


 気になる。


 すごく気になる。


「何か作れそう」


 収納。


◇◇◇


 そして。


 最後。


━━━━━━━━━━


《フィールドボス討伐》


宝箱確定


━━━━━━━━━━


 光が集まる。


「何色?」


 銀。


 違う。


 金。


 ……でもない。


 金色より淡く、銀色より明るい。


「これ……」


 地面へ現れた宝箱は、白銀色の金属で作られていた。


 縁には金色の装飾。


 中央には大きな魔晶石。


━━━━━━━━━━


《白金の宝箱》


×1


━━━━━━━━━━


「白金……!」


 初めて。


 今まで出た最高は金箱だった。


「金の上」


 宝箱の前へしゃがむ。


「……開けたい」


 ノルンを見る。


「ウォン」


「開けていい?」


「ウォンッ!」


「だよね」


 私は蓋へ手を掛けた。


 でも。


「待って」


 昨日。


 三百三十二個の宝箱を開けた。


 その中でも金箱はかなり豪華だった。


 そして《ファントム・ブラック・ムーン》も金箱から出た。


 その上。


 白金。


「……何出るんだろ」


 ものすごく開けたい。


 でも。


 ここは白銀峡谷の奥地。


 周囲に魔物が来る可能性もある。


「王都でゆっくり開けよう」


「ウォン?」


「楽しみは取っておく」


 白金箱へ手を触れる。


━━━━━━━━━━


《白金の宝箱》


収納


━━━━━━━━━━


《未開封宝箱》


《木の宝箱》×?


《銅の宝箱》×?


《鉄の宝箱》×?


《銀の宝箱》×?


《白金の宝箱》×1


━━━━━━━━━━


「帰ったら開けよう」


 Aランクのエピック魔弓を出した金箱。


 そのさらに上。


 期待しない方が無理だった。


◇◇◇


 私はノルンの背中へ乗る。


「帰ろうか」


「ウォン!」


 白銀峡谷の奥。


 倒れた《ミスリル・クリスタルゴーレム》の跡を振り返る。


 大量のミスリル。


 《白銀魔晶核》。


 初めての白金箱。


「今日も大収穫」


 ノルンが走り出す。


 白銀色の毛が風になびく。


 銀白色の装甲が光る。


 その背中から、私は《インベントリ》をもう一度開いた。


━━━━━━━━━━


《白金の宝箱》


×1


未開封


━━━━━━━━━━


「……やっぱり今開けたい」


「ウォン!」


「分かってる。王都まで我慢する」


 でも。


 帰り道。


 私は何度も《白金の宝箱》の表示を開いてしまった。

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