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第十六話 白銀の従魔装備と峡谷奥部



 翌朝。


 目を覚ました私は、着替えを済ませると宿の裏庭へ向かった。


「おはよう、ノルン」


「ウォン!」


 白銀色の巨大狼が顔を上げた。


 伏せていても大きい。


 立ち上がれば肩まで二メートルを少し超え、頭はさらに高くなる。


 朝日に照らされた白銀色の毛並みが輝いていた。


「……やっぱりカッコいい」


「ウォフ」


 褒められているのが分かるらしい。


 少し胸を張った。


「でも今日は、もっとカッコよくなる予定」


「ウォン?」


 昨日思いついたこと。


 従魔用装備。


「ノルンの装備、作りに行こう」


◇◇◇


 朝食を済ませた後。


 私はノルンを連れて錬金術師ギルドへ向かった。


 もう昨日ほどの騒ぎにはならない。


 それでも。


「でっか……」


「あれ昨日の狼だ」


「従魔らしいぞ」


「白銀色、すげえな」


 やっぱり見られる。


 ノルン本人は気にしていない。


「慣れるの早いね」


「ウォン」


 錬金術師ギルドへ到着。


 さすがに建物の中へノルンを入れるのは難しいので、裏手の作業場を借りることになった。


「さて」


 《インベントリ》を開く。


 使うのは、白銀峡谷で集めた素材。


━━━━━━━━━━


《従魔装備製作》


《ミスリル銀塊》・良質


《ミスリル銀鉱》・良質


《月銀鉱》・良質


《銀牙狼の毛皮》


《深緑剣牙虎の腱》


《風晶石》


《翠嵐獣核》


《高純度創晶石(アルケリウム)


━━━━━━━━━━


「《翠嵐獣核》も使おう」


 風属性。


 敏捷。


 移動速度。


 回避。


 全部ノルンと相性がいい。


「重い鎧はいらないよね」


「ウォン」


「だよね」


 ノルンの最大の武器は速さ。


 それを殺すような重装備は合わない。


 だから。


 白銀色の毛並みを隠さず。


 急所だけ守り。


 走る邪魔をしない。


 そんな装備を思い浮かべる。


「《上級錬金術》」


「《魔導装備製作》」


 素材が光に包まれた。


━━━━━━━━━━


《製作成功》


━━━━━━━━━━


白銀疾装シルバー・ゲイルハーネス


品質:高品質


分類:大型従魔用軽装甲


装備対象:


大型四足魔獣


━━━━━━━━━━


ミスリルを主体とした

軽量従魔用戦闘装備。


白銀色の毛並みと可動域を阻害せず、

胸部、肩、前脚、首周辺などの

重要部位のみを保護する。


━━━━━━━━━━


《物理防御強化》


《軽量化》


《可動補助》


《風属性強化》


《敏捷補助》


《疾走速度上昇》


《回避補助》


《魔力伝導》


━━━━━━━━━━


「できた」


 銀白色のミスリル装甲。


 そこへ淡い青銀色の魔力線。


 黒や茶色の革ではなく、ノルンの白銀色の毛並みに馴染むような色合いになっている。


「ノルン、着けてみよう」


「ウォン!」


◇◇◇


 装備を取り付ける。


 首。


 胸。


 肩。


 前脚。


 必要最低限。


 全身を覆わないから、白銀色の長い毛はそのまま見える。


「……」


 一歩下がる。


 ノルンを見る。


「めちゃくちゃカッコいい」


 元からカッコよかった。


 でも。


 銀白色の軽装甲が加わると、一気に戦闘用の魔獣らしくなった。


━━━━━━━━━━


《ノルン》


装備:


白銀疾装シルバー・ゲイルハーネス


━━━━━━━━━━


「似合いすぎ」


「ウォオオン!」


 ノルンも気に入ったらしい。


 大きく吠える。


 その瞬間。


 装甲に埋め込まれた《風晶石》と《翠嵐獣核》が淡く光った。


 白銀色の毛の周囲へ、薄い風が流れる。


「おお……」


 さらに。


「走ってみる?」


「ウォン!」


 ノルンが地面を蹴った。


 シュンッ!


「消えた」


 作業場の反対側。


 もうそこにいる。


「速くなってる」


 元から速かったのに。


 これ以上速くなるんだ。


「乗る時気をつけないと……」


◇◇◇


 装備が完成した後。


 私は冒険者ギルドへ向かった。


「おはようございます」


「おはようございます、リリスさん」


 エレナさんが私を見る。


 その後ろ。


 ノルンを見る。


「…………」


「どうしました?」


「昨日より強そうになってません?」


「装備作りました」


「一晩で?」


「はい」


「そうですか……」


 もう驚くのを諦めたみたいだった。


「今日は依頼を受けたいです」


「どれです?」


 掲示板を見る。


 目的は決まっている。


━━━━━━━━━━


《Dランク依頼》


《白銀峡谷奥部調査》


依頼内容:


白銀峡谷奥部の

魔物分布・鉱脈・地形調査。


特記事項:


フィールドボス

《白銀魔晶巨像》の

活動域へ接近する可能性あり。


━━━━━━━━━━


「これ」


「……やっぱり」


「予想してました?」


「昨日の時点で」


 エレナさんが依頼書を受け取る。


「討伐依頼ではありません」


「分かってます」


「《白銀魔晶巨像》を見つけても、無理に戦う必要はありません」


「はい」


「本当に?」


「調査優先です」


「そこは信じます」


 少し信用が戻った。


「ただ」


「ただ?」


「向こうから襲ってきたら戦います」


「……まあ、それは仕方ありません」


 依頼受注。


━━━━━━━━━━


《白銀峡谷奥部調査》


受注完了


━━━━━━━━━━


「行こう、ノルン」


「ウォン!」


◇◇◇


 王都を出て。


 ノルンの背中へ乗る。


「今日は最初からお願い」


「ウォン」


「でも全力は――」


 ドンッ!


「速あああっ!?」


 景色が流れた。


「ノルン! ちょっと落として!」


「ウォッ!」


 速度が下がる。


「装備でさらに速くなってる!」


「ウォフ」


 嬉しそう。


「ほどほどでいいからね」


 それでも徒歩とは比べものにならない。


 昨日かなり時間をかけて進んだ道を、ノルンは驚くほど短時間で走り抜けていく。


◇◇◇


 白銀峡谷。


 到着。


「早い……」


 ノルンから降りる。


 銀灰色の岩壁。


 青銀色に光る鉱脈。


 今日も《自動収集》がすぐに働いた。


━━━━━━━━━━


《銀鉱石》×90


《白銀砂》×75


《ミスリル銀鉱》×44


《風晶石》×32


《雷晶石》×28


《銀月花》×35


《晶露茸》×27


━━━━━━━━━━


「今日もいっぱい」


 でも目的は奥部。


「行こう」


◇◇◇


 昨日よりさらに峡谷の奥へ。


 道幅が狭くなる。


 崖は高くなる。


 露出する鉱脈も増えていった。


「ん?」


 岩壁の一部。


 青銀色の光が強い。


━━━━━━━━━━


《ミスリル銀鉱脈》


品質:


良質


━━━━━━━━━━


「良質!」


 《採掘》。


━━━━━━━━━━


《ミスリル銀鉱》・良質×96


━━━━━━━━━━


「九十六」


 嬉しい。


「これならかなり作れる」


 さらに。


━━━━━━━━━━


《月銀鉱》・良質×42


《高純度アルケリウム》×31


《雷晶石》・良質×24


《風晶石》・良質×26


━━━━━━━━━━


「奥の方が品質いいんだ」


 危険な場所ほど素材も良い。


「もっと奥も期待できそう」


「グル……」


 ノルンが突然低く唸った。


「敵?」


 耳が前を向いている。


 私も《上級索敵》。


「複数」


━━━━━━━━━━


《銀甲蜥蜴》


Lv40~44


×7


《晶角鹿》


Lv41~46


×5


━━━━━━━━━━


「二種類?」


 何かから逃げている。


 その後ろ。


 さらに反応。


「……大きい」


 銀色の甲殻。


 六本の脚。


 巨大な鋏。


━━━━━━━━━━


白銀岩蠍シルバークラッグスコーピオン


Lv49


×3


━━━━━━━━━━


「新しい魔物」


 大型の蠍。


 背中にはミスリルらしき銀白色の鉱物殻まで生えている。


「素材欲しい」


「ウォン!」


「ノルン、正面お願い」


 ノルンが走る。


━━━━━━━━━━


《白銀疾駆》


━━━━━━━━━━


 銀白色の風を引きながら、一体目へ突進。


 ドゴンッ!


 巨大蠍が横転する。


「私は残り」


 《ファントム・ブラック・ムーン》を構える。


 まず。


「《雷縛(サンダー・バインド)》!」


 青白い雷の帯。


 二体の脚へ絡みつく。


 バチバチッ!


 動きが止まる。


「《魔力照準》」


━━━━━━━━━━


標的捕捉


2


━━━━━━━━━━


「《穿甲矢》」


 銀白色の魔力矢。


 そこへ。


「《疾風加速(ゲイル・アクセル)》」


 追い風を纏わせる。


「《多重標的射撃マルチロック・シュート》!」


 シュンッ!


 二本。


 甲殻の隙間。


 同時に貫通。


━━━━━━━━━━


白銀岩蠍シルバークラッグスコーピオン


×2


討伐


━━━━━━━━━━


「ノルンは?」


 振り返る。


「ガアアッ!」


 ノルンが蠍の巨大な鋏を前脚で押さえつけていた。


 もう片方の鋏が迫る。


「《岩槍(ストーン・ランス)》!」


 ドドンッ!


 地面から岩槍が突き上がり、鋏を横へ弾く。


「今!」


「ガウッ!」


 ノルンが喉元へ噛みついた。


 バキンッ!


━━━━━━━━━━


白銀岩蠍シルバークラッグスコーピオン


討伐


━━━━━━━━━━


「いい連携」


「ウォン!」


◇◇◇


━━━━━━━━━━


《自動収集》


《白銀岩蠍の銀甲殻》×60


《白銀岩蠍の大鋏》×30


《白銀岩蠍の尾針》×30


《白銀岩蠍の毒袋》×20


《白銀岩蠍の脚甲》×70


《白銀岩蠍の魔石》×30


《ミスリル鉱殻片》×45


遺骸×3


━━━━━━━━━━


「ミスリルまで取れる」


 魔物素材として鉱物が手に入る。


「いいなあ」


 そして宝箱。


━━━━━━━━━━


《宝箱ドロップ》


《銀の宝箱》×2


《鉄の宝箱》×1


━━━━━━━━━━


「銀二つ」


 開けたい。


 でも。


「後にしよう」


 また貯めるのも楽しい。


◇◇◇


 さらに奥へ。


 峡谷の風景が変化していった。


 岩壁の中に魔晶が増える。


 青。


 白。


 紫。


 無数の結晶が地面から突き出している。


━━━━━━━━━━


《魔晶群生地》


━━━━━━━━━━


「綺麗……」


 《自動収集》。


━━━━━━━━━━


《魔晶石》×120


《高純度魔晶》×48


《風晶核》×12


《雷晶核》×10


《氷晶核》×8


《光晶核》×6


《白銀魔晶》×24


━━━━━━━━━━


「白銀魔晶?」


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶》


分類:希少魔晶素材


品質:良質


ミスリル鉱脈と高濃度魔力が

長期間接触することで形成される魔晶。


高い魔力保持能力と

金属強化適性を持つ。


━━━━━━━━━━


「装備に使えそう」


 収納。


 その直後。


 ノルンが立ち止まった。


「グルルル……」


 今までとは違う。


 明確な警戒。


「ノルン?」


 耳を伏せている。


 視線は峡谷の奥。


 私も《上級索敵》を広げた。


 そして。


━━━━━━━━━━


警告


超大型魔力反応


━━━━━━━━━━


「……いた」


 地面が。


 小さく震える。


 ズン。


 ズン。


 ズン。


 奥の岩壁。


 その向こうから。


 巨大な何かが歩いてくる。


「ノルン、下がって」


「グル……」


 でも逃げない。


 私の横へ立つ。


 頼もしい。


 やがて。


 峡谷の曲がり角から。


 巨大な腕が現れた。


 白銀色の金属。


 青白い結晶。


「大き……」


 次に肩。


 頭。


 胸。


 全身。


 高さは十メートルを超えている。


 巨大な人型。


 身体の大半は岩石。


 でもその表面には大量の白銀色のミスリル鉱石が装甲のように張りつき、胸部には人の身体より大きな青白い魔晶核が埋め込まれていた。


「《上級鑑定》」


━━━━━━━━━━


白銀魔晶巨像ミスリル・クリスタルゴーレム


Lv59


種族:超大型ゴーレム系魔物


区分:


《フィールドボス》


━━━━━━━━━━


白銀峡谷奥部に存在する

巨大鉱石ゴーレム。


長い年月をかけて

大量のミスリル銀鉱と魔晶を吸収し、

通常個体を遥かに上回る強度を獲得した。


━━━━━━━━━━


主能力


《白銀魔晶装甲》


《高密度魔力障壁》


《魔晶砲》


《晶柱生成》


《地砕撃》


《魔力再生》


━━━━━━━━━━


「ちゃんと魔法みたいに技名がある」


 分かりやすい。


 そして強そう。


 ものすごく。


「Lv59」


 ノルンはLv58。


 ほぼ同じ。


「グルルル……」


「大丈夫」


 私は《ファントム・ブラック・ムーン》を取り出した。


 黒銀色の弓。


 銀白色の光が走る。


「調査依頼だけど」


 ゴーレムの胸部が輝き始めた。


━━━━━━━━━━


《魔晶砲》


充填開始


━━━━━━━━━━


「あ」


 青白い光。


 明らかにこっちを狙っている。


「向こうはやる気みたい」


 私は弓を構えた。


「ノルン」


「ガウッ!」


「ボス戦、やってみようか」


 白銀色の巨狼が低く姿勢を落とす。


 その銀白色の装甲に、風の魔力が灯った。


━━━━━━━━━━


《白銀魔晶巨像》


VS


リリス



ノルン


━━━━━━━━━━

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