26.
『会社帰りにつまずいて、気づいたら異世界に!?
ばったばったと魔獣をなぎ倒し、命からがらたどり着いた人里。そこで出会った美形の騎士。え、でも、なんだか様子がおかしい...?
そう、ここは、美醜逆転の世界だったのです。
彼が醜くて、こけしなあたしが美人?
そんなの信じられないっ。
チグハグな二人が織り成すドキドキラブコメディー!
近日公開』
安っぽい映画の告知ナレーションが頭の中に流れた。
なんっだ、それ...
公開しても絶対に観に行かない。
はじめから血生臭いハードモードだし、本当に死ぬかと思ったし、そりゃキースさんは美形だけど、美形すぎて恐れ多い存在だ。
今後の先行きが見えなさすぎて、恋愛などという高尚なものに心を向ける気力もないわい。
頭の中の賑わいは決して表に出さず、私はひとつひとつ整理しながら話した。
「あの...お二人の容姿について不快に思うことはありません。見ず知らずのわた...僕に、親切にしてくださって本当に感謝してます」
素直な気持ちを伝えて、頭を下げた。
倒れたところを介抱してくれ、シャワーに着替えに食事まで与えてくれた。得体の知れない相手に、今も丁寧に礼儀正しく接してくれている。
たとえばこれが、私が想像する醜さを集めたような容姿の人が相手だったとする。
それでもやっぱり、感謝したと思う。
絶対に失礼な態度をとらないとは言いきれないけど、あの森で過ごした数日を思えば、どんな外見だろうとその優しさが心に染みたはずだ。
「そうか」
レグラスさんは、それだけ言って口の端だけ笑った。
キースさんは、無表情すぎて何を考えているのか分からない。
「魔術については、使えないので使わなかっただけです」
「は?」
「僕は、魔術が使えません」
誤魔化すのは無理そうなので、ぶっちゃけた。
日本人なのだから、魔術も魔法も使えません。
使える気配すらありません。
魔術とやらが使えたなら、森の中でもう少し快適に過ごせただろう。
「それは...本当ですか」
「本当です」
「そんな...」
紫の瞳が揺れる。
キースさんがそんなに動揺するとは。
この世界で、魔術が使えないということはそんなに大変なことなのだろうか。
レグラスさんを見ると、こちらも哀れみを含んだ目で私を見ていた。
「...わかった。言いにくいことを聞いて悪かった」
謝罪された。
よく分からないけど、可哀想な子として認定されたことは二人の表情から察した。
拙い文章をここまで読んでくださり、ありがとうございます。
勝手ながら、更新を少しお休みさせていただきます。
再開できた折には、またお付き合いいただけると嬉しいです。




