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25.

 

 テーブルに漂う微妙な空気。

 意外にも、沈黙を破ったのはキースさんだった。


「...あなたは」


 ゆっくりと、言葉を選ぶように話し始める。


「俺や団長と、普通に話をしていますよね」


「え、はい」


「こうして向かい合っても嫌な顔もしないし、叫ばないし、俺たちの前で食事までしている。それどころか...笑顔を見せてくれた。それが、とても不思議で」



 さっき、レグラスさんも似たようなことを言っていた。

 なぜ自分たちと普通に話せるのか、と。

 あれは言葉のことを言っていたんじゃない...?



「...俺たちの容姿が、不快ではないのですか?」



 不快って、なにが?...容姿?


 不安そうに揺れる紫の瞳から、目が離せない。


 とても大切なことを言われている気がするのに、核心が見えない。


「...ごめんなさい。言われている意味が分かりません。お二人をそんな風に思う理由がどこに?」



少しだけ躊躇ったあと、キースさんは言う。



「それは...俺たちが、とても醜いからです」



 醜い?


「叫んだり、嫌な顔はしなくても、目を合わせないのが普通です。ましてや、俺たちに微笑むやつなんて...いませんよ」


 キースさんは私から目を逸らして、自嘲気味に言った。


「まぁ、そうだな。おまえは変わってる」


 レグラスさんも続く。


「ついでに聞くぞ、ユーキ」


 自然と背筋が伸びる。


「なぜ、魔術を使わなかった」


 ...まじゅつ。魔術。


「それだけの美貌だ。魔術に長けているはずだろう。なぜ魔獣を討伐するのに、魔術を一度も使わなかったんだ」


 どうしよう。本当に分からない。


 なんだか、どうしようもなく噛み合っていない気がする。


 それに、美貌って言った?この人。


 ちらっと窓に映る自分を見る。


 もしかしたら、知らぬ間に顔が変わって絶世の美女になっているなんてことが...


 あるわけもなく、

 見慣れたこけしと目が合った。


 一度、大きく息を吐く。



「すみません。ここは、どこですか?」





 ***



 レグラスさんは豪快そうな見た目とは異なり、分かりやすく物事を説明するのが上手だった。丁寧に絵まで描いて説明してくれた。


「おまえが今いるのは、ワーグナー王国の首都の西の森だ。オレたち第4騎士団の担当区域だ。魔獣が出たとの報告があって対処しているところに、おまえが西の森からふらっと現れた。そして、たった一人で魔獣を討伐してしまった。しかも、剣だけで。魔術なしでそんなことができる子どもを、俺は知らない」


 正直、国名やら地理やらはちんぷんかんぷんだったが、ここが日本でも地球でもない事が明らかになった。


 ワーグナー王国。西の森。第4騎士団。魔獣。


 いい大人が、そういう設定で遊んでいるわけでもなさそうだし、事実なんだろう。





 日本人としての常識が揺らぐ。


 ここは、魔術が存在する世界らしい。


 キースさんが髪を乾かしてくれた時の、きっとあれがそうなのだろう。


 奇妙な獣たちは魔獣で、ここは王様が治める国で、騎士団が存在して...なんてファンタジー。



 そして、美形が醜い...?


 めまいがする。

 

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