20.
目が覚めた。
すぐに身動きはせず、視線だけを動かす。
どこかの建物の中だ。部屋の中は明るい。
寝かされているのはソファだろうか。
手足は自由に動かせそう。
近くに人の気配は、ない。
右手でそっと腰のあたりを探る。短剣がない。
テーブルの上の白い包み。短剣らしき形状を見て、ほっとする。
...止めていた息をゆっくり吐き出した。
数日で、随分と警戒心が強くなったなぁ。
と他人事のように思う。
私、気絶したんだよね。人生初の気絶。
...ものすごい美形に出会った記憶があるけれど、現実だろうか。いや。加工やメイクなしで、あんな美しい男の人がいるわけがないと思う。
疲れてヘトヘトで幻覚でも見たかな。
ゆっくりと体を起こす。どのくらい眠ったのか分からないけど、頭はすっきりしている。
体はもちろん、ギシギシだ。これはもう、毎度のこと。
ここは何処だろう。生活感のない部屋だ。
簡素な机と椅子。私が居るソファ。ローテーブル。本棚。家具はそれだけ。
ガチャ。
扉が開く音に振り返る。
「おっと、起きたか」
入ってきたのは、熊みたいに大きな男の人だった。
ちなみに、可愛い熊さんではない。野生の熊。
「安心しろ。これ以上は近づかない」
男の人は、扉を開けたまま部屋に1歩入ったところで止まる。両手を上げる姿は、日本では降参のポーズ。
「大丈夫だな?」
何かを確認され、よく分からないまま曖昧に頷く。
「...なるほど。これは」
その人は私をジロジロ見て、1人で納得している。
不快な視線ではないけれど面白くはない。
顔に出ていたのか、すぐに謝ってくる。
「いや、すまない。失礼した」
豪快そうな見た目だけど、意外と礼儀正しい人だ。
「いえ...こちらこそ、助けていただいたようで」
返事をすると思わなかったのか、相手は目を丸くしている。
敵意は感じないけど、おかしな反応だ。ソファから立ち上がり、さっと身なりを整える。
ソファ汚しちゃってないかな。ちらちら。
とりあえず当たり障りのない質問をしようと口を開こうとした時、「団長!」と誰かが駆け込んできた。
その人物を見て、思わず「あっ...」と声が出た。
夢か幻だと思ったその人が、慌てた様子で熊さんに突撃していたから。




