21.
うわぁ...実在した。
夢じゃなかった。幻覚じゃなかった。
幻かもしれないと疑ったあの人は、確かにそこに居た。
こちらを見て目を見開き、微動だにしない。
私も目が離せない。これは感動だ。感動の美しさだ。
思わず顔が緩んだ。へらっと笑ってしまう。
数秒後、白皙の美貌の持ち主が、絵に描いたように赤面した。
「へ?」
予想外の反応に戸惑う。
しかし、ここはまず第一に、
「あの...さっきは、ご迷惑をおかけしました」
慌てて頭を下げる。
記憶が確かなら、この人に倒れこんで気絶したはずだ。
申し訳ないことをした。
しかし、美形は目を見開いたまま動かない。
完全に動作停止。
実は精巧に作られたアンドロイドなんですよ、と言われれば信じてしまうような見た目なので心配になる。
「あの...?」
すると、熊さんの方が話し出した。
「あー、とりあえず。オレは第4騎士団、団長のレグラスだ」
...騎士団って。
レグラスさんは、30代くらいのゴリマッチョだ。短髪に精悍な顔つきで、なかなかの男前。
「あ...えっと、悠希です」
「ユーキか。少し話を聞いても?」
「あ、はい。あの...」
レグラスさんの隣で固まっている美形に視線をやると、団長が察してくれた。
「ああ、こいつはキース。副団長だな。ちょっと落ち着くまでそっとしておいてやってくれ」
「はあ」
よく分からないが、了解した。
副団長のキースさん。覚えた。
レグラスさんからは、簡単に私自身について質問を受けた。
私はそれに嘘はつかず、ただし真実も語らなかった。
「そうか。すでに親は亡く、育ててくれた祖父母も他界してる、と。年は?」
「21です」
「いや、嘘にも程があるだろ」
呆れたように言われ、困惑する。
「同じ男として、早く一人前に見られたいのは分かるが...せいぜい14、5だろ」
え、男...?14、5?
まさかの少年に間違われた。
後から分かったことだが、ここでは、髪の短い女性は罪人以外いないらしい。
ショートボブで体の凹凸が少ない私は、必然、男性という認識になったようだ。
それにしても、若く見られ過ぎだろう。
欧米人に比べて日本人は若く見えるとは聞くけれど、14、5才って...中学生だよ。
こけし顔って、外国の人から見ると年齢不詳なのかな。
「...安心しろ。悪いようにはしないからよ」
黙り込む私に、優しくレグラスさんは言う。
まるで、容疑者に自白を促す刑事のようだ。
私は考えた。
これは、悪くないのでは?
このまま乗っかってしまおうか。
見知らぬ場所だし、治安も分からないし、女性ひとりだと犯罪に巻き込まれるかもしれない。年齢も同じく、あえて否定しない方が得策だろう。
「...すみませんでした」
「いいんだよ」
ベテラン刑事は、ふっと笑った。
あの、カツ丼とか出てきませんか?




